第12話
*
「出来た!!」
すごい!まるでお店で売ってるものみたい!
やっぱり私ってやれば出来る子だったんだ!
自分でも惚れ惚れしてしまう出来栄えに、私は思わずにんまりと微笑んだ。
誰にあげるのかって奈津美にしつこく聞かれたけど、私は最後まで話さなかった。
佑樹やヒデくんのことは今まで何度も話したことはあったけど、奈津美にも彼らはただの幼馴染みだって言い通してるから、まさかそのヒデくんにあげるなんて思いもしないはず…
(本当に馬鹿みたい。
もういい年なのに、なんでこんなに頑なに好きだってことを隠してしまうんだろう?)
普段なら恥ずかしくて絶対選ばないようなピンクと赤のハートだらけの包装紙で綺麗にラッピング。
もちろん、ケーキにはおばあさんにもらったあの木の実を混ぜた。
信じてるわけじゃないってば!
ただ……奈津美がアーモンドとか入れたら香ばしくておいしいかも…って言ったから、それで……
そう…これで、今年のちょっと楽しいバレンタインは終わり。
作ったところで、ヒデくんにあげられないことは最初からわかってた。
だって、わざわざ「チョコを渡したいから…」なんて呼び出したり出来ないもん。
これは、パパにでもあげよう。
チョコなんてめったにあげないから、こんなのあげたらお小遣いでもくれるかも…
そんなことを考えていると、不意にメールの着信音が鳴った。
『美里、久しぶり!
今、実家に帰って来てるんだけど、家に誰もいないんだ。
みんな、どこに行ったか知らないか?』
『えっ!?そうなの?
ママに聞いてみるね。』
う、嘘ーーー!
なんで、こんな時にヒデ君からメールが来る!?
私は半年程前から一人暮らしをしているけれど、それはおばあちゃんが住んでた小さなマンション。
おばあちゃんがもっと良い所に引っ越したのを機に、頼み込んで住ませてもらってる。
普通に歩いても5、6分だから、走ったら数分で実家に着く。
私は、すぐに部屋を飛び出し……鍵をかける段になって、もう一度部屋に戻って、例の「アレ」を持ち出した。
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