第2話
そして、やっとその時が来る。
日曜のその待ち合わせ場所には30分も早く着き、ドトールに入って時間調整をしてからその場所に向かった。
15分が過ぎた、30分が経った。
「何かの理由で遅れてるんだ」
「まさか事故ではないよな」
「怪我をして無いよな」
あと10分だけ、あと5分だけ・・・
時間だけがのろのろと過ぎて行った。
結局2時間と5分、雪の降りしきる所で立ち続けた。
「里奈さん、きっと何か有ったんだ・・・大丈夫かな」
手は痺れ、足の先は感覚が無くなっていた。
家に帰り着き、すぐにパソコンを開く
「ご免なさい。急に母の具合が悪くなって・・・」
以前からのメールで、母親が入院していると聞いていた。
「お母さん、どう?大丈夫?」
とすぐにメールを出した。
2時間ほど経った深夜にメールが来た。
「落ち着いたので、いま父と一緒に帰って来ました・・・」
次の日からまたメールのやり取りが始まり、一日に20通は出し続けて楽しかった。
そして、半月が過ぎたある日・・・
「里奈です。母の具合が悪くなり、当分病院に寝泊りします。帰って来たらメールします」
毎日、何通も出し受け取っていたメールが来なくなり、俺は寂しくて堪らなかった。
何日に一度は家に帰るだろうと考え、毎日一度はメールを送った。
里奈からのメールが来なくなってからも、いや、している最中も他の女からのメールはかなり来ていた。
その中の一人に「歩美」と名乗る人が居た。
来たメールを何度か開けて見たプロフには、38歳で主婦と載っている。
「俺より11歳も上か。ふーん」
別に熟女の趣味が有った訳じゃない。
趣味・好みなんて言える立場じゃ無いのは、この俺が一番よーく分かっていた。
里奈との毎日何回となくやり取りしていた寂しさから、遂にメールを出してしまう。
「私は27歳の会社員です。年上の貴女に・・・」
何処となく里奈と似ている言葉遣いに俺は嬉しくなり、その歩美と言う女とまた始まるメールの数々。
その量は里奈を上回った。
何しろ歩美という女は、里奈の事まで色々と相談に乗ってくれる。
何も里奈が彼女だった訳じゃ無いのに。
特にセックスの事はこと細かに教えてくれた。
自慢じゃないですが、風俗の経験は他の人よりはある。
「彼方に合いそうな会員の女性を紹介してあげる・・・」
「僕は貴女と会いたい」
「ダメよ。年が違い過ぎる・・・」
嬉しくて感謝した。
紹介された女は20歳の大学に通う学生だった。
何十回かのメールのやり取りで、俺とは全く合わないと感じた。
それがメールの文面から察したのか、また他の女を紹介すると言う。
出会いサイトでは、そうしたものなのだろうとその時には思っていた。
大体、出会いのサイトでどうしたら他の女性会員を紹介出来る?
入会して3ヶ月の俺には、その辺りの知識は全く無かった。
結衣と言うその紹介された女は25歳のOLで、またまた始まるメール。
そして一ヶ月をちょっと過ぎた時だった・・・
「京介さん、会いたいなー」
メールのやり取りがたったの3回で、すぐに日時も場所も決った。
週末の土曜日、お昼に待ち合わせた。
前回、里奈との待ち合わせの事が頭を過ぎる。
「里奈さん、まだ帰れないのかなー?」
約束の5分が過ぎた時・・・
「京介さん?」
そう後ろから声がした。
振り向いた俺の目の前に、厚手のコートを着た綺麗な人がニッコリと微笑み立っている。
「き、来てくれたんだ」
「だって約束したでしょ?」
「あぁ」
「待った?」
「ううん」
「何、食べようか?」
俺の台詞をみんな先に言ってくれる
ひょっとしてとは考えたが、まさか本当に来てくれるとは思えなかった。
それ程までに女には自信が無かった。
どうせ来ないと思い、ジーンズにパーカー。
上にマウンテンのコートと普段の格好だった。
前に立つ女は、決っていた。
出逢い @shino_kyosuke
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