第75話 トヨダ式フルオート小銃の改良案
「ジョンさん。ちょっと師匠と相談いいですか」
一応はお客のジョン・トヨダに断って師匠と相談がしたい。
「もちろん良いよ。ガンスミスとしてやりたいこと、商売もあるだろうからね。基本構造に手を入れるようなのはこっちに出して欲しいけど、細かいパーツ交換カスタムとかはそっちで稼いで欲しいね」
理解が早くて助かる。師匠と相談して出せる改良案をまとめよう。
「で、どんなネタがあるんだ?」
師匠がメモ紙と鉛筆を手に、こちらに向く。ジョンは店内に飾ってある銃を見に行ったようだ。相手はミリーに押しつける。客は少ないとはいえ店頭に客だけというのもまずいし。
「まず7.5kgクラスの重量がネックです。取り回しもありますしショートバレルバージョンが欲しいですね」
師匠がメモを取りつつ質問する。
「ガス動作つってたけど、短くしたらなにか問題が出るんじゃねえか? 設計時点でバランス考えてあるんだろうし」
「ガスルートが短くなるのでそのままだと動作サイクル、連射速度が上がりすぎてコントロールできなくなります」
ここで一拍おく。
「なのでガスの流量を調整してサイクルを落とす仕組みを提案しようかと。もちろんリコイル用のバネレートも多少落とす必要があるとは思います」
ふむ、と師匠は納得したような顔。
「バランスの試行錯誤はあっち側でやってもらいましょう。カスタムでやるには手間がかかりすぎます」
「ショートはいいが、精度は落ちるぞ?」
当然の疑問。だが理由付けはいくらでもできる。
「そのとおりです。でもフルオート銃の利点は連射。大量のターゲットに弾をぶち込めればいいので精度はそこまで問題にはならないと思ってます」
そして、と付け加える。
「もともと機関銃は拠点防衛用兵器として考えられたようです。ならこっちは動かず、群がる敵に弾をばらまいて威嚇なりミンチにするなり好き放題できますよ。もちろん都市防衛ならロングバレル版も有用です。城壁に据え置いて遠くの敵を一方的に狩れます」
「悪くねえように聞こえるな。だが防衛用にライフル弾とはいえ20発のマガジンじゃ足りねえだろ」
「多弾装マガジンを作りましょう。据え置きなら予備マグをいっぱい脇に置いてもいいですし。そこらはうちの商品向けですね」
なにかに気づいたような師匠。
「するとショートは持ち歩き用、ロングは据え置き用が前提だな?」
「はい。もちろんロングを馬車に固定してもいいですけどね」
タクティカル馬車の運用が生まれた瞬間だ。トヨタのハイラックスに機関銃を乗せたやつの馬車版。
「ほかの改良案としては、マズルブレーキの効率化ですね。後付けと言ってましたからネジの規格をきっちり出してもらいましょう」
「10インチバレルの穴以外にまだネタがあったか。反動の向きにあわせて穴をあけるとかそういうやつかね?」
「それもありますが、真上にガスが抜けたら視界が悪くなりますし、純粋に反動を減らすなら穴の数や形状も重要です。弾が抜ける穴まわりの形状も射撃精度に影響が出ますし。よけいな発射炎を見えにくくするネタもありますよ。ここらは用途別になりますけど」
あと、と付け加える。
「ストックも形を変えたり、細い金属パイプを曲げや溶接で作れば木をつかうより軽くなるかもしれない、というのも。これはやってみないと分からない部分ですけど。軽くて丈夫なアルミナムが使えれば理想的です。安全装置の切り替えレバーやコッキングレバーも使いやすい形を検討してみたいですね」
師匠は片っ端からメモを取っている。
一段落ついたのか。
「んじゃ、ショートバレルと二脚、三脚の取り付け機構の標準化、マズルのネジ径、ピッチの標準化あたりが出せる案だな。多弾マガジンやストック、マズルブレーキ、セレクターとコッキングレバーはこっちの商売にさせてもらうか」
それに、と師匠がなにか思い出したように付け加える。
「マガジン突っ込むのがめんどくさそうだよな、これ。ジョニーが
それは気づかなかった。ハンドガンはエアガンなどで弄っていたが、さすがに軽機関銃はおもちゃでは持っていなかったもんな。
「あと
「そのあたりか。するとキャリングハンドルって手もあるな。防衛兵器ならいざって時に運ぶ必要もありそうだし…… OK、そこらの話は俺からトヨダの倅にしておこう」
B.A.R.もとい
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