第23話 ミミルの決意
ドワフは酒に強い種族だ。それには状態異常に強いという種族特性も関係しているかもしれない。同人ゲームのほうでも、薬による状態変化が利かなくてちょっとメンドくさかった憶えがある。
オークスである俺も体力方面から酒には強くなっているはずだが、ドワフに比べれば全然弱い方だった。
強めの酒を次々と飲まされて、なんか気持ちがフワフワしてきた。とても気分がよく、楽しくてしかたがない。
「……というわけなんだべ。だどもグレイさんがミミルを担いでたときはおったまげただ。あれを鎧ごと担げる男がいるとは、思っとらんかったからな」
「んだんだ。しかしこれで兄貴も安心だべ。悩みが片付いたんだからなあ」
「ガハハ、まったくだべ。あいつもまんざらではないようだし、本当に今日はめでたい日だべ」
ガルドとミルドが楽しそうに話しているが、いったい何の話題だろうか。
ポルトは酔いつぶれて寝ているし、パドマは俺の膝の上に頭を乗せて意味の分からないうわごとをつぶやいている。ザラは眠いと言って、早めに出て行っていた。
「……ちゅうわけでグレイさん。よろしくお願いしますだ」
「え?あ?はい、よろしく」
「ガハハ、いかったべなあ」
「ああ、いかったべ」
つい反射的に返事をしてしまったが、いったい何がよかったのだろうか。酒のせいで、ぜんぜん頭が回らない。気を抜くと寝落ちしてしまいそうだ。
「あの、すいません。俺、そろそろ休ませてもらおうかなと思うんですが」
「おお、そうれは気づかなくて申し訳なかっただな。すぐ部屋まで案内させるべ。おおい、ミミル!グレイさんを部屋まで連れてって差し上げろ」
ガルドが声を張り上げると、少し間を置いてから足音が近づいてきた。
「お待たせして申し訳なかったべ。すぐに部屋さ案内するだ」
「頼むよ。それとパドマなんだけど」
「グレイさん、そっちは起きたらワシらが部屋まで案内するけぇ、ゆっくり休んでくんろ」
「そうですか?じゃあよろしくお願いします」
ガルドとミルドに見送られ、ミミルについて廊下を進んだ。
ミミルの家はなかなか広く、部屋がいくつもあった。鍛冶の弟子がたくさんいて、そのための部屋が用意してあるらしい。今日はガルドさんの捜索のために、全員出払っているのだとか。無事に帰ってきた連絡が行っているので、明日になればみんな戻ってくるそうだ。
鎧を脱いだミミルは、小柄ではあるが割と筋肉がついているのが見て取れる。ただ、それ以上に女性的なふくらみが、服越しにもはっきり分かるほど大きかった。
初めて会った時は鎧を着こんでいたから分からなかったが、いまは薄い服を一枚羽織っているだけなので、体のラインがはっきりと見えている。お風呂にでも入ったのか、髪が少し濡れている。その髪の毛から毛足の短い体毛が背中の方までつながって伸びているようだった。
そのままお尻までつながっているのか気になって、歩みに合わせて左右に動く丸いお尻を見てみる。少なくともそこに尻尾はないようだ。そういえば、フェルパーには尻尾はあるのだろうか?
「あ、あの」
「な、なに?」
お尻をじっと見てたのがバレたのだろうか?
