第4話

 今の話から、数日間は特に何もありませんでした。

 あぁ、一つだけ変わったことがありましたね。

 あれから加藤くんが友達を無理矢理連れて、昼休みに屋上に来るようになったんです。

 加藤くんは同じ話を毎回してきましたけど、僕は聞き流して昼食をとっていましたね。

 

 そのまま何事もなければ良かったんですけど、そんな都合が良いこともありませんでした。

 先週の話です。

 学内で一つの事件が起こりました。

 どんな事件かは詳しく聞いていませんけど、どうやら夜中に窓ガラスが割られていたとか、そんな話でしたよ。

 

 僕は犯人が見つかるとは思ってませんでしたが、次の日、その犯人が見つかったという噂が流れました。

 そうです。加藤くんがその犯人だって、皆が噂をしていたんです。

 その噂は瞬く間に学校中に広まりました。

 

 そもそも何処から流れた噂なのか、聞いてみるとどうやら裏サイトが出所のようでした。

 『昨日、加藤が夜中に学校へ入るところを見た』という目撃証言を誰かが裏サイトに書いたようです。

 彼はその日に限って家に一人でいたので、自分のアリバイを証明することが出来ませんでした。

 

 でも、彼は言っていました。俺はやってない――俺は知らない――俺はその日は家にいたんだ――ってね。

 そこで思い出したかのように、彼が自分のドッペルゲンガーが出たと以前言っていたことが、裏サイトに書き込まれました。

 その結果、更に状況は悪くなりました。

 出たよ加藤の虚言癖――いい加減白状したらどうだよ。

 ドッペルゲンガーとか馬鹿じゃねえのお前――とか、裏サイトによく書かれていました。

 実際にも陰でひそひそ、そんな話をしている奴等を僕は見ましたね。

 

 ここまで広まってくると、流石に学校側も見過ごせなくなったみたいです。

 彼をこっそり呼び出して話をしたようです。

 

 その話の後、彼が僕の所に来ました。

 彼は生徒だけでなく教師まで自分を疑っていると嘆いていましたね。

 それに本当にドッペルゲンガーが出たんじゃないかと疑っていました。

 

 彼は完全に疑心暗鬼を生じていましたよ。

 だから僕は彼を励ますためにこんな話をしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る