第122話
「アリア! 一旦体勢を整えろ!」
「っ、うん!」
ヴァルゴの剣を避けて高速で離れる。するとスカイが空から来て
「どう見る」
「大型モンスターと思った? 残念、可愛い美少女ちゃんでした! 的ドッキリ」
「一部ご褒美属性じゃねぇか……」
スカイはため息を吐きながら眺める。
「お前に固執しているように見えたが……恨みでも買ったか?」
「ううん」
「だろうな……中の人がいるからって狙われる理由も……ありまくるな」
「え⁉︎」
心外だ、そう言おうとしたら
「レグルスの3項目を一人で占領したんだ、率先して倒さないとまずいってのは分かるんだろう」
「スカイの言う通りだろう」
「魔王、無事だったんだ」
「ああ。アリア、高速で駆け回り撹乱に専念して欲しい」
「それって僕にMVPを取って欲しくないって事?」
魔王は苦笑して
「まるでとろうとすれば取れるみたいな言い方だな」
「だって僕が最強だもん」
言って駆け出す。一瞬で僕に気づくヴァルゴ。その背後からエミリアの刀による斬撃が放たれる。一瞬の怯みが。その隙を逃さずにシンが高速の連撃。姉弟のコンビネーションは抜群だ。
「っ! ちゃっ! とりゃっ!」
背後から斬りつけ、右前から斬りつけ、左後ろから斬りつける。そのまま離れて
「《エクスプロージョン》!」
「《ライトニングボルテックス》!」
手札1枚をコストに雷鳴が降り注ぎ、爆発が起きた。そして上がる土煙。
「「「やったか!?」」」
フラグ建築士たちの言葉と同時に土煙を破り、剣閃が。それは盾に逸らされて
「《デプスインパクト》!」
重い一撃がヴァルゴを討つ。そのまま後ろに下がって
「前から有給を取っていて良かったな」
「あんた何してんだよ!」
二本の大剣がヴァルゴと打ち合う。その背後から双槍と魔法剣が斬りつける。左右から槍と剣が切りかかる。いつの間にか生き残っているプレイヤーは少なくなっていた。
「スカイ、邪魔はしないでね」
「こっちの台詞だ」
飛ぶスカイ、駆ける僕。僕に気づいて剣を振り下ろすヴァルゴ。
「《ソードリバーサル》!」
『《フルバスター》!』
超重量の振り下ろしを逸らして高速で斬りつける。剣戟の間には何も無い。剣と剣が交差し、剣が剣を逸らし、剣が剣を受け止める。懐に飛び込む隙も無く、剣の先だけで斬りつける。微量なダメージだけど。
「アリア! 引け!」
「え? なんで?」
「上だ!」
言われて見上げると剣が振り下ろされようとしていた。嘘、もう一本の剣を弾いたのに? 二刀流……ううん、シエルと同じ戦闘スタイル!?
驚きも束の間、あえて前に出ることで剣を避けて
「ごめん、ベル!」
「おう!」
ベルの肩を蹴って飛び上がる。その際に空に黒い何かと日本風のドラゴンが見えた。マモンのテイムモンスターカゲオとレヴィのテイムモンスターカープだ。
「真上から!」
『んっ』
受け止められた。だけど一本で受け止めているならもう片方だけしか自由に使えない。その隙にみんなが斬りかかる。
「《エンドアルカナム》!」
「《ポイズンスナイプ》!」
ピンポイントで脳天を直撃した弾丸によってステータスに毒のアイコンがついた。だけど
「危ないよ……もう」
「ごめんね」
レヴィの言葉に苦笑しつつ飛び降りて両手の剣を納める。そのまま接近して
「《正拳》!」
ぶん殴った。揺らして
「《円蹴》!」
勢いに乗って一回転し、踵落とし。そのまま着地と同時に
「《肘打》!」
脇に打ち込む。蹴りを避けると見せかけて
「《
カウンターで、腰からちょっとだけ抜いた剣身から光が。あはは、ざまみろ。
*****
「達也、少々お時間良いですか?」
「構いませんよ」
何故か優に誘われて社内のカフェへ。ここで仕事をしている同僚に軽く挨拶して
「どうしたんですか、優」
「はい。今回は坂崎達也では無くセプトさんに用があります」
「……はぁ」
話が読めない。何かのテスターをしろと?
「まずは今回の星獣、この情報の拡散を一切禁じます」
「心得ています」
「それとアバターの操作はあなたが慣れているので、操作をお願いしたいのですが」
「生憎ですがその日は有給を取っておりまして……」
「知っていますよ。あなたがセプトとして参加するのでしょう?」
「はい」
火水木金土が出勤日で、日月が休みだ。だから土曜に有給を取り、日月はのんびりとするつもりだった。
「ですので次回はあなたにお願いしたいのですが……」
「その前に一つ、聞いても良いですか?」
「はい、どうぞ」
「人型アバターですか?」
「それはまだ未定です」
「あのですね、人が人型以外のアバターを操作するのは難度が高いんですよ?」
優はそれを知らないのか目を見開いた。
「そうなのですか?」
「はい。そもそも人体に慣れているのにいきなりレグルスのように四足歩行なんてするようにしたら色々とレグルスの挙動がおかしくなるでしょうね」
「ふむ……」
優はぶつぶつと呟きだす。その間にアイスコーヒーを二つ頼み
「とりあえず四足歩行用のプログラムをいくつか組み、AIの最善選択を繰り返してアルゴリズムを作れば良いのではないですか?」
「参考にさせていただきましょう……では達也、あなたに二足歩行版のプロトタイプになってもらえますか?」
「……そうですね、分かりました」
優は微笑んで
「それではまた、家で会いましょう」
「ああ」
妻の言葉に頷いて席を立つ。
舞宮優は俺の妻だ。苗字は結婚する前のままだが。
*****
「二刀流で大剣二本だなんて……」
「何て無茶苦茶な奴だ……」
「「「シエルが言うな」」」
小さな的は高速で動くため、狙い辛い。魔法などの広範囲だとアリアたちを巻き込むから……
「くっそ、完全に遠距離殺しじゃないの」
「降りて、カゲオ」
『……』
マモンとカゲオが降りる。その途中で装備が変わっている。拳士として前に出るつもりなのね。
「カープ、私たちも降りるわよ」
『くるる♪』
カープが降り、指輪に帰る。そのまま殴る用の銃を抜いて
「ん、危ない」
双刃剣を二本振り回してヴァルゴは攻撃する。それの隙間を塗って小柄な赤く黄緑の閃光が反撃する。
「双刃剣なんてロマン武器よ!」
隙間を縫っての毒弾。
双刃剣とは剣の柄から反対側に剣がもう一本付いてる武器。槍のように防御にも向いているけど仲間殺しとしても使えちゃうから人気無し。
「とりあえず麻痺弾連射!」
背中に飛び込んで零距離射撃。そのまま後ろに飛びつつ射撃。すると
「レヴィ! 危ないよ!」
「え」
アリアの声に反応しようとした瞬間、剣が私のお腹を貫いた。
「げっ!?」
「っつ、邪魔だ!」
剣を避けて私の体を蹴るアリア。抜けたけど……《体術》取っているからそんな蹴りでもダメージ大きいのよ? 幸いポーションの小瓶が割れたから良かったけど……まさかそれを見越して蹴ったの?
「いや、無いわ」
呟いて……遠距離から狙撃するために、地面に伏せる。そのまま銃を抜き替えて……
「当たったらごめんね」
狙撃を開始した。しかし
「銃弾を防いだ!?」
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