第3話
*
「ねむ……」
朝4時に寝たことはあっても、起きたことなんていまだかつてなかった。
半分寝たまま準備をして、私は始発電車に飛び乗った。
そこから、何度も乗り換えて…
最終的には一両しかない列車に乗って、ようやくたどり着いたのは、何もない…駅員さんさえいない無人駅。
これほどのひなび度を希望したわけじゃなかったんだけど、これはこれで貴重な体験だと自分に言い聞かせた。
そうでもしないと、余計に後悔しくなりそうだったから。
何時間も乗り物に揺られて、ここに着くまでにどっぷり疲れてしまったけど…
とりあえず、送迎の車が来てるはずだから…それに乗って旅館に着いたらご馳走食べて、温泉入っておいしい地酒飲んで最高の気分でゆっくり眠るんだ!
そんなことを考えながら駅の外に出てみると……
(まさか、ね……)
だって、そこに停まっていたのは一台の軽トラだったんだもん。
これが送迎の車のはずはない。
まだかなぁ?と、私がきょろきょろしていたら、軽トラのおじさんが明るく声をかけて来た。
「富永さんかい?」
「え…は、はい、そうですが……」
「迎えに来たよ。
さ、早く乗って。」
「は、はい。」
(う、嘘ーーーー!)
私は心の中の動揺を悟られないよう、やたらと愛想良く微笑みながら、おじさんのとなりの席に乗り込んだ。
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