そのに ペケのお使い

 ロボットと言うのは実に哀れな存在なのである。

 人間によって道具として使われるのみ、動かなくなったらバラされポイッである。

「ぺーーーけーーーーアタシの保湿オイルが無いのだけれどもーー?」

「HAHAHAHA! 気のせいダロ! げっぷ」

「………エネルギーが十分なら荷運びでもしてもらおうじゃない」

 どんな理不尽な命令も聞くしか無いのだ。



 ロボットは主人の命令に逆らうことは出来ない。

 己のしたいことをすることが出来ないのだ。

「あ、ペケちゃん、ちょうどいい所に。ちょっとこの木植えるの手伝ってくれない? 土を盛る間支えてて欲しいのだけれど」

「ムーーーーリーーーー。メンドクサイ、からじゃなイ、マスターの命令ダ! そうイッタ汚れ仕事はマスターにでも頼むんダナ!」

「ええっと、そ、そうするわね」

 主人の命令はナニをおいても優先されるのだ。



 ロボットはエネルギーで動くのみの物質である。

 感情と言うものはない。

――ピコンピコン。

「オッ、エネルギー切れだナ!! HEYそこのオヤジ! オイルはあるカ!」

「うちは酒屋だからなぁ……オイルはちょっと……サラダ油はあったかな」

「チッしけてんな。まあいい、24L程モラおうか。代金はサンクベリー家のシシィにツケておいてクレ」

「あいよ!!」

 ロボットは根性で動くことも不可能なのである。



 ロボットとは搭載された機能しか出来ない。

 もしそれが武器だけであったら、ロボットはただ兵器として戦場に生きるのみである。

「オラ! 食エ!」

「……すまない、つい先程朝食を食べたばかりなのだが」

「鱚のチーズパイ~丸かじり風味~ダ! 焼きたてだぞ!!!」

「う、うむ。確かに、今まさにチンッというベルの音と腹から出す様子を見たからな、確かにわかるのだが……」

「マスターからの差し入れを食エンと言うのカ!」

「そうじゃないが、そうだ、お茶を入れてくれ。お茶なら何とか、いや今お茶が飲みたい気分なんだ」

「湯沸し機能ハサクジョサレマシタ」

「……せめてクッキーにならないか? オーブンなんだろ?」

「魚のパイ焼き器デアリマス」

 ナタリオは頭を抱えて唸った。

「マスターは明日の朝サンクベリーに帰ル」

「そうだったのか。気をつけてくれと伝えてくれ。旅のお守り……は少し大げさかな」

「ダカラ、パイなのだ」

「なんでだ!?」

「お別れの”キス”ってことだロ! ヒューヒュー、お熱いデやんの!」

「!!!!!!!! くっ……どうしろと」

「ついでに今ナラもう一枚ついてくるゾ!」

「………」

 ロボットというのは実に苦労の多い存在なのである。

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