第1章 6話

私は今、カユアの家の近くにある酒場「ショパーナ」に来ている。

「こんにちはー」

「いらっしゃい。ん。黒髪のねーちゃんじゃーねーか。どうした。今日は彼氏は一緒じゃないのかい?」

「……あの。バイトしたいんですけど」

「バイト?」

そう。なぜニートの私がいきなり「バイト」なんて単語を発したのか それは────


「あ、シカンダ。俺そろそろバイト行ってくるから家空けるぞ。」

「ん〜。わかっt…バイト?!!」

「あれ?言ってなかったっけ?」

私は激しく首を縦に振りカユアを問い詰める。

「な、何のバイト?!」

「剣術だよ。俺剣術だけは自信あるから」

なるほど……実に異世界らしい仕事だ。

「私もカユアに身の回りのことしてもらってばっかだからなにか恩返ししなきゃ!」

「お。助かるな」

「私に合うバイトって何があるかな」

なにせずっとパソコンかスマホに張り付いていた人間だ。

そうそう私に合う職種なんてないだろう。

「じゃあさ、「ショパーナ」の親父さんに聞いてみたら?」

ショパーナの親父さんと言えば元冒険者のちょいエロ親父という印象しかない。

そんな人に聞いていい情報が得られるだろうか、

疑問を持ちつつ私は

「なるほど。行ってくる!!」

と言い家を飛び出した



というわけだ。


「なんかないですかね?私にできるようなこと」

親父さんはしばらく考える素振りを見せた後何かをひらめいたかのようにスタッフルームの方に駆けていった。

──帰ってきた親父さんが持っていたのはカーキー色のエプロン。

「ここので働いたらどうだ?今の時期は王の誕生祭が近いから何かと忙しいんだ。」

「王...?」

「あ。そうか。嬢ちゃんはまだここに来たばっかだったな。ここは王国なんだ。そろそろ王の生誕祭に向けていろんな所から観光客とか来てとにかく忙しいんだ」

異世界に来てまだ2週間経っているかいないか。

ここは王国のようだ。そう言われてみればアニメとかで見る騎士がよく見られる。

「なるほど…」

「で。どうすんだ嬢ちゃん。ここで働くのか別のとこで働くのか。」

「是非ここで働かせてください!ち、ちなみにどんなことをすれば?」

飲食業ならできそうな気もするがここは異世界、特殊なことをする可能性だってある。

「そうだな。主には客の注文とかを厨房に伝えたりとかだが……」

良かった。普通だ。

「わかりました。では今日からよろしくお願いします!!」

「おうよ。さ。今から昼時だからな。もっと忙しくなるぞ!」

「は、はい!!」

そして飲食業で一番忙しい昼時がやってきた。

私はもちろん仕事なんて初めてなので最初は厨房で皿洗いや盛り付けからやらせてもらった。

慣れてきたら注文の品をお客さんのところへ運ぶことも少しずつこなしていった。

そして────


「ふぅ。やっと落ち着いたか。」

「はぁはぁ……です…ね。」

私は思った。

飲食業ってこんなにも大変なんだ。と。

いや。仕事がというほうがいいのか。

「なんだ〜?黒髪の嬢ちゃんはこれぐらいで疲れてちゃったのか?」

「逆になんで親父さんはそんなに元気なんですかッ!?」

「まぁ。俺は慣れてるからな。」

これが経験の差か······

日本に戻っても絶対バイトなんてしないと誓った…


✝︎────────✝︎


「もう未九刻(午後9時)か。よし、嬢ちゃんはここで上がっていいぞ」

もうそんな時間か。そろそろ帰らないとカユアに心配されるな······

「ではお言葉に甘えて上がらせてもらいますね」

「おう。今日は助かった、正式にここの従業員にならねーか?」

「そうですね······まぁカユアに言ってみますね」

親父さんはいい返事を待ってるぜといい、今日の給料を渡してくれた。


「では、また明日、八刻に来ますね」

「あぁ。待ってるぞ」

そう言って私は『ショパーナ』を後にする。


✝︎────────✝︎



「カユアただいま〜」

いつもの見慣れた木の家、とても美味しそうな匂い。

そして

「おう。シカンダおかえり。遅かったな」

とても落ち着くカユアの声。

「今日働いてわかった。私にバイトとか向いてない。」

「ははは。とりあえず一週間は頑張ってみなよ」

カユアは苦笑しながら言った

「そうだ。親父さんに正社員にならないかって言われたんだけど...」

「おお。凄いじゃないか。」

「私的に遠慮したいんだけどね。」

1日厨房仕事だったとはいえこんなに疲れている私…それなのに正社員ともなれば客の接待とか増えるだろう。

そうすれば私の体がもたない······

「シカンダは今日1日仕事して楽しかったか?」

「えっ...?ま、まぁ、楽しかったかな······」普段しない事をたくさん出来たし、まかない飯も美味しかった、

嫌な事は特になかった...

「じゃあ正社員なりなよ。」

「えっ」

「楽しかったんだろ?」

「うん...まぁ。」

カユアはすごく暖かい笑顔で話す。

すこしは頑張ってみようかな...

「ちょっと考えてみようかな...」

「あぁ。シカンダ、夜ご飯食べるか?」

「うん。食べる。」

そう言ってカユアはキッチンに向かいスープを温め始める。


✝︎────────✝︎

ご飯をたべたあとの私はお風呂に入って自室に篭っている

異世界に来てほとんど毎日書いている日記。

今日あったこと。

嬉しかったこと

学んだこと

を細かく書いている。

いつ『日本』に戻れるか分からない。けど、ここで体験した事は『日本』に戻っても覚えていたいから...


○○月▼▼日天気☀️


初めて仕事というものをした。

楽しいと思えたことには自分でも驚きだ。

今日の夜ご飯

リリスト産リリ豚のスープ←これ超美味い

異世界の主食 ハースレ(日本でいうパンみたいなヤツ)············



うん。書き直そう。


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