第16話

「こうやって説明されると、なんだこんなことかって思ってしまいますね」

「事の真相なんて、大抵はそんなものだよ」

「少し残念です。予想していたものと大分違っていましたから」

「君はどう予想したんだ?」

「予想というより期待ですかね。僕は友達が不幸にならないように、友達に送るというサイクルが繰り返されて広まったと期待したんですよ」

「現実的に考えて、『友達が不幸になる』なんて戯言を信じる人間はいないだろう。そもそも友達を不幸にしないために友達に送るなんて、矛盾している」

「その矛盾も含めて無限にサイクルしたと思ったんです」

「そんな理想論、成り立つはずもないね」

 そう、ですね。――と僕は呟いて彼女を見た。

 気付けば左だけに本が山積みになっていた。

 恐らく最後の本だろう。

 それを読みながら彼女は言った。

「さて、私の説明はこれで終わりだ」

「あ、はい。ありがとうございました。それに長々と説明させてしまってすみません」

「別にいいよ。君と話して分かったこともあったしね。」そう言って彼女は、最後の本を閉じ、万歳するように体を伸ばした。「そしてまた、分からないこともできたんだがね」

 あぁ、流石に疲れたな――と、彼女は呟く。

 そりゃ本を読みながら、これだけ話せば疲れるだろう。

「分からないことですか? あなたが分からないことが僕に分かるとは思えませんが、せっかくだから聞かせて下さい」

「いや、これは君にしか分からないことなんだよ」

「僕にしか?」

「あぁ。ではお言葉に甘えさせて貰うよ」

 彼女は今日初めて僕を見て言った。

「君はどうして、このチェーンメールをつくったんだ?」

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