第24話 冒険者ギルドへ
◇◇◇
【名前:グレイ
種族:オーカス
体力:206(+21)
理性:70(+10)
状態: 】
【名前:ザラ
種族:エルフ
体力:55
理性:35(+5)
友愛:-45(-2)
忠誠:111(-1)
愛溺:137(-3)
状態: 】
【名前:パドマ
種族:ドラゴニュート
体力:90
理性:36(+10)
友愛:113(+2)
忠誠:101(+1)
愛溺:45(-3)
状態: 】
【名前:ミミル
種族:ドワフ
体力:41(+6)
理性:81(+1)
友愛:90(+5)
忠誠:51(+2)
愛溺:5(+5)
状態: 】
◇◇◇
冒険者ギルドへ向かう道で、ミミルが旅の仲間になったことを伝えた。
驚かれるかと思ったのだが、ザラもパドマもやっぱりかと言いたげな顔をしていた。
「こうなるんじゃないかとは思ってました」
「アンタが見境いないのは知ってたから別に文句はないけどね」
2人とも失敬だな。俺は誰でもいいわけじゃないぞ。
「ザラさん、パドマさん。不束者ですが、よろしくお願いしますだ」
「今さらだけど、コイツ常識知らずだから気をつけた方がいいわよ」
「ミミルさんは戦闘経験がないんでしたっけ?なら最初は前に出ない方がいいですよね」
「戦うのはまだわからんですけど、それ以外でなら色々とお役に立ちますだ。料理とかお裁縫とかも得意ですだよ」
「本当ですか。ワタシはそういうのあまりやったことなかったので、是非とも教えてもらえますか?」
「もちろんいいだよ。オラにまかせてくんろ」
俺が間を取り持つまでもなく、3人は仲良く話し始める。というか俺が口を挟む隙間がない。
仕方がないので、先導してくれているミルドに並んで話しかけた。
「なあミルド。本当にミミルが俺たちに付いてきてもいいのか?」
「あいつが自分で決めたことだ。他人が口を出すことじゃねえべ」
ガルドの家は弟が継ぐし、弟子もたくさんいるから心配ないらしい。むしろミミルの嫁ぎ先が決まって、家族全員がよろこんでいるとか。
相手が冒険者というのはどうなのかと思ったが、そもそもこの村の中ではミミルの行き先はないらしい。かつては引く手数多だったが、あの鎧のせいでことごとく断ることになっていたそうな。
ミミル本人は白馬に乗った王子様に憧れる乙女ような感じで、自分を鎧ごと持ち上げられる男を待っていたとか。
つくづく俺は、やってしまったようだ。
村の中は牧草地が多く、柵の中で牛やヤギがのんびり草を食んでいるのが見える。のどかでのんびりした、いい村だ。
だだっ広い道を話しながら歩いていくと、建物が集まっている場所が見えてきた。
「あそこが村の中心部だべ。大きな結界石が見えるべ?その向かいが冒険者ギルドだあ」
ミルドが指さす先に、セーブゾーンで見たものよりも何倍も大きな石柱が埋まっていた。地上に出ている部分だけでも3メートル以上ある。
結界石の周囲は公園のように整備され、何組かの冒険者が祈りを捧げていた。
ミルドのやり方を見習いながら、俺たちも結界石に祈りを捧げる。それから向かいある、大きな石造りの建物に入った。
そこは冒険者ギルドと聞いた時にイメージしたもの、ほぼその通りの場所だった。
依頼書とおぼしき紙が貼られた掲示板と、役所のような受付カウンターがあった。酒場のような交流施設は奥にあるらしい。
ミルドが受付のお姉さんに話しかけると、もう対応は決まっていたのだろう、すぐに上の階へと案内された。たどり着いたのは小さな応接室で、2つ並んだソファの奥にフェルパーの男が立っていた。
「よく来てくれた。ワイドビークギルドを代表して、君たちを歓迎しよう」
全員でソファに座った後、男が切り出した。
「私はここ、ワイドビーク村の冒険者ギルド長、ユルトロだ。君たちのおかげで私たちの仲間がさらわれずに済んだことに、心よりお礼を言いたい。帝国で奴隷制が採択されてから、今回のような誘拐事件が後を絶たないんだ」
ユルトロは、耳の先まで白くなった髪を撫でつけながら言った。シワも多く、気苦労が多いのがうかがえる。今回のことに本心からホッとしているようだ。
「君たちが見つけたという廃棄された砦は、おそらく魔竜戦役時代に使われていたものだろう。そのまま放っておくとまた悪用されかねないから、一度確認してから破壊するかどうするか検討したい。そこで、君たちに案内を頼みたいのだ」
「それが、俺たちを呼び出した理由ですか?」
「そうだ。ミルド君から聞いたが、君たちは冒険者になるつもりなのだろう?なら今回の件をギルドからの指名依頼として、評価ポイントもプラスしよう。評価が高ければ、他のギルドへ行っても優遇してもらえる。決して悪い話ではないはずだ」
パドマを見れば、それが正しいことだと頷いてくれる。特に反対する理由もないので、受けることにした。
細かい話をした後、そのまま全員分のギルドカードを作ってもらった。
わりと早く完成したギルドカードは、名前と冒険者ランクが書き込まれただけのシンプルなものだった。今は何も書かれていない空きスペースに、討伐や採取などの達成した依頼の種類が記入されていくそうだ。
