第2話 神様の図書館(アカシックレコード)
もし、人はあらゆる生物の運命を知る事が出来る力を持っているとすれば、どうしていただろうか。その力は平等に分け与えられたモノではなく、選ばれた者だけが使える能力であるならば……その世界はどんな未来が待っているのだろうか。
子供の頃――これから起こり得る出来事を事前に知ることが出来れば、悪いことを回避できるだろう。人生はもっと幸せに過ごすことが出来るだろうと誰もが思っていたに違いない。
当然のことながらそんな夢物語は現実に起こることはない。
我々人間は自由意志の元、それぞれの運命は誰にも分かるわけがない。何人たりとも、未来を知る事は出来ないのだ。
『人は人生の中で幾度となく、様々な選択をして生きている。その選択によってもたらされる未来は自分にとって良い結果をもたらす事もあれば、悪い結果となる事だってある。どちらにしても、選択の結果であらゆる未来が待っている事に間違いはない』
宇宙誕生から今現在まで起こった出来事、生物一つ一つの生命に関する記録、更にこれから起こり得る出来事まで全てを網羅している、究極のデータバンク。人はアカシックレコードと呼んだり、神様の図書館などと呼んだりしている。このデータバンクは精神世界に存在するとされ、誰でもアクセス出来るわけではない。アクセスするには、かなり高度な霊力を必要とする。修行僧を経て力を得た人でも、アクセス出来る人はほとんど存在せず、何らかのキッカケによって見られるようになった事例が多い。勿論、俺のように生まれつき特別な力を持っている人も、
小さい頃から変な夢を見る俺は、それがアカシックレコードと知るには時間が掛かった。
能力の存在に薄々気付き始めたのは、祖父のお見舞いをする為、ある国立病院に行った時の出来事からだ。
同室のベッドで休んでいる、祖父と同世代ぐらいの白髪の患者さん、名札には
時間が流れ、一週間後の午後二時三十三分、病室から移されたICUにて死亡が確認された。
単に夢の中の出来事。そう思いたかったが、実際にXデーを迎えたその日、祖父から隣のベッドで療養していた宮田さんが亡くなったと連絡があった。夢が現実化されたのだ。
その後、何度かフルネームを見ただけで、その人の人生の歩みを見るようになった。自分には特別な能力があると思い始めた時には、いつでも映像を見られるぐらいに能力のコントロールが可能になっていた。
能力を発動させる条件として、一種の恋愛感情に似た意識を持った時、初めてアカシックレコードにアクセス出来ると考えた。思春期の真っただ中だった中学生時代、俺はそう結論づけた。好きな人の事をもっと知りたいと思う強い感情や意識によって、目に付けていた女子の人生が見られるようになった事実が、この仮説を実証したのだ。
これは凄い能力とばかりに、色々な人の人生を覗き見た。
だが気になる女子の中で唯一、アカシックレコードを見ることが出来ない、由比ヶ浜女学院に通う
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