第26話
「メテオスラスト!」
バコーン、と音を立ててアイアンリザードマンが壁に激突した。
隕石とはその名の通りでメテオだった。
「スターダストリープ!」
飛び込んで6連撃を叩き込んで体力を削り切った。
「ふぅ……そろそろ90レベルかな」
経験値を消費すれば多分それくらいは行くだろう。しかし
『Aria:みんな今レベルどれくらい?』
『diabolos:213』
『Satan:198』
『lavyatan:158ってか他高杉w』
『Satan:176。結構低いな』
『mammon:98。みんなは高いねー』
『Lucifer:真面目にレベリングすれば179行けたぞ』
『asmodeus:165。結構バラバラだね』
『beelzebub:164。アスモに負けた!』
『belphegor:競う事じゃないが……223だ』
『diabolos:一番高いじゃないか……それでアリアは?』
『mammon:んー? 返事無し?』
『Aria:余りのレベルの差に驚いていた』
経験値を割り振って……ようやく91、一番低い。
*****
「って事で狩場教えて」
「ならポーションをお安く?」
「するよ」
魔王との取引を終えて
「今ここは三つ目の街だ。現在では7つ目の街まで行けるが六つ目の街にある地下道を通った先のミスリル鉱山が稼げるな」
「ミスリル鉱山⁉︎」
「そう言えば鍛冶屋を取っていたんだったな。炎龍の巨剣、素晴らしい出来だ」
「褒めたって何も出ないよー」
僕はアスタリスクハンマーの強化値を眺めて頷く。耐久とstr強化を付けた。それでも十分鍛冶屋には使える。
「それよりも魔王がポーションを買いに来るのは初めてだね。迷わなかった?」
「マモンに場所を教えられたからな……そう言えば」
「なに?」
「アップデートでお前の望んでいた料理スキルとやらが出るらしいが?」
望んだつもりは無いんだけど?
「それに二刀流と双剣も情報解禁されてきたな」
「どんな?」
「二刀流は一撃の威力が低いけど多連撃。習得条件に連続スキルを中級まで上げれば良いらしい」
「なら僕は二刀流取れるね」
「取るのか?」
「連続スキルは僕の好みだよ?」
「そうだったな」
とりあえず
「ハイポーションとMPハイポーションを2スタックずつ?」
「ああ」
ハイポーションは一つ二百、MPハイポーションは一つ三百円だ。つまり200×198+300×198だ。電卓機能ありがたい。
「大体4Mだね。そんなに買ってどうするの?」
「アップデート明けにレイドボスか乱獲イベントが来るっぽいんでな。備えあれば嬉しいなと言うだろう?」
「言うね」
「いや、正確には備えあれば憂いなしだぞ⁉︎」
魔王は少し焦ったように訂正した。社会人しっかりしてよ。
「それじゃ俺は行くよ」
「はいはい。マタノゴライテンヲオマチシテオリマス」
「棒読みだな」
魔王が出て行ったのを確認して奥の部屋に引っ込む。今日は片手長剣と片手短剣を一本ずつ造る予定だ。性能が良ければオークションに出すけど
「付与素材を使用しないからバニラ剣だよね」
そう呟いた。
「頼もう!」
「何奴じゃ⁉︎」
「拙者、侍のリョーマと申す! 貴殿に刀を打ってもらいたく馳せ参じた!」
こんな客がログイン直後に来たからだ。話を聞くとシエルは広告塔として、口噂としても広めてくれているそうだ。
「……システム的に刀がまだ無いから片手長剣の見た目を刀にする。それで良いらしいけど複雑だよね」
彼の依頼はアップデート明けまでに刀(片手長剣)、付与はdex→strだそうだ。素材の持ち込みは無いから手持ちの炎龍の素材と鉢の素材を使う。
「さてと、カーマインブラックスミスの紋様のアイデアをシエルが送って来たけどどんなのかな?」
いくつかのjpgファイルと短いメッセージ。メッセージには『知り合いのオブラートに包んで創作意欲の高い学生、包まなければ厨二病に描いてもらったぜ』との事。ごめんね、創作意欲の高い学生たち。
「最初はどんなのかな?」
4つあるうちの一つ目はポーションの小瓶とハンマーがある。悪くない。
二つ目は……ザリガニ? ザリガニがハンマーと剣を交差させている。北の髪の色がザリガニ色と言いたいの?
三つ目はハンマーと剣がツインテールに掴まれている。意味が分からない。僕はそんなに器用じゃない。
そして最後の4つ目は剣とハンマーが交差してその下の隙間にちょこんとポーションの小瓶が。そしてそれらを囲むような真紅の炎。凄いカッコ良い。
『Aria:最後のにするよ』
シエルは現在ログインしていないので一方的に告げて看板とそれ専用の器具を錬金術と鍛冶屋スキルを使って造る。判子のようだけど熱い金属に押し付けて型を付ける。判子より強い。
「……うーん。あっさりしているね」
錬金術と鍛冶屋スキルを組み合わせてjpgファイルを転写出来る。あっさり過ぎる。良いけど。
「後はリョーマの刀かぁ……とりあえず何本か試してみるかな」
*****
「メンテナンスは今日の24時からだね」
「そうなんだ」
「アリアはなんで知らないのさ」
鳥が苦笑しながら蕎麦を啜る。僕も負けじとうどんを啜る。すると
「私も防具を作ってもらおっかな?」
「高いよ?」
「素材持ち込みは安くなるんでしょ?」
「まぁね」
「ちなみに素材全部持ち込んだら?」
「九割引き」
もっともそれでも儲けは出るし。アスタリスクハンマーの耐久が減るだけだもん。ま、広告塔を兼ねてもらうけど。
「メンテナンスの後にイベントが来るっぽいんでしょ? どうするの?」
「当然参加する。面白そうだもん」
「それだけ?」
「顧客を獲得するってのもあるかな」
土曜日の昼にメンテナンスは終了する。それで二刀流も開放されるしイベントもある。楽しみだ。とりあえずリョーマの刀を早めに作っておこう。
*****
「むむむ、この刀の銘を拙者が名付けても良いと申されるか⁉︎」
「うん。自分で使うなら愛着のある名前が良いでしょ?」
「御心遣い、かたじけない」
僕は手をひらひら振って
「それじゃ広告塔として頑張ってね」
「む……具体的にはどのような」
「例えば今度あるってイベントで活躍したりして刀の出所を教えるとか」
「なるほど。それでは拙者はこれにてごめん」
リョーマはそう言って出て行った。片手短剣と片手長剣はそれぞれ悪くない性能だけどオークションに出す理由も無いので店売り。
『メンテナンスまで残り1時間』
「そうなんだ」
無骨な表示に頷きながらポーションをどんどん造る。もはやポーションよりもハイポーションを量産するようになって来た。裏の畑も大きくなったし。
「しばらく金欠だったけど魔王やリョーマのおかげで立て直したかな?」
僕の事だからまたすぐに畑を拡張して金欠になるんだろうなーと思いながらインベントリの中にある付与素材やドロップ武具、その他を箪笥に入れていく。箪笥もこれで二つ目。用途で分けたらこうなる。
「さてと、そろそろ僕も落ちるかな」
そう思った瞬間、扉が開く音。奥の部屋から顔を出すと
「シェリ姉とセプトとマモン?」
「ヤッホー」
「やっほー」
「よ」
どんな関係か知らないけど仲良さそうだ。すると
「置いてくなよ……ぜぇ」
シエルが店内に入って来た。そして
「アリアちゃん、イベントでパーティ組まない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます