時/世界平和のはじまり

 天から降り注ぐ、雨、雨、雨……。

 世に現われた魔王が、人間ひとに打ち倒された。

 その圧倒的チカラをもってしても、魔王は運命的に勇者には敵わない。そういうふうに、世界の辿る道筋は完成されていたのだから。


「主よ。見ましたか。くだんの彼が、伽藍がらんの傀儡が、無価値のディアに唆された愚かな魔王が、ついぞ勇者に滅ぼされました」


 来るべくして訪れた勝利に歓ぶ女神は、にこりと微笑んだ。

 

 そうして。


 魔王が倒された事実のみで世界が救われたと表現していいものならば——確かにこのとき、世界は救われたのである。

 ほかならぬ、勇者と、彼女を支えた十二綴に数えられる天使たちの手によって。

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