第5話
*
「ないじゃん!
居酒屋なんて、どこにもないじゃんよぉ~!」
旅館にはお父さん用の缶ビールしかなくて、それを私はぐいぐいとあっと言う間に飲み干して…とてもじゃないけど、今の私の爆発しそうな心の中はそんなもんじゃおさまらない!
もっともっと飲んで大騒ぎでもしなきゃ、絶対に今日という日を後悔するよ!
しかも、旅館のおじさん達は、朝が早いからってもう寝るとか言い出すし……
こんな時間、子供だって寝ないよ!
ちょっと行った所に自動販売機があるとは言ってたけど、一人で部屋で飲むなんていやだ。
誰かと一緒に飲みたいから、私は居酒屋の場所を教えてもらった。
歩いたら40分くらいかかるらしいけど、そんなこと構うもんか。
最初は冷たい夜風が気持ち良い…なんて、余裕だったけど……
なんだかどんなに歩いてもそれらしき店はみつからないし、そのうち、自分がどっちから来たかもよくわからないような状況になって……
寒いし、真っ暗だし、誰もいないし……
私…こう見えてもけっこう怖がりなんだぞ…
「おーい…」
へ……!?
今、何か変な声がした?
私は、怯えながらあたりをきょろきょろと見渡した。
でも、誰もいない…そうよね…こんな暗闇に誰かいるはずがない。
いるとしたら、私と同じように懐中電灯くらい持ってるはずだ。
でなきゃ暗くて歩けないもん。
(でも……もしかして、それが…おばけだったりしたら……)
不意に浮かんだ妄想に、私はぶるっと身震いした。
ば、ば、ばか……
そんな非科学的なもの、この世にいないって…!
怖いと思うから、ありもしない声が聞こえるんだ。
そんなもの、ないない!
私は自分にそう言い聞かせて、大きく深呼吸をした。
(さ、これで大丈夫!)
「お~い…」
またも聞こえた薄気味の悪い声に、私は思わず悲鳴を上げた。
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