「お、お部屋に着きましたべ」
「そうなんだ、ありがとう」
ミミルが顔を伏せながら、部屋の扉を開けてくれた。
やっぱりちょっと見過ぎただろうか。酔ってるせいでだいぶ自制が利かなくなってるみたいだ。ミミルのお尻を見ていたせいで、ここまでの道を覚えていない。家の中だから迷子になるほどではないだろうけど、トイレとか行きたくなったら困るだろうな。
部屋の中は、壁につけられたトーチが1つ、大き目のベッドを照らし出していた。
狭い、本当に寝るためだけの部屋のようだ。
ベッドに腰かけると、少し硬めの感触が返ってくる。ベッドで寝るのは2日ぶりのはずだけど、すごく久しぶりのような気がするな。
そんな感慨に浸る間もなく、隣にミミルが腰かけてきた。
「えっと、ミミル?」
ピッタリ横に座ったので、服越しに彼女の体温が伝わってくる。それは思っていた以上に暖かった。
「あ、あの、グレイさん。オラ、お話ししたいことがあるだ」
こちらを真剣な表情で見上げてくる。トーチの淡い光に照らし出されたその顔は、少し緊張しているようでもあった。
「ミルド叔父さんにもう聞いたらしいだが、この村には伝統的な決まりがあるんだべ。それは、嫁取りの時に、女は男に担がれて家まで運ばれるってもんだ。オラは、家の手伝いとか色々あったけぇ、そげな結婚とか関係ないもんと思ってた。んだから、嫁になってけろと言われても、お祖父ちゃんさ
ミミルはそこで一度深呼吸をして、そして力強い眼差しで俺を見た。
「だども、グレイさはその鎧を着たオラを簡単に持ち上げちまっただ。オラ、そげなことできる人さいるなんて思ってもなかっただ。だからその、オラ、びっくらしちまって、その……」
ミミルはそこで言葉を詰まらせた。なにかを言いたいのだけれど、ためらいが大きすぎて言えないでいる。
ひょっとして、俺がその伝統に従ってミミルを娶るとか言い出すと思っているのだろうか?
「俺が持ち上げちゃったことか?なら気にしなくていいよ。俺は旅人だし、この村にとどまるつもりはないんだ。だからミミルは俺なんかよりも、この村できちんとした相手を見つければいいさ」
「そ、そげなこと言わんで欲しいだ!グレイさはすごい人だって、オラ知ってるだ!」
ミミルがすごい勢いで顔を近づけてきたので、思わずのけぞった。
「オラはグレイさが大好きだ。もうグレイさのものだ。グレイさの旅にオラも付いてくだ。お父ちゃんとお母ちゃんもそれでいいって言ってくれただ。この家は弟がしっかり継いでくれるべ。その、ええと、だから、オラはグレイさと一緒に行くだ」
「だが……」
「グレイさは、オラのこと嫌いだか?」
うるんだ瞳で見上げながら縋り付いてこられると、自分の両手をどうすればいいのか悩む。
抱きしめればいいのか、それとも引き剥がした方がいいのか、酔った頭では答えをなかなか出せない。よってお手上げ状態だ。
「たしかにオラは田舎もんだし、ちいとばかし歳くった行き遅れだべ。だども、料理さ得意だし、手先も器用だ。鍛冶はできんが、縫いもんだとか修理は得意だ。夜伽だってなんでもするべさ。だからオラも連れてってくんろ」
薄い服越しに、柔らかい2つの塊が押しつけられる。パドマのものとは違った感触で、しかもこちらは暖かい。
ロリ巨乳の積極的な女の子とかかなりグッと来るものがある。ミミルがこう言ってくれているんだし、別にいいんじゃないだろうか。
酒で思考能力が低下しているせいか、断る理由が特に思いつかない。というか、別に構わないんじゃないだろうか。念のために最後に少し脅して、覚悟を確かめてみようか。
「それじゃあ、俺がこれからミミルに色んなコトをしてもいいのか?」
「もちろん、望むところだべ」
「すごく痛いかもしれないし、イヤなことかもしれないぞ?」
「か、覚悟はできてるべ。オラはグレイさのすることなら、なんだって平気だ、だべ」
「こういうことでもか?」
ミミルの肩を抱き寄せて、その大きな胸をわしづかみにした。かなり柔らかく、俺の指がけっこう沈む。
「ひあっ!う、大丈夫……」
驚いたようではあるが、痛がってはいない。
なかなか新鮮な反応に、すこし興味が湧いてきた。
「じゃあ、こういうのは?」
「っ……!」
軽くキスをすると、顔を真っ赤にして固まった。こういうのに全然慣れていないようだ。
これはお酒のせいだろう。なんかミミルがとてもかわいくて、楽しくなってしまう。
俺が色々するたびに、とても
そうやって何分経っただろうか。
最初はいちいち顔を赤くしてかわいい悲鳴をあげていたが、次第にその声が甘くあやふやなものになっていった。
俺を見つめる視線が、最初とは別の意味でぼうっとしている。呼吸がすごく荒いのに、手は俺をつかんで離そうとはしなかった。
「ああ、グレイさぁ」
言葉はもはやうわごとに近い。
額に小さくキスをすると、それだけで嬉しそうな声を出した。
「じゃあ、ミミルいいな?」
「はい、お願いしますだ」
俺はミミルをベッドの上に横たえると、そこに覆いかぶさった。
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