第21話
「夢のマイホームだねー」
「うん、そうだね」
「それで装備は整って……いないみたいだね」
「いかんせんスキルレベルが低いし素材も少ないからね」
僕は店内(笑)であるマイホームの中でマモンの持ってきた素材を眺めてため息を吐く。
「モンスターで金属をドロップするのっている?」
「金属系モブ、つまりアイアンゴーレムとか?」
「うーん」
僕は風鉄の剣を眺めてやはり
「……マモン」
「何かな?」
「今採れる最高の金属とモンスタードロップを手に入れるにはどこに行けば良い?」
*****
リペア火山。そこにはレアな金属や特殊な素材を集める事が出来るエリアだ。しかしここのモンスターは強い。現在の最前線だから。
「スターダストスラスト!」
『きゅぃぃぃ!』
「くっ、ソードパリィ!」
6本の腕の内、4本はすでに切り落としたがまだ厄介だ。
マモン曰くレベルマージンは120。60台の僕が挑むのが間違い、そう思うけど
「スターダストブレス!」
確実に削り切って……たくさんの経験値をスターダストとミーティアに振る。アークリープやアークブラスト、ブラストリープなどの混合は経験値を使わないとレベルが上がらない。そしてアークブラストのレベルが最大にならないとアークブラスト系の二段目は解放されない。だからしない。
「さすがに無傷ってわけにもいかないよね……」
だけど最強になるにはこれが一番の近道。楽な近道なんて無いのは分かっている。だから
「うーん、剣はドロップしないけど鋼鉄はドロップするんだね。鋼鉄製の装備が今は最高の装備なのかな?」
僕は呟きながら風鉄の剣を確かめるように振る。耐久は8割を切るかどうか、まだ回復させる必要も無い。しかし
「まさかNPCショップに転移アイテムが売ってあるとは思わなかったな」
街から街に飛ぶだけでも十分だ。ま、高いけどね。
僕の場合最前線で戦うのとポーションを売る、そして鍛冶屋としての稼ぎ口がある。
*****
「でね、直美ったら私が魔法を詠唱している間に弓矢でバンバン倒しちゃうのよ」
「……マモンらしいや」
「だからスキルが上がらないし……アリアちゃんみたいに1人でプレイしようかな?」
「やめた方が良いよ」
私は食後のコーヒーを飲んで顔を顰める。砂糖とミルクを入れるの忘れてた。だからテーブルの上のシュガーポットを取ろうとしたら
「そろそろブラックに慣れるべきだと思うよ?」
「シェリ姉の意地悪」
「べーだ」
シェリ姉は舌を出して
「それでどうしてやめた方が良いの?」
「詠唱短縮を取っていてもMPが無くなったら終わりだしMPを回復する隙を作るのも1人じゃ難しい」
「詠唱短縮かぁ……やっぱり買うんだよね?」
「うん」
シェリ姉は頷いてブラックのコーヒーを飲む。正気の沙汰とは思えない。
「一応チャットとかで簡易パを探したり出来るよ?」
「簡易パ?」
「その場即席のパーティ。何時から何時までみたいに時間設定が基本かな」
「ふーん、色々覚える事があるんだね」
シェリ姉は頷いて席を立つ。そして
「お風呂、入った?」
「ううん、今から入って宿題する予定」
「その後はログインするの?」
「ん……多分」
「レベル上げの良い場所ってどこか分かる?」
「マモンに聞きなよ……って言いたいけど私もマモンに聞いたし」
「そうなの?」
「うん。最初の街から二つ目の街に行く途中の川を渡った反対側の森にいるゴブリン狩りだね」
*****
「うん、良い感じに鋼鉄が集まって来たね」
鋼鉄をインゴットにするには5個、つまり鉄の半分だ。だからインゴット換算で8個、装備部位は靴と脚、服に上着、小手に手袋、兜にネックレス、ミサンガと指輪。
足りないし剣の分も確保しておきたい。だから
「スターダストスラスト!」
アイアンリザードマンの体力をガリガリと削って跳躍。一旦下がって
「スターダストリープ!」
『ネイルスラッシュ!』
6連撃の始まりの一撃を食い止めようと振られた爪。それを弾いて3連撃。打ち上げられたはずなのに重さのせいか大して高く飛んでいない。続けての2連撃も削り切れなかった。
「硬いなぁ」
『ぐ……クロスネイル!』
「ソードリバーサル!」
左右から迫る爪を受け止めて弾きかえす。そして
「デプスブラスト!」
吹き飛ばす。アイアンリザードマンは壁に激突してダメージが表示され、光となって消えた。
アイアンリザードマンじゃなくても鋼鉄は手に入るけど鋼鉄の剣をドロップするなら確かめたい。
「マモンがアップデートでスキルが増えるかなーって言っていたけど二刀流や双剣が出るって公式から発表あったし」
だから鋼鉄の剣を二本手に入れたい。もっとも二刀流の内容は説明されていないから判断に困るけど。
「でもレアドロップなだけあって全然落ちないや」
そろそろアイアンリザードマンを狩った数が30を回る。なのに1本も無い。ドロップ率三%もないのかな。
*****
「それで結局諦めて自分で装備を整えようとしちゃったんだ」
「だけど今度は付与素材に不満が出て……ここの攻略サイトってもうある?」
「うん、いつも通り魔王が作ったよ」
「ならログアウトついでに見てくるよ」
「あ、錬金術のレベル上げた?」
いきなり何かと思ったら
「イベント前はポーションがよく売れるから早めに高くしておいたら鍛冶屋に必要なアイテムを買えるよ?」
「そうだね、機があったらしておくよ」
*****
「これかぁ……って主力ギルド?」
カテゴリーの中にあったギルドの下にあったそれをタップすると
「……あの時の一糸乱れずに戦う私のポーション顧客」
『聖堂騎士団(テンプルナイツ)』
『魔王の傘下』
『魔導の極め』
「……テンプルナイツってギルド全体が顧客にはなっていないよね」
『装備を整え、防御を固めて6人での車輪陣を利用した回復しつつ攻撃を基とする。一撃で削り切れないなら長期戦は覚悟するべき』
何故か安心しながら目を通す。内容は記憶通り統率取れている。
「そして疑問の魔導の極め……魔法使いか賢者専用ギルドかな」
『魔法使い、賢者のみが参加出来るギルド。参加制限は無いが脱退する条件も無い。良くも悪くも自由』
さて、ここまで来たら最後の1つも見よう。
『魔王の傘下』
『基本的にメンバーは9人の少数精鋭で形成されている。この攻略サイトの管理人もメンバーである。一人一人バラバラなプレイスタイルで纏まって行動する事は極々稀』
「おぉ……客観的に見ても本当の事しか書いてない」
だけど
「メンバー一人一人の説明が書いてあるってどういう事なの?」
*****
「シェリル、そっちは任せた」
「うん、任された」
私はシエルちゃんの言葉に頷いて魔法を詠唱する。詠唱短縮を取ったけどレベルが低いから少し時間がかかる。もっとも
「ファイアーボール!」
その分威力は申し分付き。だからゴブリンを一撃で倒せた。だけど今のはシエルが一度切ったの。自力では倒せない。
「あんた、アリアの姉なんだよね?」
「うん、そうだけど?」
「いつかあいつと再戦したいって伝えてくれるか?」
私は驚きながら頷こうとすると
「それなら俺の分も伝えてくれないか?」
「セプト、あんたも?」
「あいつはお前と違って似たプレイスタイルだからな。負けて悔しいというのがお前より大きい」
セプトとシエルちゃんの2人からアリアちゃんに伝言ね。忘れないようにしないと。
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