第6話
「だ、誰よ!隠れてないで出てきなさいよ!
言っとくけど、私、おばけなんてちっとも怖くないんだから!
水晶のブレスレットだってつけてるし、出て来ても無駄なんだからね!」
いるはずのないおばけ相手に何をむきになって言ってるんだって、矛盾を感じながらも、私は恐怖のあまりぺらぺらとまくしたてていた。
「わしゃ、おばけなんぞじゃありゃせん。
ここじゃ、ここ…」
「え……?」
声のした方に懐中電灯を向けると、そこには背の高い雑草の間に倒れる人の姿が照らし出された。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫なもんか。
起き上がろうにも起き上がれんから、ここでこうして倒れとるんじゃ。」
声の主がおばけじゃないとわかった以上、怖がるものなんてなにもない。
私はすぐにそこに行って、倒れていたおばあさんを助け起こした。
「すまんが、家まで送っておくれ。
なぁに、すぐそこじゃ。」
こういう状況だもの。
嫌だなんて言えるはずもなく、私はおばあさんを背負って家に向かって歩き始めた。
*
(く、くそーーー!どこがすぐ傍なんだ…!)
私はこの寒い中、汗びっしょりになりながら、ようやくおばあさんを家まで送り届けた。
おばあさんは、私の背中で、おんぶしてもらうのは何十年ぶりだとか、野草を積みに行ってたとか、誰かが置いてったバケツに蹴つまづいて倒れたんだとか、時代劇に良く出るなんとかさんが好きだとか、ずっと話し続けてた。
私も最初は相槌を打ったりもしてたけど、途中からは疲れて話すことも出来なくなった。
(なんで今日はこんなことばっかりなのよーーーー!)
私は心の中で、そんな叫び声を上げた。
「さて…と。」
おばあさんが部屋の明かりをつけた時、今度は現実に叫び声を上げてしまった。
「騒がしいおなごじゃのぅ…一体、どうしたんじゃ!?」
「ま、ま、魔女ーーー!!」
だって、おばあさんの顔は、昔、絵本で見た悪い魔女とそっくりで……
本の中から魔法で飛び出して来たって言われたら信じてしまう程、とにかくそっくりだったんだもの!
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