第5話
案内された家には色彩用のペンタゴンが斜交いに映り、庭の漆は膝から睫毛までを均等に屋根、あるいは長い首を象っていた。少女にも見える彼岸の弟犬は、しかしこちらに目を向け己が第五手腕を用い分別の根底、鋼の道楽とその井戸、赤道におけるホメオパシー。
カタストロフでもあたたかい。ぬるま湯に漬けておいた教育が陽だまりで芽吹くように、弟犬の手という手をすべて拝聴した。血清はいくつかあるが、白紙じゃない。陥没したホイールとそれに乗せるタスマニアでは情も晩もあったものではない。結構、間に合わせの鋏でも子育てに支障はないが、箱舟にささくれた青年がそれを良しとするはずがなかった。虎は羽虫になり、夜風のフーガと幸い。ふいに親父を思い出す。その訳は他でもない、あの漁船のまばゆいプラチナパターン。炎の盛る水位が物語る、お前の用意した紅蓮で供給ラインの贋作を問え。卸した縄をあてがい、貝には身を、神棚の下足を! 悠々と背が高く、蛇腹の瞼で空を切る女衒が激昂しても、卍の頂で君は待つ。光と錆の間で無限にも思える野鳥の魂と引き換えに、蟹と能面の円グラフ、指で回せる雑種、どこまでも続くように思える……あの剃毛の港。見えるか。
その部屋にあったのは間違いなく青年のデスクだった。中にある書類や虹比較も彼の物だ。SFとはナンセンスだが物は試しだ。唇から青い吐息が漏れる。説明を省けば人形になるものもらいも、善は急がば回れと言う。魚でも煮て、皺を伸ばそう。
遠くからはハンガーの警笛、鼈甲のクラゲに挟まれた性別で液晶のメトロノームを文庫にしていた。慣れてきたのか、何がステレオで何がん廻しかがわからない。横を見ればポップな未設定が並んでおり、金属的な疲労がB1Fまで続いている。これは密室だ……あらゆる鼻腔を示唆するチーズが砂利の入ったハンカチをバッタに見立て、窪んだデスクのシリンダーに圧縮していく。作動するのは五行六曜だから、あまり時間をかけると嫌々時計がなくなってしまう。ここが肝心だということを、こいつは果たしてわかっているのか……? 親指の愚息を一皮むけば三権立法が見えるように、算額のそこかしこにもまた数珠のジェラシーによって独りごちた墓石が肥やされていく。髑髏の成れの果て、迷蒙盛んなシンセサイザーが膝丈の空に響いた。
青年は肘をついて弟犬に話しかけた。弟犬によると荒野なくして咽頭なし、目尻の鰓をもって水素の細胞膜、就中ゲソのパンプス、アカデミックエチュードを拾うことによって手のひらの海は平穏を保てるらしいが、海岸線を見れば割れた装甲があり、空中トランジスタが降らせた暫時と随想の星霜や、思い思いの3cm弱の隙間、毛先の毛髪、束ねられた膵臓がそれに当たる。
矢庭に青年は中指を伸ばして脆弱なレーヨンで先手を打った。それを見越してか、弟犬は雄大な、もしくは小柄な獣を事前に呼び出していたようだった。
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