第7話

「誰が魔女じゃ、失礼な!」


「す、すみません……」




まぁ、確かにこんな所に魔女がいるはずはない。

そもそも、魔女なんてもの自体、御伽噺の登場人物…つまりはフィクションなんだもん。




「そりゃまぁ、昔からそういうことはよく言われておったが。

…そんなことより、すまんがそこの箱を取っておくれ。」


言われた通りにすると、おばあさんはそこから布を取り出して、それに何か変な臭いのするよくわからないものを塗りつけ、さらにそれを足に貼り付けた。

どうやら膏薬みたいなものらしい。




「よし、これで明日には痛みがひくじゃろう。

さてと…そういえば、あんたは居酒屋を探してたと言うておったな。

酒が飲みたいのか?」


「え、ええ、まぁ…」


「そうか、そうか…

実は、わしも酒が大好きでな。」







「……ねぇ、おばあちゃん…ひどいと思わない!?」


「そりゃあ、酷い!

おまえさんも早く彼氏を作って、そんな奴、見返してやるんじゃ!」




おばあさんの家には、いろんな種類のお酒がたっぷりあった。

まるで、小さな酒屋さんみたい。

どこにでも売ってるようなお酒から、見慣れないもの、さらには瓶に漬けられたあやしげなものまで……


外国のものらしきお酒が強かったせいか、急に酔いが回ってきて、私は奈津美の愚痴を延々と話していた。




「でも…彼氏なんて……」


「なんじゃ、いい年をして好きな男の一人もおらんのか?

わしが若い頃はそりゃあもう情熱的で……」


その時、私の頭の中にはある人の笑顔が浮かんでいた。




(ヒデ君……)




それは私より二つ年上の幼馴染み。

小さい頃、私と、佑樹とヒデくんはどこに行くにも一緒だった。

お母さん達も同じパン教室に通ってたから、家族ぐるみで付き合ってた。


優しくて、格好良いヒデ君に私は子供の頃から憧れてて……

それは、小学生になっても、思春期になっても、ずっと変わりなく……いや、年と共に「好き」の度合いはどんどん深くなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る