第8話 その6
『サンディ、デーメテール! 識別不明の
JSTARSからSEALSの
『デーメテール、サンディ! ミニガンじゃ強行突破には心もとない、CASを要請する!』
『サンディ、デーメテール、了解した! ディナー三一、デーメテール! 聞いたな、そちらで指示を出せ! ターゲットデータを送る!』
『デーメテール、ディナー三一、了解! ホッグ、キング、フェロー、ディナー三一!
『ホッグ三一、余計な台詞はいらないわ、 黙って仕事して頂戴!
『キング二一、やっほう! 女の子と一緒の仕事だ、興奮するね!
『フェロー二一、二人きりじゃないのが癪だが贅沢は言えんな!
返ってきたのはこれまた耳になれた声。最初の女性はサビハだろう。凛とした声は無線越しにもよく通る。次の二つは言うまでもなくハビエルにマリオ。どこに居ても解りやすい連中だ。彼らは手早く攻撃情報を交換し、地上制圧の準備を整えていく。
『ホッグ三一、フェロー、キング!
『オーケイ、女の子にエスコートされるのも悪くない! キング二一、
『俺は責めるほうが好きだがね! フェロー二一、
『全機、
サビハが呆れ声で「馬鹿言ってないの!」と返す。この間に酒場で大喧嘩をやらかした連中の共闘に運命めいたものを感じるが、彼らの能力が確かだというのは勇が一番知っている。複数部隊の同時攻撃という、スムーズな連携がなければ到底実行しえない無茶なフォーメーションも――無茶を無茶でなくすだけの信頼があれば、どうということはないのだ。
『よし、
『ホッグ差三一、
『
『
『
『フェロー二一、続いて爆弾投下!』
流れるようなやり取りが鮮やかに続く。三万五千フィートの彼方からその現場を直接見ることはできないが、勇は彼らの成功を確信していた。果たして暫しの時間が経った後、自信に満ちた仲間の声がインカムから聞こえてくる。
『ホッグ三一、
『いや、報告はいらん。聞かずとも解るよ、見事に全撃破だ』
『ふふ、私にかかればざっとこんなもんよ』
『あれあれ、僕たちだって大活躍したのになぁ。ご褒美を頂戴よ、あつーいキス』
『なんならそのまま最後までヤッちまってもいいんだぜ』
『うるさいわよ、助平二人』
多数の航空機が聞く無線で仲良く喧嘩する我が友人達。ウィーゼル編隊を率いる大尉が『勇、お前のお仲間はいつも楽しそうだな?』と苦笑しながら問うてきたのには参ったが、しかし連中のおかげで救難部隊は着実にオルズ中佐の待つランデブーポイントへ近づく事が出来た。
『サンディ二二、ブレード一一のDMEトランスポンダー信号を確認した、近いぞ!』
ヘリから通信が入る。ブレード一一――オルズ中佐のコールサイン。つまり、ヘリの見通し距離内に中佐が存在している。勇は報告に浮き足立ちそうになるが、焦ってはいけない。冷静を保とうと歯を食いしばる。
『ブレード一一、サンディ! 聞こえるか、ブレード一一、こちらサンディ!』
『……サンディ、ブレード一一! やぁっと騎兵隊のおでましだ! 有難くて涙が出ちゃう!』
たった一日聞かなかった声が、勇にはとても懐かしく思える。しかし「よかった」とはまだ言わない。彼女の乗ったヘリが空母に戻るまでは我慢だ。
『元気そうだな、ブレード一一! そちらの周辺で着陸可能なポイントはあるか!?』
『あるにはあるけど結構ギリギリかも!』
『なに、構わん! 切手を貼るだけの余裕があれば降ろして見せる!』
『わぉ、頼もしい! ではこちらで
『
オルズ中佐の誘導を受けた二機のヘリは宣言通りに着陸を敢行。まずSEALS隊員を満載したサンディ二一が先行し、着陸地点の防御を構築。それを待ってサンディ二二がアプローチ。無線越しに中佐が『え、待って待って二機!? このスペースに!? 馬鹿じゃないの!?』と素で叫んでいる。一連の動きをデータリンクで追っていた勇は、危なげなくランディングした海軍CSARヘリのパイロットに後で菓子折りでも送ろうと決めた。
『うわすっげ! ほんとに降りたよ!』
『ブレード一一、急げ! 早いところずらかるぞ!』
『わかってる! レディを急かすのはマナー違反!』
『よし回収した! これより離脱……いや待て!』
ヘリパイロットの言葉が嫌な途切れ方をし、くぐもったローターのエンジン音越しに銃声らしき破裂音が続けざま聞こえる。
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