第1章 3話

酒場でひとりカユアが戻るのを待っている私は近くにいる探検者らしき男達の話を盗み聞きしていた。

「なぁ。あの酒場のおねーちゃん良くねぇか?」

「いやいや。あの金髪のおねーちゃんだろ」

「お前らダメだなぁ やっぱり茶髪のおねーちゃんに限るな」

前言撤回。ただの変態オヤジだった。

「シカンダ!やっと開放されたよ」

「あ。カユア。お疲れ様」

「ん。なんか情報手に入った?」

「変態が多いってことが

わかった」

「そ、そうか 」

――――――――――


カユアと酒場を出て迷宮(ダンジョン)をみにいくことにした。

「ここが迷宮(ダンジョン)だ」

木のアーチが目の前に広がり

奥には石造りの建物がある

アニメでよく見る感じのthe迷宮って感じの建物だ。

もともと私はアニメ好きなのでこの世界に来てからというもの興奮状態ではあるが迷宮(ダンジョン)を見るとさらに興奮してしまう。

「ここが迷宮(ダンジョン)か...」

「シカンダは何か魔法とか使えるの?」

魔法?あのほうきに乗ったりするやつか?

「無理です」

「剣術は?」

「無理です」

「え。」

「あ。でもコンピュータ系なr...」

まずこの世界にコンピュータなんてないか。

「今のままで迷宮(ダンジョン)なんて入ったら死ぬぞ。」

「そ、そういうカユアは魔法使えるの?」

「魔法は無理だけど剣術なら」

さすがこの世界の人間だ。

「酒場のおっさんは?」

「あの人元は探検者だからなぁ。」

まじか。あんな人が探検者だったのか。

「え。私帰れないじゃん」

「そうだな...とりあえずシカンダにあう戦闘スタイルを調べなきゃな。」

「そんなことできるの?」

「うん。迷宮(ダンジョン)攻略を目指す人がこの方法で自分に合ったスタイルをみつけるんだ。」

なるほど。

「善は急げだよ!早く調べよ!」

「そうだな!」


.....................................................


ここは冒険者ギルド「クルティア」

カユアはギルドにいるいかつい男に挨拶し慣れた手つきで受付のお姉さんに声をかける。

「さぁシカンダ、さっそくシカンダの戦闘スタイルを調べるぞ。」

「う、うん」

受付のお姉さんは水晶を出してきて

「ではこの水晶に触れてみてください。」

私は言われるがまま水晶に触れる

これはあれだ。私がどんな魔法属性か調べるやつだ。アニメとかでよく見るやつだ。

触れた水晶はひんやりしてとても気持ちいい。

すると白銀色の光が溢れた。

「え、えっと...これはすごいんでしょうか

普通なんでしょうか...」

「すごいなんてもんじゃないぞ。」

「はい...チートですよ...」

まじか チートだって。嬉しい。


チート級の力があるということに喜びをかみしめていた私に受付のお姉さんは

「白銀の光...ということは魔法に優れた力の持ち主ですね」

「魔法ってあの杖から火が出たりとかのヤツですか?」

「あなたほどになれば魔獣などを召喚できるでしょう。」

「ほう。なるほど。」

なんだ。すごいぞ。自分。

「で、ではこのギルドに入る書類にサインを...」

「え、いやあの。何勝手にこのギルドに私を加入させようとしてるんですか。」

恐ろしいお姉さんだ。

危うくペンまで持っていた

「ま、まぁそんなことおっしゃらずに」

お姉さんは満面の作り笑顔だ。

「まぁいいんですけど」

「いいですか。」

「いいんです」

どこかで聞き覚えのある会話を繰り広げ私は書類にサインする。


────────────


「うわああああ!疲れたあああ!!」

私はカユアに貸してもらった部屋のベッドでバタバタと足の上下運動をしていた。

ギルドで加入書類を書いて正式にギルトのメンバーとなった。しかしその後が大変だったのだ。メンバー達に自己紹介をし、これで終わりかと思った。しかし受付のお姉さんが私のチート級の力を持っていると言うことを自分のことかのように話したのだ。これのおかげでギルド朝に呼び出されるわ、メンバーからの言葉攻めを受けるわで精神的にも肉体的にもやられていた。

そんな身も心もボロボロな私がいる部屋のドアがなった。

「シカンダ、入るぞ?」

「あぁ。カユアどーぞ」

「さっきはすごかったな」

「散々だったよ...もう」

「お疲れ様w」

「ん。で、どうしたの?」

「あ、そうそう、いつまでもその服じゃあれだなぁと」

カユアは綺麗に畳まれた服を差し出してきた。

確かに私の今の服装といえば、近くの自販機と本屋に行く為に着ていた薄いはおりと黒いズボン。良かった。ここが日本じゃなくて。こんな服装だと「パジャマ」にしか見えない。ただのニートにしか見えないじゃないか。

ニートの私が言えないな。

「そうだね。このままは流石にまずいかな。」

カユアは笑顔で頷き「じゃあ俺は夜ご飯作ってくるから今着てる服は置いといてくれれば大丈夫」

「ほーい」

カユアはなんでここまで私にしてくれるんだろう。

知らない人なのに。

私はカユアに貰った服を着た。少し曇った白のワンピースに赤の帯を巻いただけの簡易な服だ

「おお。the 異世界の服って感じ」

正直感動した。本当に異世界なんだ。と。

部屋で1人感動しているとカユアの声が聞こえた。どうやら夜ご飯ができたらしい。私は「今行くー!」と返事し下の階へと階段を下りた。

そしてカユアとご飯を食べ、お風呂に入りふかふかのベッドで今日を終えた。


「なんだ。異世界って楽しいじゃん」

私はベッドの中で一人呟いた。


しかし私がこんなことを言えたのは今日最後だった。


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