第106話 カービンを捨ててショットガンを取る


 師匠、レバーアクションカービンじゃなくてショットガンが欲しいです。


 という話を朝食の時にする。


「急にどうした?」

「カービンの有効射程200ヤードが必要とは思えなくなってきました。ポンプアクションのショットガンのほうが連射しやすくて近距離で使えると思うんです」

「そりゃ近距離ならそうだろうけどよ。アウトレンジの相手にはどうする気だ?」

「そもそも相手しない、というのが正しいかと。一粒弾なら75フィートくらいまで人のサイズには当てられると思いますし」

「ブレネケの一粒弾ならまあ、……練習次第だがいけるか」

「森の中なら100フィートクラスの距離を狙うことはありませんし、ショットガンの有効性はヘンリー師匠と狩りに行ってますからよく知ってます」


「できれば旅の時は44口径のリボルバーも持ち歩かずに済ませたいんです」

「そんなに嫌か」

「トヨダの38口径でそろえたいです。メインにトヨダのオートカービンキット、サブウェポンにディフェンダーの4インチ。それで威力が足りなければショットガンといった感じで」

「まあ考えてやるけどよ。遠くから狙われたらどうする気だ?」

「街の中ならカービンキットで届きますし、外なら基本的に一人では出歩かないのでベック師匠かエミリーのライフルがあります。自分は50フィート、最大でも75フィートあたりまでを担当にしたいんです」


「割り切れるんならいいけどな。くたばりかけた時にやっぱ持っておけば良かったとか言っても始まらねえぞ」

「オートカービンなら有効射程は100フィートまでいけます。それ以上遠くから攻撃してくる敵なら最初から勝てません」


 実際、100フィートは動かないまとであれば当てられる。人のサイズにギリギリで、だけど。20連マガジンもあるので近づけないようにバンバン撃っていれば十分に威嚇にもなるし。運が良ければ相手は死ぬ。当たるかどうかはさておいて、十分な威力をたもったまま飛ぶ距離は200フィート程度はあるのだ。


 近距離特化にするとなれば100~200フィートがメインレンジとなるであろうライフルやレバーアクションカービン銃ではなく、50フィートクラスに調整したショットガンのほうが使いやすい。

 ピストル弾を使うレバーアクションカービンでも100フィートくらいまで当てられるだろうが、単発の威力よりだいたいで狙ってそれなり以上のダメージが稼げるショットガンの方が使いやすい。


 射程距離が必要なら一粒弾スラッグをつかえばいい。近距離でも44口径ピストル弾をレバーアクションで何発も撃ち込むよりシカ弾を撃つほうが効率もいいだろう。44口径リボルバーと弾が兼用という利点は消えるが、レバーアクションカービンやリボルバーに一発ずつ弾を込め直す手間を考えると効率が悪すぎる。

 トヨダ式のほうが圧倒的に有利だ。ピストルカービンの代わりはマガジンが使い回せるトヨダ式オートハンドガンベースで自作しちゃったし。師匠お手製の15発マガジンや20発マガジンもある。


 威力や射程が欲しい時はトヨダ・ディフェンダーのカービンキットで、取り回しが必要なときはノーマルの4インチディフェンダーを。圧倒的な破壊力が欲しければショットガンに一粒弾スラッグだいたい・・・・で狙って撃ちたければシカ弾を込めて使えばいい。

 背負っておけば邪魔にもならないだろうし、旅の時なら馬のくらに挿しておけばいい。ウェスタン映画でもよくあるスタイルだ。


「ハンドガンをトヨダのディフェンダーで統一したいのは分かった。ショットガンはどんなのが欲しいんだ?」


 ベック師匠に問われる。


「ポンプ式で可能な限り短めのやつを。四発のチューブとバレルが同じくらいの長さなら取り回しもいいですし、背負っても邪魔になりにくいと思います」

「いや、邪魔だろ」

「グリップとストックは邪魔にならないやつを自分で作ります」


 しばらくの沈黙。

 師匠がため息をつくと。


「分かった。言い出すと聞かねえってのが分かった。在庫に一丁あるけど買うか?」

「ありがとうございます!!」


「ただし、西都市の中にいるときはリボルバーを吊っておけ。毎日の練習も継続だ」

「よろこんで!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る