第8話
だけど、そういう密着した関係って、却ってややこしいもので…
私はいつの頃からか、そんな気持ちを隠すようになっていた。
ヒデくんはとにかく人気者だったから、昔のことを聞かれたり、誕生日の時なんかはプレゼントを渡してって頼まれることもあった。
そんな時は決まって、私とヒデくんの仲を詮索された。
「ねぇ、あんた達、本当にただの幼馴染み?」
「そうだよ。」
「あんな格好良い人がすぐ傍にいるのに、好きになったりしなかったの?」
「傍にいすぎたのかもね。
私と佑樹とヒデくんは、三人兄弟みたいなもんだから。
男として見たことがないんだ。」
心にもない嘘を、私はとても上手に話してた。
でも、なんでだろう?
なんで私はあんな嘘を吐くようになったんだろう?
思春期の少女特有のあまのじゃくな行動?
それとも、ヒデくんが眩し過ぎたから…?
多分……
自分に自信がなかったから。
ヒデくんと私はどう考えても釣り合わない。
それに、私が佑樹のことを兄弟みたいに思ってるように、ヒデくんもきっと私を妹みたいに想ってるってことも察しがつくから。
そうやって、自分の気持ちを打ち明けられない間に、ヒデくんは遠くの大学に行くことになって…
もちろん、お盆休みやお正月とかには実家に帰って来たからたまには会えたし、メールや手紙はそれなりにやりとりはしてたけど、住んでる所が離れるとやっぱり気持ちも離れるっていうか…
私が気にしすぎてたのかもしれないけど、どうも前以上に踏み込めなくなってしまったんだ。
聞きたいことがあっても、メールに書くのはお天気の事とかごく当たり障りのないことばかり。
そんな私が、今更好きですなんて、言えるはずがない。
「おいっ!」
「いたっ!」
突然感じた頭への衝撃は、おばあさんの固い杖だった。
「なんじゃ、なんじゃ……
わしがせっかくとっておきのらぶろまんすの話をしとるというのに、遠い目をして物思いにふけるとは……」
「え…あ…その…さっきのお酒が強くて…」
私がそう言うと、おばあさんは小さく吹き出して肩を揺らした。
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