第94話 ダブルアクションリボルバーのカスタムバレルを造ってみる
ベック師匠の指導の下、ニシ・ベツキ銃砲開発社のダブルアクションリボルバー用に2インチバレルと3インチバレルを造ってみることにした。
と言ってもライフリングを削ったり焼き入れをしたりするのは自分では無理なのでそこら辺は師匠任せだ。俺がやるのは金属塊からウェイトの形を削り出す部分だけ。
ボール盤でバレル穴兼固定穴をあけて、フライス盤で太くて四角いバレルジャケット、サイトを削り出す。サイトと言っても前から後ろまで溝を掘るだけなんだけど。
バレルを短くしたらその分軽くなって反動が増すので、代わりにバレル下におもりを追加する。これで重量を稼ぐのだ。ノーマルのままの
バレルの外側を丸く削ったり、イジェクターロッド
なにせ近くに現れた敵、その腹をめがけて六発ぶち込むのが目的のリボルバー。とっさに抜いて、
2インチのバレルと3インチのバレルを削り出し、3インチのほうにはバレル先端にコンペンセイター穴をあける。S&W M586 キャリーコンプ風に仕上げたニシ・ベツキリボルバーのギャンブラーカスタムだ。二通り造ってミリーに選んでもらおう。
ちまちまと角を削っては本体に
ウェイトの上にはフレームを補強するようにコの字に被さるサイトフレーム。リアサイト、フロントサイトはない。至近距離で向きが分かればいい、という思想でまっすぐ溝が掘ってあるだけだ。その溝の延長線上に的があれば引金を引く、10メートル以内で動いてなければだいたい当たる。といういいかげんな、でも実用上では問題ないサイト。
形ができたら師匠にライフリングを刻んだバレル兼バレルジャケット固定ネジを削り出してもらい、焼き入れ処理も任せる。出来たバレルの表面を磨き、黒さび処理をしてもらう。
バレルジャケットを本体に被せ、新造バレルでがっちり固定して完成。本体側に手を入れるのを嫌った師匠がイジェクターロッドを削り出して入れ替えることで2丁のカスタムモデルが出来た。ミリーに選ばれなかった方は元に戻して商品ケースに戻されることになるのだろう。
「じゃあミリー、使ってみろ」
師匠が.38口径弾を一箱渡す。
「はい」
師匠から二丁の銃を受け取り、店の裏にあるシューティングレンジで7メートルほど先のマンターゲットに向かって立つ。まずキャリーコンプ風3インチモデルを手に弾を込める。ベルトに挟み、深呼吸を一つ。耳栓をチェックして、抜き撃ちの体勢に。
上着をめくり、リボルバーを抜く。おっぱいが揺れるのを俺は見逃さない。
両手で保持して一気に六発連射。ターゲットには15cmほどのバラけ具合に収まっている。初めてでこれなら結構いいところに行くんじゃないだろうか。
2インチモデルでの成績はもうすこし散っているか。横は15cmと3インチモデルと変わらないが縦方向は25cmちょっとに広がっている。本体の軽さと反動を抑えるコンペンセイター無しの影響が出たのだろう。
どちらのモデルであれ、至近距離にぶっぱなす、という目的なら問題ない。あとは持ちやすさだとか抜きやすさだとか、持ち歩いて邪魔にならないとかそういった好みの問題だ。
「俺にも撃たせろ」
ミリーから銃を受け取りながら師匠が言う。
弾を込め、片手で狙いをつけて三発はハンマーを起こしてしっかり狙い撃つ。残りの三発は速射。
「ふむ、それなりに当たるな」
ターゲットにはほぼ真ん中に、5cmほどの散り具合。さすがに慣れたベック師匠だ。2インチモデルでこれなら3インチのキャリーコンプだともっと精度が出るんじゃないか?
銃を持ち替え、また三発狙い撃ち、三発の速射。今度は4cmほどにまとまっている。すげえな。
いや、射撃の腕もそうなんだけど、バレルの精度もすごい。純正の4インチバレルとたいして変わらない命中精度だ。
「凄いっすね、師匠」
「元のバレルより太くかっちり削り出したからな。精度で負けてちゃカスタム屋は務まらねえよ。
それよりこれ、トリガーが滑らかでいいな。撃ちやすい。ハンマー起こしておけばそれなりに当たる銃だ」
「中を見てみましたが、もうちょっとだけ滑らかにできますよ。トリガーも少しは軽くできますし。ミリーの分は俺が買い取りますので弄らせてください」
「え、プレゼントしてくれるの?」
ミリーのしっぽが揺れる。
「お嬢ちゃんが喜ぶならそれでいいか。2インチと3インチどっちがいい?」
「抜き撃ち用なら2インチでお願いします!!
こっちのほうが軽くて撃ちやすいです」
「チューンついでにコンペンセイター穴をあけましょう。2インチでも反動は多少減るでしょうし。3インチのほうはどうします師匠?」
「無改造のやつと合わせて店頭に並べておくさ。撃ち比べたら3インチカスタムの方が欲しくなるだろ」
ベック師匠は商売人だなぁ。
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