第16話
*
「いや、やっぱりだめ!!」
もう考えるのはやめだと眠ったものの……少しうとうとしてはまた目が覚め、そして、またうとうとしては目が覚める。
馬鹿馬鹿しいとは思いつつ、世の中には万一…ってことがある。
もしも、あの木の実のせいでヒデくんが私のことを好きになったら……
嬉しいけど……やっぱりだめだ。
魔法で人の気持ちを自由にするなんて……私は、そんな罪悪感に耐えられる程、タフじゃない。
時計を見たら、夜中の2時過ぎ。
あぁ、なんでもっと早くに連絡しなかったんだろう…?
もしかして、もう食べちゃった…なんてこと…ないよね?
電話しようと思ったけど、さすがに気が引ける時間だから、メールを送信した。
『まだ起きてる?』
返事はなかなか来なかった。
『もう寝てますか~?』
しつこく2通目を送ってみたけど、やっぱり返事は来なかった。
こんな時間だもん。普通、寝てるよね……
こうなったら仕方がない。
明日の朝、連絡を取ろう。
(どうか、ヒデくんがあれを食べてませんように…!)
そう祈りながら、私はまた目を閉じた。
*
「う…うっそーーー!」
仕事に行く前にヒデくんに連絡しようと思ってたのに、昨夜はしっかり眠れなかったせいか、目が覚めたらいつもより30分も遅い時間。
目覚ましも誰かが勝手に止めてる……
私は出来る限りの大慌てで、どうにか身支度を整え、家を飛び出した。
おかげでどうにかギリギリセーフだったけど、さすがに満員電車の中からはメールが出来ず、気にはなりつつも、結局、メールが出来たのはお昼休みになってからだった。
『ヒデくん、今日も寒いね。』
当たり障りのないことから始めて、昨日のチョコケーキを食べたかどうか訊ね、どきどきしながら返事を待った。
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