第27話

「メンテナンスが終わったら一緒にパーティ組んでレイドボスかぁ……」

「アリアちゃんは終わったらすぐに入るの?」

「うん、イベントや更新情報を確認しておきたいからね」

「そうだね……私もそうしよっかな?」


シェリ姉はそう呟いて


「そろそろご飯だからおいで」

「はーい」


私は少し早めのお昼ご飯を食べて


「あれ?」

「どうしたの?」

「シェリ姉ってば急ぎの用事でもあるの?」

「無いよ?」

「シェリ姉、もともとメンテナンス明けにログインする予定だった?」

「ばれちゃった」


*****


「……さてと、更新情報を確認するかな」


ログインしてカーマインブラックスミスの中に。そして客がいない間に確認する。

追加されたスキルに二刀流と双剣、双斧、双槍、刀、料理。

そして


「レイドボスイベントはやっぱり来るか」


僕はシェリ姉たちとの約束を思い出す。僕とシェリ姉とシエルとセプト、マモンの5人で戦うと。ソロプレイヤーとして少し悩んだけど


「初のイベントくらいみんなで一緒にしようって言われたらなぁ……」


断れなかった。だけど


「少し……楽しみだなぁ」

「失礼つかまつる!」

「あ、来たね」

「む、アリア殿! 先日は誠に助かり申した!」


リョーマは頭を下げて言う。それに苦笑しながら椅子を勧めて


「レイドボスの討伐を本日行われると聞きましたがアリア殿は如何様に?」

「うーん、それは僕がリョーマに聞きたかったんだ」

「拙者に?」

「うん、フルパの方が討伐系のイベントなら良いからね。加わらない?」

「拙者でよろしいか⁉︎」

「もちろんだよ。僕の作った刀を存分に振るってくれ」


そう言えば


「刀スキル開放されたね」

「拙者、一時この場を離脱し、買いに行かせてもらってもよろしいか」

「うん。僕も交代で買いたいスキルがあるから」

「了承した」


リョーマは一礼してカーマインブラックスミスから退出した。この街のギルド(スキル売り場)に行ったんだろう。


「なんだか物凄い勢いのお侍さんがここを出て行ったけど?」

「僕のお得意様。あの防具も武器も僕が作ったんだよ」

「へぇ。私もいつか頼もうかな?」


シェリ姉は勧められた椅子にちょこんと座って


「それにしてもここのお店、良いよね」

「うん」

「川も近くだし畑もあるし山も森も近い……海外にはこんな感じの場所もあるのかな?」

「ただいま戻っ……アリア殿、こちらの方は?」

「……シェリ姉、自己紹介」

「あ、うん。リアルではアリアちゃんの姉のシェリルです。えっと……」

「む、拙者リョーマと申す。よろしくお願い申す」


キャラ濃ゆいなーと思っているとさらに両手剣背負った女と片手斧に盾の男、そして弓矢を持った女が。


「全員揃ったね」

「マモンが最後じゃん」

「ヒーローは遅れて来るものだよ」


マモンはそう嘯いて


「イベントは1から4の街、そのどこかにモンスターが多数襲撃、それを迎え撃ちます。そして最後にはボスが出るそうよ」

「いつも思うけどよく調べたね」

「えへへ」


マモンが少し照れるのを眺めて


「それじゃスキル売り場行って来るよ」

「はーい。みんなも準備を整えてね」

「え」

「いきなりか?」

「今からじゃないの?」

「アリア殿、気をつけて」

「はいはい」


*****


前衛4人、後衛2人のパーティ。バランスは取れているのかな?


