第22話

魔王の傘下 メンバー

『魔王』ディアボロス

『傲慢』ルシファー

『憤怒』サタン

『嫉妬』レヴィアタン

『怠惰』ベルフェゴール

『強欲』マモン

『暴食』ベルゼブブ

『色欲』アスモデウス

『最強』アリア


「うん、いつもの僕たち9人だね」


個別に記事が書かれているようだが今日はもう遅い。明日にでも確認しよう。


*****


「それであのソロ大会が終わってからどうしたの?」


私はエビフライを加えた状態で首を傾げる。それにきりはため息を吐いて


「まず飲み込んで」

「んぐぐ……終わってからの私の行動?」

「そ」

「三つ目の街に行ってベルから掛け金を受け取って店を一軒買ったよ」

「ベル? ダンまち?」

「違うよ。ベルフェゴール、僕たちのギルメン」


私は一旦暗転させたスマホを開いてベルの記事を開く。でも大した事は書いてはいない。


「魔法使いの男って思っていればそれだけで十分だよ」

「ふーん……そのアリアたちのギルド、名前なんだっけ」

「傘下」


ふむふむ、と頷いてデバイスを操作するきりたち3人。しかし


「傘下ってギルドは無いけど?」

「え? あ、ああ、そういう事ね」


私は苦笑して


「魔王の傘下、それが私たち9人のギルドだよ」

「マモンもそうなんだよね?」

「うん」

「あの人ってどれくらい強いの?」

「……僕が少し苦戦するくらい?」


多分もっと上だろうけどね。苦戦は苦しい戦いだから負けても同じと言い張ろう。


「ふむふむ……他のは?」

「分からないよ、正面から激突した事は無いからね」

「え? あの時魔王と戦ったのは」

「忘れてたよ」


私はエビフライを齧って頷く。すると


「お店、買ったって言ってるけど何を売っているの?」

「今のところポーションとか錬金術で作れるものだけ」


ようやく体力の10パーセント回復のポーションから20パーセント回復のハイポーションを作れるようになった。それと同時にMPポーションも。


「MPポーション売ってるから買いに来たら?」

「ソロプレイヤーなのに店にずっといるの?」

「ううん、時間を決めているし他の時間はNPC店員に任せているから」

「ふーん。NPCに融通って効くの?」

「少しね。AIも進化したよ」


アーティフィシャルインテリジェンス、略してAI。簡単に言えば人工知能だ。多分。違っても責任取れない。


「ちなみに三つ目の街の名前って?」

「……えーっと……確か山と川に挟まれた街?」

「それは名前じゃなくて特徴だと思うな」


きりは苦笑した。すると


「じゃその街のどこらへんに店があるの?」

「えっとね、街の中に川が流れているんだけど、それの上流の店」

「名前は?」


鳥の質問に答えるとアカネが。そして


「名前はまだない」

「え」

「は?」

「そうなの?」

「うん」


だってネーミングセンスが無いもん。


*****


「ニアリバとかアリアとか店の名前には向いていないと思うんだよ」

「確かにそうだな。特に店長の名前を使うのは……」

「それは僕も同意だよ。セプトは何か良い案は無いかな?」


僕はセプトの斧の耐久を回復兼伸ばしながら問う。すると


「この店の屋根の色は若葉色だったな」

「そうだけど……?」

「お前の髪は赤……そこら辺の色を英語にしたりしてみたらどうだ?」

「一応僕の髪の色はカーマインだよ」

「……カーマインブラックスミスはどうだ?」


カーマインブラックスミス、確かにそれはしっくり来るけど


「カーマインとブラックってどっちなのさ」

「ブラックスミスで一つの単語だ」


あぅ。


「だけど若葉色はどこに行ったの?」

「グリーンブラックスミスよりもカーマインブラックスミスの方が良いと思ったからだ」

「……そうだね。カーマインブラックスミス、良い名前だと思うよ」

「そう思ってくれるならメンテナンス料を安く?」

「するよ」


セプトも大分前まで行けているからお金には余裕があると思うんだけどね。


「ついでにポーションとかも?」

「10個につき200安くするよ」

「サンキュ……ところで相場は200なのに良いのか?」

「僕は瓶さえあれば量産出来るし」


この街の土地の一角を買う事も視野に入れているから。ちなみにその土地はこの店の裏。だから早めに買いたい。


「なら買えよ」

「うーん、残り2Mだからね……半分消えると思うと手が出せない」

「優勝賞金かよ……羨ましいな」

「セプトも上位じゃないの?」

「パーティならな。ソロの方はナヲフミに負けた」

「あれま」

「一応斧の耐久がシエルに削られて折れそうだったと言い訳しておこう」


セプトの言葉に頷いて


「はい、耐久は23伸びたよ」

「結構伸びるものだな」

「うん、地味に鍛冶屋スキルを上げているからね」


そろそろ15くらいのはずだ。剣士の38とは大分差があるけど。


「さて、また今度耐久が減ったりポーションが必要になったら来る」

「広めといてねー」

「分かっている」


セプトはそう言って店から出て行った。ポーション20個買って2000、そこから400引いても問題無い。それよりも


「畑、作って薬草を量産しないと」


ハイポーションの造り方は簡単だ。

ポーションと同じ。材料が5倍になっただけ。それをだけで済ませるかは人次第。


「……ところでいつまでそうやって店の前でタムロしているのかな?」


店の扉を開けて顔を出すと面白いほどに驚いた


「あれ、きりとシエルだけ?」

「うん」

「だな」

「ふーん。とりあえず入りなよ」


店の中に招き入れて


「いらっしゃいませー」

「うわーやる気無さそう」

「だって僕が愛想振りまいたら違和感があるじゃん」

「「え?」」

「え?」


2人の意外そうな顔が引っかかる。


「それで今日は何? メンテナンス? ポーション?」

「いや、たまたま近くに寄ったらセプトがここから出て行くのが見えてな」

「私はこの辺りかなーって探していたらそれっぽいのを見つけたの」

「……なるほどね」

「それよりその装備は何だ?」

「あ、これ?」


鍛冶屋スキルを使って新たに作った鍛冶屋用str高めの装備だ。錬金術用のdexを高めたのもある。


「ステータスの一極化した物。今は鍛冶屋用にstr高めの」

「ほう」

「へぇ」


2人は顔を見合わせて


「私たちの装備を作ってくれないかな?」


*****


鋼鉄は僕が集めるから付与素材は自分たちで集めてもらう。しかし


「僕よりも鍛冶屋スキルのレベルが高い人もいるだろうに……どうして僕に頼んだんだろう?」


この辺りのモンスターはアイアンシリーズと炎の二択だ。そして炎の龍がこの辺りの最強モンスター。だけど


「傘下のメンバーは僕以外全員一回は狩ったらしいんだよね……」


適当に歩き回ってモンスターを見つけたら倒す。それを繰り返していたら


「…………モンスターがまったくいない?」


疑問を感じながら歩いていると、近くから何か超重量の物が地面に落ちたような振動が。それは何度も繰り返す。

その時には分かっていた。だから震源に向かうと


「いた」


炎を示す紅の鱗を纏った巨大なドラゴンが。

勝てない。そう言われた。だけど僕たちは常に最強のギルドだ。だから最強を名乗る僕が


「倒さなくてどうするんだ!」


風鉄の剣の柄を握り、火山を駆けた。

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