第25話

「っしゃー! 出来たぜわっふーい!」

「アリアちゃんが壊れた⁉︎」

「失礼な!」


僕は完成した『炎龍の巨剣 攻撃力+129 str+52』を両手で持ち上げてクルクル回転して


「目が回るぅ……」

「もう……ほら、深呼吸」

「うぅ……すーはーすーはーおろろろろ」


僕は落ち着いて


「完成したよ、シエル」

「いや……大丈夫なのか?」

「うん、冗談だよ」

「目が回ったのは?」

「本当」


マモンの言葉に頷いてステー タスを口にすると


「最前線武器クラスじゃん⁉︎」

「え、そんなに強いの?」

「まじか……攻撃力3倍以上上がるじゃねぇか」

「……凄まじいな」


三人の感想を聞いて


「さて、気になるお値段は?」

「うーん」


少し考える。最前線武器クラスらしい。つまりは今現在の最高峰。だったら


「どれくらいが相場か調べてみるね」

「……分かった」


シエルはそう言ってメニューを開き、スレッドや掲示板を検索する。僕もマモンもセプトも。そして


「……20M?」

「こっちは40越えてやがる……やべ、買えねぇや」

「うーん、いくらくらいにしようかな……」


掲示板を見た感じだと高い。オークションにかければもっと高いかもしれない。でも


「シエル」

「なに?」

「金は後からで良いや」


手渡す。150センチくらいの紅く反りがある剣身。鍔はまるでヴォルケイノドラゴンが剣身を吐き出しているような装飾。柄にも軽い反りをつけて振りやすいように。柄頭は少し尖らせて至近距離の相手にも攻撃出来るようにした。


「って案外重いのな……じゃなくて……え?」

「後払いで良いから。それよりも軽く広めといてね」

「な……へ?」

「だーかーら、広告塔になってって言ってるの!」

「言ってないけどね」

「言ってないな」


僕の言葉に2人が突っ込む。そして


「アリアちゃんってたまーにツンデレよねー」

「え?」

「恥ずかしくなったら声を荒らげたりするし」

「違うもん!」

「もんって……可愛い」

「シエルも何言ってるのさ⁉︎」

「いや、俺も可愛いと思ったぞ」

「セプトのバカァァ⁉︎」


僕は3人に辱められた。もうお嫁に行けない。


*****


「それよりも掲示板にこのお店の事を書いたら?」

「え?」

「私よりも掲示板の方が見る人多いだろ」

「そうだねー」


結局お値段は10Mとお安く、広告塔としてやってもらう事にした。それと剣を強化も請け負うから替えるなと約束。僕の傑作をいつの間にか売られたりしたら泣く。


「それならそっちでも良いんだけどね」


セプトは明日レポートの提出があるからと先に落ちた。ログインする余裕はあったんだ。


「だからって広告塔としての仕事もしてよね?」

「ああ、分かってるさ」

「それじゃ今日はこの辺りでお開きにしよっか。アリアちゃんも学校あるでしょ?」

「うん。シエルは?」

「……行きたくないけどな」

「僕もだよ」


*****


「え、そんな性能の武器を作ったの⁉︎」

「うん、作れた」

「うそー、そんなのあっさり作れるなんて……なんでかな?」

「僕が最強だから?」

「あ、そこに行っちゃうんだ」


きりは苦笑して


「それなら私も杖を作って欲しいなー?」

「最低10Mになるけど?」

「M?」

「メガ、100万の事」

「えーと……1000万⁉︎」

「シエルのと同じくらいの性能を求めるならそれくらいにするけど?」


私の言葉にきりは乾いた笑いを浮かべて


「さすがにそれは手が出ないなー」

「ちなみに素材の持ち込みなら大分減るけどね」

「詳しく聞かせてもらいましょう」

「全部持ち込みなら100Kかそこら」

「K?」

「キロ」

「10万?」

「うん」

「高いよ?」

「そう? 最近はMばっか使ってるからその辺りの感覚が麻痺ってるかも」

「てるよ」


きりはため息を吐いて


「アリアは自分の装備は整えてないの?」

「風のドラゴンさえいたら整えるんだけどね」

「まずはオーソドックスな炎のドラゴンからって運営は言っていたもんね」

「アップデートが待ち遠しいよ」


今日のお昼ご飯は唐揚げ定食。安定した人気を誇る定食だ。


「唐揚げ1つちょうだい」

「豚カツ一切れプリーズ」


トレードして


「後でアリアのお店……えっと……」

「カーマインブラックスミス」

「カーマインブラックスミスにポーション買いに行くね」

「3つ目の街だから無理をしないと」

「うーん……そう遠くないうちに行くよ」

「私も店を開けている時の方が多いけどね」

「意地悪」

「私だってレベリングやスキラゲがあるもん」

「それなら私たちを3つ目の街に連れて行っても良いんじゃない?」


私たちはお互いの顔を見つめて、同時に吹き出した。


「そこまで真剣に言われても困るよ」

「アリアだって置き去りにする必要は無いじゃん」


あははうふふと笑いながら


「私はしばらくあそこにいるからさ」

「うん、すぐに追いつくよ」


昼休みの終わりまでだらだらとしていた。


*****


「シェリ姉、何をしているの?」

「青森の叔父さんから林檎が届いたんだけどね?」


シェリ姉は台所をこっそり覗き込んでいた。そして台所の中ではお母さんが何かを、林檎を料理している?


「揚げたり焼いたり煮たり蒸したりレンジでチンしたり炒めたりしているんだよ……」

「創作料理にもほどがあるよ……」


「次は林檎の刺身にしよっかな〜」


「それただの林檎じゃん」

「アリアちゃん、気にしちゃダメ」

「あれ? お姉ちゃんたち、何してるの?」

「あら、エミちゃんお帰り。シェリちゃんたちもそこにいるの?」

「うん、台所を見てるよ?」

「あらまぁ、料理を見てたの?」


そうとも言えるけどそうじゃないとも言える。林檎を切っただけを料理とは言えない。あと刺身に謝って欲しい。


「今日は林檎料理ね♪」

「あー……お母さん、料理はバランス良くないと……」

「うん、だから色々な調理法をしてみたよ?」

「……そうだね」


シェリ姉が諦めた。


*****


「スターダストブレス!」


火山に出現するファイアリザードマンを切り倒す。レベルは低いし武器も強くない。スキルでゴリ押しが一番強い。


『ネイルスラッシュ!』

「ソードパリィ! スターダストスプラッシュ!」


振り下ろされる爪を背後に流して9連撃。確実に削り切って……周りにモンスターがいないのを確認する。

メニューを開いてスターダスト系のスキルに経験値を振る。スターダストブレスとスターダストスプラッシュ、基礎のスターダストスラストだけに。

スターダスト系のレベルは8。このままだとスキルの威力強化の次に新たなアクティブスキルが解放される。すでに9連撃があるのにそのうえ……2桁なのは間違いない。


「ミーティア系とブラストの上位もしないとね」


呟くなり視界に入って来たカンガルー。それは僕を確認してシャドーボクシング。挑発? そう思ったけど


「遠距離スキルか⁉︎」


僕とカンガルーの間にあった草が吹き飛んだ。慌てて移動すると立っていた位置に何か激突。割れた。


「危ないなぁ! ミーティアブラスト!」


ミーティアのスキルは5。今のところ背後に回り切るミーティアスラストと移動しながら切るミーティアスラッシュの2つ。


「ヘヴィブラスト!」

『スキル派生・片手長剣重攻撃から片手長剣隕石が派生しました!』

「……隕石?」


僕はカンガルーは消えるのを尻目にポツリと呟いた。

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