第28話

「前と同じように?」

「ううん、今回は私とシェリちゃんが後衛するから」

「分かったよ」


僕たちは一旦作戦会議をして


「避けて!」

「分かっている!」

「遅い!」

「拙者でも太刀打ち出来そうで御座るな」


散開して


「ダブルラッシュ!」

「デュアルバスター!」

「アックスラッシュ!」

「血刀・散華!」


4人で切り掛かる。もっとも全員バラバラの足に。今回のヴォルケイノドラゴンは四足歩行をしている。二足歩行だったお前はどこに行ったんだ。


「シェリちゃん、ヴォルケイノドラゴンの弱点は頭全体、だからヘブンズスプレッドアロー!」

「えっと……ファイアースラッシュ!」

「あ、水が効くよ」

「え⁉︎ でもスキル育ててないよ」

「ここで育てればいいよ」


2人の会話を聞きながら切り続ける。足踏みしか出来ない位置からのハメ殺し。だけどそろそろ


「飛ぶよ!」

「む、面妖な」

「翼があるから面妖では無いな」

「攻撃が届かねぇ」

「シエルとセプトはシェリ姉たちを守って! リョーマはあそこまで行ける?」

「おそらくは」

「あたしがふっ飛ばそうか?」


シエルの提案にリョーマは目を閉じて


「頼もう」

「オッケー、乗れよ」


シエルが地面スレスレに炎龍の巨剣を構える。それに音も無くリョーマが飛び乗る。そして


「フルバスタァァァァァ!」

「ミーティアリープ!」

「……俺だけ何も無いのか」


セプトの寂しげな呟きを無視して僕は地面を蹴る。そしてその翼を断とうと剣が伸びる。しかし


「遅かった⁉︎」


すでに対応しようと炎を口に溜めているヴォルケイノドラゴン。このままだと火球に激突する。そう思った瞬間


「居合・焔纏斬(えんてんぎ)り!」

「ふぁっ⁉︎」

「行くで御座るよ! アリア殿!」


吐かれた火球が刀に纏わりつく。そしてその状態でヴォルケイノドラゴンの翼を切りつけた。一撃では切れなかったようだ。だから


「せゃぁぁぁあ!」


すれ違い様の一閃。切れない。ここまでは前と同じ、ソロの時と同じだ。だから


「ダブルサークル!」


二刀流の連続スキルを放つ。翼に細かな傷が付く。切れない⁉︎


「前より硬くなってる!」

「心配めさるな」


リョーマは翼の上にいつの間にか絶っていた。そして


「納刀・巻込」

「リョーマ⁉︎」


僕は落下しながら彼を見る。彼は目を細めて


「居合・三日月!」


放った。


*****


「お疲れー」

「うん、中々スキル熟練度も上がったよ」

「そう言えばスキルレベルって表示が変わったんだったね」

「熟練度100ごとに新たなスキル開放って覚えておけば良いよ」


マモンがシェリ姉に解説する。すると


『次回襲撃イベントは来週土曜日、時刻は本日と同じとなります!』

『報酬・300k、ミスリル鉱石×20、ハイポーション×99』

『トップパーティ報酬・ミスリル鉱石×50、旋風の指輪、清水の首飾り』

「旋風装備ってもしかして」

「うん、agiが上がるね」

「っしゃーっ!」


僕は思わずガッツポーズ。すると温かい視線を感じた。見回すと微笑ましい物を見る目のみんなが。


「アリアちゃんってやっぱり強いのね」

「シェリ姉もすぐに強くなるよ」


シェリ姉はニコニコ笑って


「これからどうしよっか?」

「拙者は予定は無いで御座るな」

「俺も無いな」

「あたしも」

「私も無いねー」


5人はそう言って話し合う。それに苦笑して


「それなら僕の料理スキルの熟練度を上げるのを手伝ってよ」


*****


「素材は薬草と炎龍の肉……ゲテモノの予感!」

「マモン、思っても口にしてはいけない」

「あたしも料理出来るようになんねーとなぁ」

