第4話 その1

 チェスカ姫を明後日までサーカス団に預けたJBは、翌朝早く、逗留する宿屋を立った。

 JBが逗留する街には、辺境には珍しい、100店舗からなる大規模の商店街がある。

 この街が、王都まで延びる主道と繋がっている事もあり、西部辺境に点在する各町村とのハブ的な地理的位置づけとして、辺境の要所となっていた。

 恐らくゆっくりと出店が続いて出来たモノなのだろう、商店街の構成には計画性には見られず、食料品店のすぐ隣に武器屋が鍛冶屋が並んでいるような雑然さが多々見受けられた。

 その商店街のほぼ中央にある雑貨屋に、JBは吸い込まれるように入っていった。


 JBが店内にいたのは10分ほどであった。



「……話は聞いたよ。“次”へ行けるって言うのにお前さんも物好きだねえ」

「好んで住み着いたあんたよりはマシだ」

「へっ。違ぇねぇ」

「……で、例の物件は?」

「一時間ほどで行ける隣の村に一軒、本部で管理している一軒家がある。そこならここの王様たちにも気づかれねぇ」

「<E>の動向については?」

「何とも。三年前のあの事件以降、確認されていない。余所へ行ったんじゃねぇ?」

「それはない。<E>が<マテリアルM>を諦めるハズがない」

「あの化け物とやりあった者としての意見か?」

「<E>の固執ぶりには理由がある」

「…………彼女か。でも死んだんだろ?」

「ヤツはそれを納得しない」

「………………お前、本気で苦労人だな。いつか過労で死ぬぜ」

「こういう仕事を始めた時から覚悟しているさ」

「……ま、好きにするさ」

「ところで、例の話だが」

「例の姫様の話か?おぅ、ビンゴだ。ありゃ別人だ。――あすこまでうり二つなんてそうそう居そうもないが、何者かは判らん。気ぃつけろ。オレが調べている時も、ひどく妙なのが彷徨いていた。ありゃ、かなりの訳ありだな。もっと調査するか?」

「いや、いい。大体見当は付いている。後は私が行う」

「そうか。じゃあ、こいつ持ってけ。今までのデータはそこにある。PCは例の家にある」

「電気引いてあるのか?」

「地下に自家発電機が仕掛けてある。電気自体珍しいモノじゃないぜ。こう見えても“この世界”は<始まりの世界>であると同時に、“寄せ集め”の世界でもある。魔皇がいた頃は原発もあったって話だ」

「……百人を同時に斬る剣の精霊と、原発が共存する“世界”か。<始まりの世界>と呼ばれるだけの事はある。――あと三年逗留を延長しても飽きそうにないな」

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