盗まれたらどうするのか聞くと魔力紋という指紋みたいなものが記録されていて、所有者を判断できると答えてくれた。これがあるから、他人に成りすますことができないので盗もうとする人はいないのだとか。それと流れ者の多い冒険者は、この冒険者カードが身分証明書の代わりになるようだ。
ちなみに、パドマは以前の冒険者カードを失くしているが、俺たちとまた一からやり直したいということで新しく作り直した。本部へ問い合わせれば記録を回収できないこともないが、かなり日数がかかるらしい。パドマ本人が新しい方がいいと言い切ったので、そういうことになった。
「ところで、魔法はどうされますか?」
諸々の手続きが終わった後に、職員に聞かれて思い出した。
「冒険者用の魔法を教えてもらえるんだったよな。どんなのがあるんだ?」
「そうですね。荷物を収納できる『アイテムボックス』に、光源を創り出す『ライト』。あとはアイテムの質が判る『鑑定』などがありますね」
どれもあると便利そうな魔法ばかりだ。できれば全部憶えたいが、確か限界容量があるんだったか。
「容量の検査もできますよ。レベルアップによって容量が増えることもあるので、小まめにギルドへいらして下さい」
丁寧なギルド職員の案内で、魔法を教えてくれるという部屋に行く。そこは小さな部屋で、テーブルの上に水晶玉がひとつ置いてあった。
「ここに手を置いて下さい。これから私が『鑑定』しますので、
言われた通り水晶に手を置き、受け入れる覚悟をする。職員が呪文をつぶやくと、頭の中をまさぐられるような不快感がじわじわと広がってきた。
顔をしかめながら耐えていると、波が引くように不快感は去っていった。
「すごいですね!貴方の容量はとても大きいですよ」
職員が言った。
「どのくらい大きいんだ?」
「アイテムボックスの魔法なら5つ分は確実です。普通の人は2つがせいぜいなので、これはかなり多い方ですよ」
つまり俺は、魔法をたくさん憶えられるということか。
ミミルの容量も見てもらうと、普通より少し大きいくらいだった。
「オラは
旅のドワフには必須の魔法らしい。ドワフ以外も憶えられるけれど、ドワフが使う方が仕上がり具合が段違いによくなるのだとか。でもそれで容量のほとんどを使ってしまうらしく、残った分でギリギリ取れる
俺はどうするのがいいか、パドマに相談する。容量が大きいので、便利なものを何種類も憶えた方が幅が広がるだろう。
「そうですね。ではアイテムボックスを3つ分憶えるというのはどうでしょうか?」
「同じ魔法をいくつも憶えられるのか?」
「はい、種類によりますが、アイテムボックスは複数憶えられるものの典型です。そうすることで、アイテムボックスの大きさがより大きくなります」
「他には憶えておいた方がいいものはあるか?」
「あとはグレイ殿のお好きなものを選べばいいと思います。どれがあっても困ることはありません」
「じゃあミミルはどれがいいと思う?ザラも何か意見があれば言ってくれ」
「オラも、グレイさが好きなの選べばいいと思うだ」
ザラを見ると、不機嫌そうな顔で睨まれた。
「アンタ、どういうつもりよ。アタシたちの顔色うかがってばっかで、気持ち悪いのよ。アタシたちはアンタの仲間であって、使用人じゃないのよ。自分のことくらい、自分で決めなさいよ」
「なんでそうなるんだよ。俺はお前たちのために聞いてるんだぞ?俺は容量がデカイんだから、俺がいろいろと憶えれば、旅が楽になるだろうが」
「ならいろいろ憶えればいいじゃない。アタシたちに聞く必要なんてないわ」
「でも憶える必要がないものだってあるだろ。俺は旅のことなんてよく分からないから聞いてるんだよ」
「だからそれが顔色をうかがってるって言ってるのよ。アタシたちに言われた通りに魔法を憶えて、それが使えなかったらアタシたちのせいにするんでしょ?それって卑怯だわ」
「そんなこと、するわけないだろ」
「でも、それを憶えさせたアタシたちは気にするわ。とくにパドマとミミルはね」
言われて2人を見ると、そんなことないと首を振られた。でも、確かにこの2人はかなり気にしそうだ。俺が違うと言っても、自分が意見を言ったからだと落ち込むだろう。
まさか、そんな考えがあるだなんてザラに言われるまで気づかなかった。
俺はみんなのためにと思って聞いたのに、それは判断と責任を相手に押し付けただけだった。
今までの自分の行動が頭の中を駆け巡る。相手がそれでいいと言ったからやった。俺が無理やりやったわけじゃない。そんな言い訳で全部を相手のせいにしていた、俺は卑怯者だった。
認めたくないが、ザラの言ったことは正しい。
「ごめん、俺が間違ってたよ」
今まで気づかなかったことが恥ずかしくて、みんなの顔を見れなかった。
ここからは俺が自分で考えて行動する。憶える魔法を選ぶのが、その初めの一歩だ。
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