第98話 アルミ材料の使い道
いつの間にやらアルミナム素材が手に入るようになった。
西都市ギルドが食器やその他の素材として活路を見いだしたのだ。
もちろんアルミ
さすがに前世の市販アルミ箔ほど薄くはないが、そこそこ使い物になり始めているという。
「以前の二枚重ねで1/32インチに圧延するアルミ材ですが、その後はどうですか?」
ギルド長、ムラタのおやっさんの所に行く用事のついでに世間話。
「あれな。一枚で1/64インチまで追い込めたよ。薄いのはいいが、薄すぎて皿には使いにくい、なにかを包むには厚いで難儀してるよ」
「使い捨て前提の軽い皿であればプレス加工で作れますよ。商隊を組んで出る時にあると便利かも知れません」
バーベキュー用の使い捨てアルミ皿みたいなものだ。
「缶詰めから直接食うやつが多いからなぁ。でも、途中で狩った肉を料理することもあるし試してみるのもいいかもしれねえな」
「最初は金型を用意しないで鉄鍋二枚の間に挟んでプレスしてみるとかで少量生産ができませんか?」
「そうだな。次の北都市行商もあるし試作してみるか」
「ついでにスプーンやフォーク、マグカップもアルミで作れるならお願いします。鉄や銅だと金気が移りますし、
「使い捨てじゃないアルミの食器か。そいつを商売にしていいか?」
「もちろんかまいません。便利な物が増えるのは大歓迎ですよ」
軽くてそこそこ丈夫なアルミは便利な素材だ。キャンプ用品にもよく使われる。さすがにこの世界ではチタン製品は期待できそうにない。なのでアルミ製品は
「ああ、包みのための薄いアルミ箔なんですが。
今の厚さからだと三、四回ほど冷間圧延したあと、オイルを挟んで二枚重ねで半分の厚さにして巻き取り分離、焼き鈍したらいけるかと」
「そんなに薄いのは試したことがねえなぁ。量産も大変だろうし……」
「需要があればいいんですけどね。昼の弁当を包むとかなら便利につかえそうですし」
「基本は使い捨てか。もったいねえな」
「使い終わったものを洗って持ってきたら次に買うときに値引き、鋳潰して再利用、とかどうでしょう」
「そこまで手間をかけてらんねえよ」
「ですよね」
「そういやアルミでこんなのを作ったんだが、持ってくかい?」
といって出して来たのがアルミのコの字材。
「鉄骨より軽いし建材に使えるかと思ってな。棒だとそんなに軽くないし、板のままだと強度が足りなくて
「錆びにくいんですよね、これ。2x4のインチ材をつなげるのにつかえそうですね。現場で
インチ材を家や小屋の設計図どおりに切り出しておいて。現場で組み立てるのにこれを使えばネジ
二本を直角に固定できるような金具や三本を角にするような形もあればさらに簡単に」
「また変なところに使い道を見いだしたもんだな、まったく。お前さん本当にベックの弟子か?
銃鍛冶ってより発明家だぞ、その発想。今の建築工法をさらに簡単にできるな。
手法と抱き合わせて大工ギルドに売り込んでみるか」
「お任せしますよ。あと曲げるより鋳造で作った方が簡単かと」
「ふむ、ちと考えてみるよ」
まさかの仮採用。大工ギルドがどう言うかはまだ分からないけれど。
「で、今度はどんなもんが欲しい? どうせなにか
「特に欲しいってものはないんですけれど。
……アルミのこれ、内側が半インチx2インチのやつと同じ厚みのアルミ板、1インチx2インチ断面のアルミ角材、アルミの溶接棒、あとアルミの端材があれば融通していただけると助かります」
「おう、それくらいなら今すぐに用意させる。色々作ってみたからな。そんなんでいいのか?」
「もし儲かったらオートマチック用の.38口径弾、安くしてください」
「むぅ、そいつは厳しいな……」
「だと思ってました。次の買い付けで色々と試しに仕入れたい製品があるのでちょっと色をつけてください。うちの師匠に恩返ししたいので」
「そんくらいならいいぞ。
それにしてもお前さん、商売は鋭いんだか鈍いんだか分からんな。まあ悪い
ついでにうちの孫、ジャックの相談に乗ってやってくれんか。暇なときか、なんなら北都市への商隊、道中だけでもいいから。
あいつ、トヨダさんとこのオート銃に先を越されちまって焦っててなぁ……」
「そのくらいならお安いご用で」
「お前さんの銃鍛冶らしくない目の付け所に期待してんだ、頼むわ」
「ありがとうございます。なんなら今からでも……」
「ああ今日は忙しいから、今度連絡させる。それじゃベックによろしくな」
というやりとりでカービンキットを簡単に作れる素材が手に入ることになった。
穴をあけて切って溶接するだけで前の鉄パイプにネジ切りとか曲面に穴開けとかの面倒な作業が一気に減らせる。
ベック師匠のお使いも終わったし、午後はカービンキットの改良をするか。
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