「アリアちゃんは何のスキルを買ったの?」

「二刀流と料理」

「え……イベントでいきなり新スキルを試すのは関心しないなぁ」

「マモン、僕がその程度の言葉で辞めると思う?」

「思わないけどさ」


マモンは不満そうに唇を突き出す。すると


『イベント開始まで残り30分。最初は最初の街です』

「だってさ」

「みんなは転移アイテム持ってる?」


マモンがみんなを見回す。基本10個常備だ。しかし


「シェリ姉は持ってないの?」

「あちゃー……NPCのお店に行った事無いからそんな物を知らなかったよ」

「そっか。それなら」


シェリ姉とのトレードを申し込み、転移アイテムを1スタック送りつける。あ、拒否された。


「こんなにもらえないよ」

「いくつトレードしようとしたの?」

「1スタック」

「「「多過ぎ⁉︎」」」


マモンセプトシエルの突っ込みがハモる。ハモるってどんな語源があるんだろう。


「シェリル殿、アリア殿のご厚意を無下にするのは如何なものかと」

「う……」

「アリアが良いなら受け取った方がいいだろ」

「むしろ姉妹なのだから受け取らなければギスギスするだろうな」

「……あーもう! 分かった! ありがとうアリアちゃん!」


シェリ姉は僕に飛び抱きついて


「姉思いな子に育って嬉しいよ」

「眼福」

「マモン⁉︎」


いつも通りなマモンにみんなで笑って


「行こっか、私たちの戦場に」


マモンはそうカッコつけたけど


「似合わないよ」

「あぅ」


*****


表示されるカウンターには1000とある。そして


「左舷弾幕薄いよ! 何やってんの!」

「ふ、まるで微風だな」

「ナンセンス」


阿鼻叫喚よりは100倍くらいマシの地獄があった。あ、あの人また死んだ。そして初めの街から再び登場。デスポーンだ。


「ダブルインパクト!」


迫り来るモンスター、その中のゴブリンを吹き飛ばす。周囲のゴブリンを巻き込んで体力全損。うん、


「二刀流ぱねぇ」

「拙者の刀もですぞ」

「そうだね。さっきから見えてたけど」

「む……血刀・散華!」


絶対奥義っぽい名前のスキル、それはゴブリンを切り、その余波でさらにゴブリンの体力を全損させた。僕も負けていられない。


「ダブルサークル!」


その場で2回転の合計4連撃。広範囲を斬りつける。もちろんリョーマは一瞬で攻撃範囲から脱出していた。かなり速い。


「さすがですな」

「そっちこそ」


背中合わせでゴブリンを切っていると


「ホゥムルァァァン!」

「危な⁉︎」


ゴブリンが僕たちの方向に吹き飛んで来た。慌てて切り落として


「シエル!」

「あ、悪い⁉︎」

「まったく……拙者らはソロプレイヤーの方が安定するのやもしれぬな」

「同感だけど初回くらい手を組んでも良いさ」

「それもそうであるな」


リョーマは刀を納め、直後


「居合・三日月」


ズバッ、と刀の軌道上にいたゴブリンがやられた。一撃であの範囲を……二刀流が負けた気がした。だから


「ここからは単独行動するよ」

「了承した! 納刀・巻込(まきこみ)!」


地面を蹴る。そして二本の風鉄の剣で切り刻む。ここからは僕だけだ。だからこそ


「止まらないよ! ダブルラッシュ!」


突進しながらの背骨を軸にした回転斬り。軌道上のゴブリンを切り


「アークスラッシュ!」


二刀流のスキルと片手長剣のスキルは共存出来る。きっとセプトもそれは出来るだろう。だけど盾の安定性が彼の武器でもある。あれには苦戦……うん、苦戦した。


「アークミーティア!」

『ぎりゅゅゅゅ!』


蟷螂の振り下ろした鎌、その下にいたプレイヤーを守るために飛び込んでその腕を切り飛ばす。そして腰を捻って


「アークスラッシュ!」

「えっ⁉︎」

「無理はしないで」


僕はシェリ姉にいつか言い聞かせようと思いながら駆け抜ける。そして


「またこいつか」

「前よりも早くやれそうだな」

「人数も多いしね」

「ドラゴンかぁ……」

「拙者、龍と相対するのは初めてで御座るな」


ヴォルケイノドラゴンが、出現した。

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