第6話

「だ、誰よ!隠れてないで出てきなさいよ!

言っとくけど、私、おばけなんてちっとも怖くないんだから!

水晶のブレスレットだってつけてるし、出て来ても無駄なんだからね!」


いるはずのないおばけ相手に何をむきになって言ってるんだって、矛盾を感じながらも、私は恐怖のあまりぺらぺらとまくしたてていた。




「わしゃ、おばけなんぞじゃありゃせん。

ここじゃ、ここ…」


「え……?」




声のした方に懐中電灯を向けると、そこには背の高い雑草の間に倒れる人の姿が照らし出された。




「だ、大丈夫ですか!?」


「大丈夫なもんか。

起き上がろうにも起き上がれんから、ここでこうして倒れとるんじゃ。」


声の主がおばけじゃないとわかった以上、怖がるものなんてなにもない。

私はすぐにそこに行って、倒れていたおばあさんを助け起こした。




「すまんが、家まで送っておくれ。

なぁに、すぐそこじゃ。」




こういう状況だもの。

嫌だなんて言えるはずもなく、私はおばあさんを背負って家に向かって歩き始めた。







(く、くそーーー!どこがすぐ傍なんだ…!)




私はこの寒い中、汗びっしょりになりながら、ようやくおばあさんを家まで送り届けた。

おばあさんは、私の背中で、おんぶしてもらうのは何十年ぶりだとか、野草を積みに行ってたとか、誰かが置いてったバケツに蹴つまづいて倒れたんだとか、時代劇に良く出るなんとかさんが好きだとか、ずっと話し続けてた。

私も最初は相槌を打ったりもしてたけど、途中からは疲れて話すことも出来なくなった。





(なんで今日はこんなことばっかりなのよーーーー!)




私は心の中で、そんな叫び声を上げた。




「さて…と。」


おばあさんが部屋の明かりをつけた時、今度は現実に叫び声を上げてしまった。




「騒がしいおなごじゃのぅ…一体、どうしたんじゃ!?」


「ま、ま、魔女ーーー!!」




だって、おばあさんの顔は、昔、絵本で見た悪い魔女とそっくりで……

本の中から魔法で飛び出して来たって言われたら信じてしまう程、とにかくそっくりだったんだもの!


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