第11話




「悪いね。昨日からお世話になりっぱなしで……」


「何言ってんのよ。

美里には旅行のことですっごい迷惑かけたし……」


「そんな…私の方こそ、いろいろしてもらって申し訳ないくらいだよ。

……本当に良い彼氏だよね。」


私がちょっと無理してそう言うと、奈津美はすごく嬉しそうに微笑んだ。




昨夜、ちょうどごはんを食べ終えた頃、奈津美から着信があった。

あんまり話したくない気分だったけど、無視するのも何かなと思って出てみたら、近くにいるから今からそこに行くって言い出して…


奈津美は、見知らぬおじさんと一緒に来て…それが彼氏だったわけなんだけど、なんと!お土産を持って来てくれたんだ。

それも、私の分だけじゃなくて職場の人にあげるものまで……

画像もたくさん撮ってきてくれてて、しかも、ファミレスの支払いも彼氏が払ってくれて……


奈津美の彼氏は、想像とはまるで違って地味な普通のおじさんだったけど、穏やかそうで人は善さそうな人だった。

これが若くて格好良い人だったら少々イラッとしたかもしれない……


そんなわけで、単純な私はついさっきまでの奈津美に対するもやもやもぱっと晴れてしまって、機嫌良く帰って来たってわけ。

しかも、話してる時に、バレンタインデーの話題が出たから、奈津美にチョコの作り方を教えてって自然に頼めて……




あ…別に、おばあさんのあの話を信じたわけじゃないよ!

魔女だの魔法だの、そんな非科学的なことは信じない!

でも…奈津美に、バレンタインにチョコをあげる相手もいないなんて思われたらシャクだから、ちょっと見栄を張っただけっていうか……

自慢じゃないけど、私は料理は一切ダメだし、お菓子なんて作ったこともないから。







「あ!美里!

それじゃあ、温度が高過ぎ!

チョコが煮立っちゃうよ!」


「え…そ、そうなの?」




奈津美のおすすめはワインを入れたチョコケーキ。

とってもおいしそうだけど、難しそう…

チョコを溶かすにもそのまま火にかけちゃいけないんだって。

そんなことも知らないのって、呆れられてしまった。




何度かの失敗を重ね、悪戦苦闘しながらも、私はようやくチョコの作り方をマスターした。


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