聖騎士


「お待ち下さい、聖騎士様!」

「ここから先は通せません!」

「聖騎士様!」

 巨大かつ豪奢な扉──門と言った方がいいサイズである──の前で、門番たる男達が制止の声を上げている。

 しかし──。

 聖騎士と呼ばれる男は、一向に歩みを止めない。痛めているのか、若干、足を引きずってはいるが。

 本来ならば、彼が纏う鎧は、煌びやかであり威厳を帯びる代物だ。聖騎士という称号に相応しい逸品である。

 それが今は、辛うじて胸当てが残るのみ。他は欠片程度しか残っていない。特に頑丈な作りになっている分、胸当てだけが残ったのだ。

 2枚の翼も傷だらけ。魔物の大群との戦いで、聖騎士は満身創痍だった。

「聖騎士様!」

「お止まり下さい!」

 いったい、傷だらけの男が、どこに行こうと言うのか。

 医者に診て貰うのならば理解も出来ようが、ここは病院ではない。

「邪魔だ」

 聖騎士が、3分の1程の長さになった剣を構える。ドラゴンのようだった剣が、その面影を残せていない。

「オレは、神に用があるんだ──!」

 聖騎士の体から、金色のオーラが噴き出した。

 その輝きを見て──オーラの質から彼我の力量を見抜くのは、基本的な戦闘技能である──門番の顔が強張った。

「オレは、『邪魔だ』と言った筈だが?」

「「ッ……!」」

 ひるむ門番だったが、それでも、何もしないわけにはいかない。彼等は、槍なり斧なりを構える。

「このオレと刃を交える……か。同情くらいはしてやるが、邪魔をするなら、容赦はしない。万全には程遠いが、それでも、お前達を蹴散らすのは造作も無いぞ」

「うあああッ!」

 門番の1人が飛び出した。

 その時──。


『通せ』


 声の主は、門の向こう側に座す存在だった。

「命拾いしたな、お前達」

 聖騎士が剣を下ろす。

 門番達も武器を下ろした。

 門が開き、聖騎士と神が対面する──。

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