第71話 用途別銃弾の開発と銃剣について考える

 .38オート弾の威力向上策。弾頭に穴を開けてホローポイントにすれば対生物用途にはダメージが大きくなる。当たった後に弾頭が広がり、内蔵や筋肉に与えるダメージが増えるのだ。多少の弾頭重量の軽減は無視できる。その上軽くなる分初速が上がるので近距離では威力軽減を無視できる。多少、中距離以降での貫通力は落ちるが、開拓村での防衛力としては十分以上になるだろう。しかも弾頭の材料を減らせる。開拓村や山の中での防衛では近距離メインだ。威力はつかえるレベルだろう。それこそ大型モンスターが出なければ問題ないし、鹿や熊のような大型動物やモンスター相手ならショットガンやボルトアクションを使うのが常だ。


 ガンスリンガーが.44口径を好むのは身体のどこに当たってもショックやダメージでの行動不能にできる威力があるからだ。大口径弾のエネルギーがどの程度かは知らないが、弾頭の体内侵入による圧力が血管や神経に与えるダメージが大きいから大口径有利となりやすいのではなかろうか。

 では。小口径ホローポイントなら体内で先端が広がるし、近距離なら弾速減衰も少ないのでダメージも十分に大きくなる。利点を理解、周知できればそれなりに普及が見込めそうだ。現在の鉛だけで作られている弾頭では「弾頭が体内侵入後に角度を変えて内蔵や筋肉組織をズタズタにする」、というタンブリング現象による銃創の拡大も見込めないから、やはりホローポイントが有利になる。

 弾頭の鋳型に芯となる重金属を挿して鉛を流し込めば徹甲弾みたいなのもいけるか? 今度師匠に相談してみよう。金属加工については師匠の足下にも及ばない。俺ができるのは前の世界で仕事に関わりのある工場や、そこで働いていた技術者さんとの世間話で聞いたネタやせいぜい趣味だったミリタリネタや雑学くらいだ。


 寝る前のノート整理として日記やアイデアを記しつつ一服。

 今日は珍しくコーヒーではなくお茶だ。

 レンカ茶とセイヨウオトギリのお茶を淹れて飲み比べ。レンカ茶はジャスミン茶のように花の香りをつけたお茶のようだ。緑茶ベースでちょっとだけ癖がある。緑茶は高いので花で水増ししてあるのだろうか。

 セイヨウオトギリ茶は、なんというか、不味い。凄く不味い。ないわ~、これはないわ。

 しかし飲んで小一時間も経つとリラックスしてきたような気もする。次からはセイヨウオトギリ茶を飲み下したら、口直しにレンカ茶をいただくことにしよう。

 そして煙草を一服。こっちはいつもの煙草葉シャグなので別段変わったことはない。フィルターレスなのでちょっとニコチンが重い。が、悪くはない。フィルターレスといっても吸い口は厚手の紙を短冊に切って丸めたものを吸い口にしているからシャグのかけらが口に入ることもない。


 至福のひととき。


 カービンキットはほぼ完成したし、ヘンリー師匠の所で作った数打ちの使い捨ててもいいナイフも用意できている。レバーカービン用の銃剣として作ったダガーも、もっと刺しやすいスパイクに置き換えた。着剣のたびにネジを締めるのは大変だからね。カービンの先端に金具をつけて、そこを支点にスパイクを起こせばロックがかかるようにしたのは便利だ。SKSカービンやモシン・ナガン、四四式騎銃のように折りたたまれていて、使うときに起こすだけというのは手間が少ない。重心が前に寄ってしまうのでミリーのボルトアクションカービンにつけるのはデメリットが多すぎるだろうけれど。

 ふと疑問が脳裏に浮かぶ。銃剣術じゅうけんじゅつってどうすればいいんだ? 銃剣があったら敵が近距離に来ても使えるかな、くらいに思って付け足した銃剣スパイクだが、その効率的な使い方は知らなかった、といまさら思う。日本における銃剣術の元ネタになった短槍術たんそうじゅつなんて分からねえよ俺。弾切れの時の最後の武器、くらいに思っておけば良いか。

 ほかにも武器になる師匠の業物ナイフや、最初にレバーアクションカービン用の銃剣として使うつもりだった、細身のダガーはどうしたものか。ダスターコートの腰にスリットをあけてもらって、そこからとっさに抜けるようにしようか。

 いろいろと考えながら夜は更けていった。

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