第50話 ToDoの整理をしよう

 ここらでいいかげんノートのToDoを整理しておこう。特に重要、優先度の高いものをピックアップ。

 まず、この世界についてのいろいろな調査はまず置いておく。たとえば「この世界の時間と暦について調べる」などだ。

「生き延びるために〇〇する、〇〇を学ぶ」というのもとりあえずは師匠のおかげでなんとかなっている。

「生活を便利に」というのも後回し。


 モンスターについての調査は重要。ヘンリーさんか街の保安官に聞き取り調査だろうか。

 銃撃戦などに巻きこまれたときの立ち振る舞い、これも重要。

 替えのブーツか靴。これも優先度が高めだ。馴染ませるのに時間がかかるし、今履いているやつが痛み始めている。そもそもソールにゴムが貼ってない。磨り減り防止に鋲がいくつか打たれているが、それ自体が磨り減っている。開拓村の中や山道を歩く分にはいいが、石畳だと滑りそうで怖い。靴底はビブラムソールみたいな一体形成されたパターンはない。ベースのゴム靴底ソールに適当なブロック状のゴム片を貼り付けて細い鋲で固定したソールが西都市での旅行、山歩きブーツの標準的なものだ。

 山歩き用のソールはあと20~30年しないと作るメーカーは出てこないんじゃないだろうか。街歩きや騎乗用のカウボーイブーツはゴムを貼っただけのシンプルなフラットソール。普段靴とアウトドア用ブーツの二足は欲しい。少なくとも街歩き用の靴調達は優先事項だ。今履いているブーツがダメになったら大事おおごとだからね。

 他都市に交易に行った場合に一人はぐれた場合の帰還に関するあれこれ、これも優先度がそこそこ高い。常に非常食と水を個人装備として持ち歩くようにしよう。あと地図も。

 トヨダ式オート拳銃の予備弾薬に関しては量産が始まればなんとかなるし、改良版の予備マガジンも師匠にお願いしている。俺の手を離れて結果待ちだ。やれることはない。

 だいたいこんな所か。命に関わるものの優先度が高めなのはしかたがないだろう。


 防衛用兵器の手榴弾、地雷類に関してはそこまで急がないし、ちょっと使用が面倒だけどプラスティック爆弾もどきはおよそ形になっている。そもそも西都市の外、特に森に入るようなことがなければまず出番はない。いざという時の自衛手段は都市内だったら銃があればいい。急に背中から撃たれるってことはないよね?


 次に優先度が高そうなのは……特にないな。

 生活の不便をなんとかしたい、という類のものばかりだ。トイレとか虫除けとか。衛生管理関係が多めか。この世界の医療について多少調べるのが先か、分かりやすい結果が出るトイレや風呂の整備が先か。悩ましい。

 あとは師匠が今度取りかかろうとしている開拓村への護衛派遣やそれ関係の装備品等か。これもトヨダ式オート拳銃が量産開始されてからだな。今できるのは仕事の流れや必要なものをピックアップしておくくらいか。「僕」の村での経験から優先度の高いものを思い出しておこう。


 まずは靴からだろうか。いいかげん今のやつはメンテナンスしないとまずい。

 靴で思い出したが、「俺」の足の形はモロに日本人という感じの幅広だった。指の長さはエジプト型とローマ型の間くらいで日本人にはわりと少ないタイプだったはずだ。おかげでコンバースが合わない。指先二センチほど余ってやっと幅が合う感じだった。

 「僕」の足もローマ型。スクウェア型ともいう。よく歩く人ほどスクウェアになりやすいらしい。もしかしたらこの世界の靴は俺の足に合うかもしれない。歩くか馬か馬車くらいしかこの西都市には交通手段がない。わざわざ足型を作ってもらわなくてもいいかも。

 この世界の靴は複雑な縫製で、正直高い。三銀から四銀ほどする。普通のブーツで、だ。帆布の編み上げタイプでも二銀五大銅くらいはする。基本的に量産品ではなく、オーダー、採寸、合う足型を探してから作ってもらうものだからだろう。手間がかかるものはどうしても高い。縫製はミシン縫いが多いようだ。

 どうせなら普段履きとしてキャンバススニーカーっぽいものを注文するのもいいかもしれない。普段履きならそれでいいし、靴側に入れるコルクを無くして自分に合うインナーソールをゴムとコルクと布で作るのも面白い。人によって違う土踏まずの大きさを気にする必要がなくなるから、キャンバススニーカーは量産しやすくなって安くできるんじゃなかろうか。師匠には頭の柔らかそうな若い職人さんを紹介してもらう方向でお願いしよう。ミッドソールは強度から考えて革じゃないとダメだろうけれど、貼り付けるアウターソールはゴムがいい。縫い目もゴム接着剤で補強すれば修理は難しくなるだろうが水濡れには強くなりそうだ。

 そういや靴本体とウェルト、ソールを縫い合わせるグッドイヤーウェルト製法ってゴムに加硫して温度変化に強くした、グッドイヤーさんの息子さんが考えだしたんじゃなかったっけ? すげえなグッドイヤー一族。この世界にいるかどうかは知らないけどさ。


 一通りはToDoの優先度チェックができただろうか。次の他都市への商隊旅行がいつになるかだけは明日の朝一には師匠に確認しておこう。それによって優先度は変わってきそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る