第16話




「いや、やっぱりだめ!!」




もう考えるのはやめだと眠ったものの……少しうとうとしてはまた目が覚め、そして、またうとうとしては目が覚める。


馬鹿馬鹿しいとは思いつつ、世の中には万一…ってことがある。

もしも、あの木の実のせいでヒデくんが私のことを好きになったら……

嬉しいけど……やっぱりだめだ。

魔法で人の気持ちを自由にするなんて……私は、そんな罪悪感に耐えられる程、タフじゃない。





時計を見たら、夜中の2時過ぎ。

あぁ、なんでもっと早くに連絡しなかったんだろう…?

もしかして、もう食べちゃった…なんてこと…ないよね?




電話しようと思ったけど、さすがに気が引ける時間だから、メールを送信した。




『まだ起きてる?』




返事はなかなか来なかった。




『もう寝てますか~?』




しつこく2通目を送ってみたけど、やっぱり返事は来なかった。




こんな時間だもん。普通、寝てるよね……

こうなったら仕方がない。

明日の朝、連絡を取ろう。




(どうか、ヒデくんがあれを食べてませんように…!)




そう祈りながら、私はまた目を閉じた。







「う…うっそーーー!」




仕事に行く前にヒデくんに連絡しようと思ってたのに、昨夜はしっかり眠れなかったせいか、目が覚めたらいつもより30分も遅い時間。

目覚ましも誰かが勝手に止めてる……

私は出来る限りの大慌てで、どうにか身支度を整え、家を飛び出した。

おかげでどうにかギリギリセーフだったけど、さすがに満員電車の中からはメールが出来ず、気にはなりつつも、結局、メールが出来たのはお昼休みになってからだった。





『ヒデくん、今日も寒いね。』


当たり障りのないことから始めて、昨日のチョコケーキを食べたかどうか訊ね、どきどきしながら返事を待った。



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