第61話 自作ナイフとマニュアルと
ヘンリー師匠の所でナイフを一本だけ自作した。見よう見まねで叩いて削り、最後の焼き入れは師匠任せだ。
これで手持ちのナイフは三本。最初から持っていた細工&皮剥用ナイフ、師匠の手打ちの逸品、そして自作品。自分で作ったナイフは
問題があるとすれば取り付ける銃自体が短いことだ。ノーマルのレバーアクションライフルが30インチのバレル長、全体で125cmであるのに対して、カービンモデルは全長80cmのバレル長20インチ程度に短縮された上にストックも短め。槍にするには短すぎる。代わりに森の中での取り回しはすごく楽だし2kg程度と軽量なんだけれど。
ウェスタン好きの人にはウィンチェスターM1892とランダルカスタムの間くらいのモデルと言えば通じるだろうか。ウィンチェスターM1873カービンの94cmよりもさらに短い。M92トラッパーのようなモデルだ。これは馬上で扱うために短くしたというよりは森の中で使いやすくする目的のほうが大きいのではなかろうか。ショットガンも30インチモデルより短めの20インチ程度のものが一般的だ。元の世界のウェスタン映画よりは見栄えがしない。が、当たり前といえば当たり前。実用性のほうが重要。生き残ってなんぼの世界だもんな。
自作のダガーナイフはカービンに取り付けたままだと邪魔な上に危ないので馬の鞍にぶら下げるシースを用意した。旅の時だけにしか使わないだろう、という前提で普段は自室の机の上に置いてある。ToDoをまとめたノートにペンやインク、紙の束。それに手巻きタバコの道具一式。だんだんと机の上が手狭になってきた。どうにかしないと作業スペースが無くなってしまいそうだ。
最近、雑貨屋さんでみつけたオイルライターを弄りながら考える。このまま死んだらノウハウが消えてしまうのではないか。俺がこの世界に生きた証を残せないのではないかと。
そしてペンを取り。紙にタイトルを書き込む。
「トヨダ式オートマティック拳銃の取り扱い方」
何事かを勉強したいなら自分用の本を書け。座右の銘としているこの言葉は以前の世界で上司に言われた一言だ。これを実践するのは今ではないか。前の世界で覚えていることと開発者のジョン・トヨダさんと話をしたこと。これらを思い出しながらメモをまとめていく。以前の覚え書きメモも取り出して分類していく。第一章は「基本的な操作」そして第二章は「簡易メンテナンスの手順」にしよう。分解整備や個人の趣味に合わせるカスタムについては後の章でいいか。
書き物をしているうちに夜は更けていった。
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