巨大な尻とトマト
@semois
第1話
巨大な木造の尻が石畳の上を進む。歓声、怒号。皆トマトを尻に投げつけ、アナルに投げ入れようとして外れている。
「中々入らないものだね…」
長い髪を腰まで伸ばした少女は、かごいっぱいに入れたトマトを一つ、また一つ尻に投げて、悉くが尻肉に当たって潰れる。
「そりゃ…えいっ…あー…また…直ぐにアナルに入っちゃ楽しくないでしょ。一つでも入ったらそこでお祭りはお開きなんだからさ。アドリアだってこのお祭り楽しみにしてたじゃない。…えいっ…ま、トマトを尻にぶつける日なんて今日くらいなんだから、精々楽しもうよ。」
弾んだ口調でアドリアの友人は答える。
巨大な尻はなおも石畳を進む。広場が見えてきた。祭りの終着点だ。
道化師の仮装をした町長が拡声器を手に叫ぶ。
「さー皆さん。そろそろ本気になってアナルにトマトを投げ入れないと、広場に悪魔が到着してしまいますよ!ああ、そうなってしまってはこの祭り始まって以来の大失態!ご先祖様にも面目が立ちません…そもそもこの祭りの起こりは…」
「去年も話してたよね、この話。」
「うん。カリーナは、どうしよう!ってうろたえてた。」
カリーナはよく覚えてるなぁと呟きながらトマトを投げる。
「村の若者であったアルフレッド…彼は私の先祖に当たる人物なのですが…は勤勉な若者でして、丁度そこの広場にあった鍛冶屋に誰よりも早く来て、誰よりも早く一人前になろうとしていたのですね…ああ!彼の勤勉さが無ければ悪魔の発見が遅れてこの町は暗黒に包まれていたかもしれません…」
町長は去年と全く同じ内容を同じ口調、手ぶりで叫ぶ。
「話が長いしつまらないんだよね…」
カリーナは楽しみに水を差されたとでも言わんばかりの口調で言う。
「わたしは去年もどうせつまらないし長いって思って最初から聞いてなかったよ。」
「それが正解。」
トマトを尻に投げつけながら喋る。まだ誰もアナルにトマトを投げ入れられていないらしい。広場が近づく。
「そう言えばこの祭りってなんでアナルにトマトを入れようとしてるの?」
アドリアは思い出したようにそう言った。
「知らなかったの…だったらつまらなくて長い町長の話を聞いてなよ…」
カリーナは呆れたようすで言う。
「つまらなくて長いんだもん。ね、教えてよ。出来たら短くね。」
「はぁ…悪魔が町に出てこようとしたんだけど、尻から出てきたからアナルにトマトを投げ入れたら悪魔が帰ってめでたしめでたしって感じ。」
「本当に短かった。」
町長の話はまだ悪魔の尻を発見するに至っていない。
尻はなおも石畳を進む。
「ったく…今回の尻を造ったやつは尻肉を厚く作り過ぎたんじゃねえか…?」
「きっと奴さんの奥様はデカ尻に違いないぜ。」
男たちが不満を口にしだす。
「本当に入らないね。」
「いつもならずっと前にお開きになっているのに…」
尻に向けてトマトを投げる。すべて尻肉に当たって弾ける。
祭りの最初には木肌だった尻は真っ赤に染まり悪魔の尻そのものになっていた。
「トマト切れちゃった」
アドリアのかごの中にトマトはもうない。
尻は広場に到着した。
「その時です…彼が恐ろしいそれを見たのは…ふと空を見上げると未だ星々が輝き、輝きの中に巨大な…えっ広場に着いた!?…皆さま少々お待ちを…」
町長の話は最後まで悪魔の尻を発見できなかった。慌てて拡声器のスイッチを切り、周りの者と話を始める。
「…ねえ、あれって…」
カリーナはアドリアの袖を引く。空には巨大な尻が浮かんでいた。
巨大な尻とトマト @semois
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。巨大な尻とトマトの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます