第7話
「誰が魔女じゃ、失礼な!」
「す、すみません……」
まぁ、確かにこんな所に魔女がいるはずはない。
そもそも、魔女なんてもの自体、御伽噺の登場人物…つまりはフィクションなんだもん。
「そりゃまぁ、昔からそういうことはよく言われておったが。
…そんなことより、すまんがそこの箱を取っておくれ。」
言われた通りにすると、おばあさんはそこから布を取り出して、それに何か変な臭いのするよくわからないものを塗りつけ、さらにそれを足に貼り付けた。
どうやら膏薬みたいなものらしい。
「よし、これで明日には痛みがひくじゃろう。
さてと…そういえば、あんたは居酒屋を探してたと言うておったな。
酒が飲みたいのか?」
「え、ええ、まぁ…」
「そうか、そうか…
実は、わしも酒が大好きでな。」
*
「……ねぇ、おばあちゃん…ひどいと思わない!?」
「そりゃあ、酷い!
おまえさんも早く彼氏を作って、そんな奴、見返してやるんじゃ!」
おばあさんの家には、いろんな種類のお酒がたっぷりあった。
まるで、小さな酒屋さんみたい。
どこにでも売ってるようなお酒から、見慣れないもの、さらには瓶に漬けられたあやしげなものまで……
外国のものらしきお酒が強かったせいか、急に酔いが回ってきて、私は奈津美の愚痴を延々と話していた。
「でも…彼氏なんて……」
「なんじゃ、いい年をして好きな男の一人もおらんのか?
わしが若い頃はそりゃあもう情熱的で……」
その時、私の頭の中にはある人の笑顔が浮かんでいた。
(ヒデ君……)
それは私より二つ年上の幼馴染み。
小さい頃、私と、佑樹とヒデくんはどこに行くにも一緒だった。
お母さん達も同じパン教室に通ってたから、家族ぐるみで付き合ってた。
優しくて、格好良いヒデ君に私は子供の頃から憧れてて……
それは、小学生になっても、思春期になっても、ずっと変わりなく……いや、年と共に「好き」の度合いはどんどん深くなっていた。
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