「料理って案外簡単なんだけどね」

「拙者、料理は拙者しか食べぬで御座るからな……見た目は酷いもので御座るよ」


5人の雑談を聞きながらお肉を焼く。火が通ったら一口大に切った薬草と共に炒める。炎龍の肉には脂が多かったので市販の油を使う必要は無かった。


「塩胡椒の単純味付けだから多分大丈夫のはず」

「うん、それなら大丈夫だと思うよ」

「飲み物は無いから」


料理スキルの熟練度は作る途中にも上がって今は150。炒めるのはスキルレベル1で出来るけど煮たり焼いたりは2以降だ。


「……うん、普通だね」

「普通だな」

「普通だ」

「普通だねー」

「普通で御座るな」

「……くすん」

「シェリ姉?」


僕は少し嬉しそうな表情のシェリ姉に違和感を感じた。すると


「アリアちゃんが料理を出来るようになったなんて……成長が嬉しいよ」

「野菜炒めくらいなら前から出来たけど⁉︎」

「あ、そっか」


シェリ姉はケロリとして野菜炒めを食べる。ちなみにお箸は作った。作り方は簡単、片手長剣のスキラゲついで。


「さてと」


食べ終わって一息吐いて


「マモン、旋風装備の付与素材は何?」

「ウィンド系モンスターだね。ボスクラスはまだ出ていないから」

「多分ドラゴンだよね?」

「うん。ひょっとしたらアップデートで出現しているかもね」


マモンは笑って


「そしたらアリアちゃんは狩るんでしょ?」

「もちろん。agi上げにいるからね」

「そっか……ねぇ、アリアちゃん」

「何かな?」

「これからもここで料理を振る舞ったら?」

「……料理スキル熟練度を上げるのに良いかもね」

「もちろん有料でも良いよ」


その言葉に苦笑して


「マモンが食べたいだけでしょ?」

「だって直接ステータスが強化されるんだもん」


料理スキルで作った料理を食べるとステータスが直接強化される。今回の野菜炒め、炒め料理はstrを強化する。


「agiを上げるには3まで上げないとダメなんだよね?」

「str、vitの次だね」

「攻撃防御から体力に移って素早さかぁ。その次は?」

「int、dex」

「dexってそんなに必要かな?」

「料理スキルの製品は料理スキルの熟練度とdexにステータス強化が影響されるっぽい」


ほぅ、と店内に感嘆の声が。すると


「それでもアリアちゃんのステ振りは?」

「ストラギ(stragi)だよ」

「相変わらずの二極化かぁ」


マモンは苦笑した。


*****


「それじゃあみんなソロプレイヤーに戻るの?」

「うん、僕の場合足を引っ張られる事が多いからね」

「あたしは巻き込んじゃうしな」

「俺は耐久のタンクだがプレイスタイルが合う相手がいない」

「拙者も気付いたら周囲に人がいない程度には速くなり過ぎて」

「私も弓矢使いってだけで地雷扱いされたくないからね」

「……」

「シェリ姉、僕はこの店にいるからまたおいでよ」


僕の言葉に頷いて


「……あれ? でもそれってリアルで会うのと大差無いよね?」

「そう言えばそうかも」

「シェリちゃんもバイトがあるから私とも会えるよ?」

「そう言えばそうだったね」

「拙者も縁があれば手伝おう」

「あたしも」

「俺も」


基本的にみんな良い奴だ。だからシェリ姉も嬉しそうだ。


「それじゃ俺はここで」

「うん、またね。セプト」

「ならあたしも」

「それじゃ、シエル」

「ご馳走になった」

「お粗末様、リョーマ」

「それじゃあ2人でごゆっくり」

「また今度、マモン」


全員を見送って


「それじゃあアリアちゃん。また明日」

「うん、お休み、シェリ姉」

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