第6話

 この後、彼は週末に新作の服が出るから買いに行くと言っていました。

 で、実際に買いに行ったんです。

 そこまでは良かったんですけど、その次の日に彼は――交通事故に遭いました。

 どうやら彼はその日、自分のドッペルゲンガーに出会ってしまったらしいです。

 いえ、出会ったのではなく、見たというのが正しいですね。遠巻きに後ろ姿を見ただけだったみたいですから。

 その後ろ姿を追う内に、気付かず道路に飛び出して――という話だそうですよ。

 彼は事故後、『あれは俺だった』、『見た瞬間に分かった』って言っていたらしいです。それに『こんな偶然はあり得ない』とも言っていたようです。自分とまったく同じ服装で同じ髪型だったから、そんな偶然はあり得ないって。

 まぁ、どう考えても見間違いですよね。

 でもどういうわけか、彼は信じてしまった。

 結局、彼は今も入院中で、いつも何かに怯えるように錯乱している状態が続いているみたいですよ。

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