第15話




「美里……どうかしたの?

美里!」


「……え?は?何か言った?」


「何かじゃないだろ。

おまえ、30秒くらい固まったまま動かなかったぞ。」


「そ、そう?か、考え事してたの。

最近、仕事が忙しくてさぁ…はは…」




ごはんどころじゃないっつーの!

ヒデくんに渡したは良いけど、それからすっごく気になっちゃって……


いつもなら食後もうだうだしてから帰るんだけど、またなにかおかしなことでもしたら怪しまれそうだから、お風呂に入ったらすぐに戻った。








(あぁぁ…どうしよう…!?)




一人になると、まわりのことも気にしなくて良いせいか、悩みが十倍くらいに膨らんだような気がした。




しっかりしろ!私!

この世には魔女なんていない。

だから、あのおばあさんは魔女じゃない。

つまり、おばあさんがくれたあの木の実は魔法の木の実なんかじゃない。

だから、ヒデくんにチョコをあげても何の心配もない。




何度も何度も、そんなことを自分に言い聞かせる。




(うん、これで大丈夫!)




そう言い聞かせても、5分も経つと、また心配になってくる。

だって、もしも、あれがおばあさんの言った通り、惚れ薬みたいな効果のある木の実だったとしたら…




頭に浮かぶのは、お揃いのセーターを着て、手を繋いでテーマパークを歩いてる私とヒデくん……




「わーーーっ!」




自分のおばかな妄想に顔が熱くなる。





今時ペアルックなんて、ないってば!

でも……妄想の私とヒデくんは、顔を見合わせてすっごく幸せそうに笑ってて……




もしも、本当にヒデくんとつきあうようなことになったら、毎日がどんなに楽しいだろう。

みんな、羨ましがるだろうなぁ…

そうだ…奈津美とダブルデートしよう!

奈津美…ヒデくんを見たら驚くだろうなぁ。

ヒデくんは奈津美の彼氏よりずっと若くて格好良いから…




そんなことを考えると、なんだかすっごくわくわくして自然と笑みがこぼれた。


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