神の数は12。

 世界もまた、12ある。

 それぞれの世界に、その世界を統治する神が存在しているのだ。


 この世界の神は、六翼神と呼ばれる男だった。その名の通り、3対6枚の翼を背負っている。

 その神に、聖騎士が突撃を仕掛けた。

 愛用の大剣は、すでに使い物にはならない。聖騎士が召喚した武器は、ナイフのような短剣。

 神の喉笛に突き刺そうとするが──。


 バヂィッ!


(障壁か──!)

 予想はしていたが、神を守る光の壁が出現。聖騎士の短剣は、障壁に弾かれてしまった。

「愚かな」

 神の声が聞こえた。

 6枚の翼を持つ男は、右手の人差し指を聖騎士に向ける。

「因子の所有者かと思ったが、この程度か」

(因子……?)

 神の指先から放たれた光が、杭のような形になって、聖騎士の胸に突き刺さる。

「グゥ──ッ!?」

 光の杭は、聖騎士の胸に吸い込まれた。

 次の瞬間。

 両手の甲に、赤黒い十字が刻まれる。聖騎士には見えていないが、喉にも同じ文様が浮かんでいた。両足の甲にもあるはずだ。

 蒼穹の如きだった聖騎士の双眸は、鮮血の如くになり。

 眩く輝く金の髪は、曇天の如くになり。

 無垢な白き翼は、どす黒い色に染まってしまった。

「……堕天使化……!」

 その影響なのか。

 聖騎士──すでに聖騎士と呼ばれるような姿ではないが──は、体を上手く動かせずにいた。

「魔物に喰われて、死んでおけば良かったものを。死に損なうから、そのような姿になる」

「……何故、オレを殺さない」

「殺せるなら、そうしている」

「……どういう……事……だ…………?」

 堕天使となった男の意識は、そこで途絶えた──。

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