友達
森ちゃんの手を握る。森ちゃんは焦点の合わない瞳で私を見た。
私の言っている事を、まだあまり理解してはいないようだった。少し涙を浮かべている。私はそれを拭ってやった。
唇を蒼ざめさせて私と視線を合わす森ちゃん。私は心からの親愛と、これからの友情を、彼女に対して熱い想いで表現した。
森ちゃんは私に聞いたよね。
他人の手を千切りたいと思った事があるか。他人の足を潰したいと思った事があるか。他人の舌に爪を立てたいと思った事があるか。他人の目を齧りたいと思った事があるか。他人の内蔵を引きずり出したいと思った事があるか。
他人を殺したいと思った事があるか。
残念ながら私は無いよ。勝手にみんな死んじゃっただけ。
懲らしめようと腹を裂いたら高橋くんは死んじゃった。森ちゃんへの暴行を止めさせようとしたら、佐藤さんとクラスメイト達も死んでしまった。
ああ、そういえばこの前、まだ火のついたタバコを道端にポイ捨てした人がいた。私は副煙流で肺ガンになるのが怖かったから、二度とその人がそんな事をしないように、お買い物で買っていた引火性の油をぶっ掛けて、ライターを奪ってその人を燃やしたっけ。
あの人も結局死んじゃったなぁ。殺人事件なんて世間は騒いでいたけど、ちょっと火でお灸をすえただけなのに。
だから私は人を殺したことなんてないし、人を殺したいって言う森ちゃんの気持ちは正直よく分からない。
でも、少し価値観が違うくらいが、きっと良い友達でいられる条件だと思うんだ。
私は夕焼けに染まる教室で、あちこちに飛び散った血の色を背景に、そこら中を転がる死体に囲まれ、今にも空だって飛べそうなふわふわとした気持ちで森ちゃんと向かい合う。
「これからもずっと友達だよ、森ちゃん!」
怪物的思考。 砂塚一口 @sunazuka
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