第107話 トヨダ式オートマティックライフルの立場


 ベック師匠から許可を得て、普段使い用にポンプアクションのショットガンを購入した。


 これもジョン・トヨダが設計に関わっていやがった。あいつ転生者かなんかなんじゃねえの?

 今度来たらカマかけてみようか。そもそも自分だけが転生者だと思っていたが、そうでもないのかもしれない。死生観が殺伐としていたからあんまり前世がどうとか考えたり話したりしてなかったし。


 ジョンさんが作ったという11型ショットガンは5+1発のポンプ式だ。師匠が仕入れた二丁のうち、一丁は酒場のバーテンがディフェンス用に買い込んでいた。残った一丁はヘンリー師匠が欲しがっていたが、ダブルバレルのショットガンのほうが使い慣れているという理由で買い替えていないらしい。

 そのうち改造して使いやすくなったらプレゼントしよう。


 さて、当初考えていたのは4+1発のサイズのショットガンをギリギリで切り落としてストックレスにする計画だった。これなら短く収まって、背負っても邪魔にならない。

 しかしスラッグ弾を撃つときには不安定だ。


 解決策としては折りたたみストックを作るよね。だって銃鍛冶だもの。


 折りたたみストックと干渉しないグリップとなるとピストルタイプだ。木製のストックをグリップ部分だけ残した形で切り落として、というのも手軽でいいが、使いにくい。

 個人的にはそのままバレルだけ短く切って、以前作ったダガーっぽい銃剣をつけてトレンチガンと呼びたい所だ。だが塹壕トレンチいずり回る予定もない。


 ……素直に鉄板を曲げて折りたたみストックを作ろう。グリップ兼ストックの接続パーツは堅めの木材でいいかな。ガシャンとポンプしたときにハンマー部品がにょっきり伸びてくるので干渉しないように注意せねば。折りたたんだままでも撃てないと、いざって時に危ないよね。


 と、師匠に相談しつつ設計していたら。


「トヨダのせがれにもらったT.A.Rはどうすんだ?」


 すっかり忘れていた。あれはライフル弾を使うから一発がお高いんですよね。ショットガンのスラッグも似たようなものだけど。


 ストックなしでもいいような気がしてきたぞ?


 しかし重たい5.8kgのフルオートライフルと3.6kgのショットガン。バレルを切り詰めることを考えるとさらに軽くなる。毎回、都市外のシューティングレンジにT.A.Rを担いで歩くのはつらい。商隊の馬車移動や車移動ならいいんだけれど。かと言ってショットガンだけだとストック無しにスラッグを撃っても当たらないだろう。シカ弾なら当たるかもしれないが飛距離が大幅に短くなる。


 やっぱりストックは必要だよな。


 さいわいアルミのコの字材チャンネルがあるので割と簡単に仮組みができる。構造に納得できたら師匠にお願いして鉄材でしっかりしたものを作ってもらおう。


 もちろん対価はお支払いしますよ。商売になりそうなら商品化してマージンという名のお小遣いも入ってきますし。


 T.A.Rのほうはしばらく車載武装として待機してもらうことにしよう。


 あ、西都市鍛冶ギルド長、ムラタのおやっさんからの相談も忘れてた。孫のジャックさんの所にも一度顔を出しておかないとな。

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