第1章 2話
いい匂いがする。これはシチューか?
何だろう。他にも優しい匂いがする
私は重いまぶたを開ける。
木の天井。美味しそうな匂い。温かい布団...
「え。ここどこ?!」
つい叫んでしまった。
ま、待てよ。落ち着け。
私は久々に外に出るため玄関のドアを開けた。
そこまでは覚えている。
そこから何があったんだ。
頭の中がパンク寸前の私に
「やっと起きた!」
男の子の声だ。
茶髪で至るところがはねている
エプロンをしその手には鍋を持っている。
「ここは?」
「俺の家だよ。」
「えっと。なぜ私はここに?」
「迷宮(ダンジョン)の入口で倒れてたからとりあえず俺の家に」
「え、あの。迷宮(ダンジョン)とは...」
「迷宮(ダンジョン)を知らないのか?!」
ヤベェ。まったく理解出来てない。
「えっと。ここ日本ですよね?」
「日本って何?」
あ。もうだめだこれ。
「ここの地名は?」
「シエンタルタだけど」
.........どこだよ。
「ちょっと分かんないです」
「てことは...君はその日本ってとこから来たってことか。」
「でここは私からしたら異世界」
「そういう事だな」
うわー小説の中だけかと思ってたことがホントにあるとは...
しかし私は「異世界を舞台にした小説」が大好きな為。結構読んでた。
これは...!私の長年叶えたかった夢の一つを叶えるチャンス!
「と、とりあえず助けてくれてありがとう...」
「ん。お、おう。」
元の世界に戻るためには...迷宮...
「そうだ。迷宮(ダンジョン)だよ!!!」
「迷宮(ダンジョン)がどうしたの?」
「迷宮(ダンジョン)の一番奥に行けばひとつ何でも願いが叶う!とか元の世界に戻るゲートがある!とかさ!」
「なるほど。」
「ん〜。とりあえず酒場だな酒場。」
「酒場なら俺の家の近くにあるよ。案内する。」
「ありがと」
「あ。でもそのまえにこれ。」
そう言って少年は鍋を差し出した。
「ん。美味しそう。」
「だろ。俺の一番得意な料理だ」
「ふ〜ん。...…そういや名前聞いてないね 」
「そうだな。俺はカユア。」
「私はひなg...シカンダ」
せっかく異世界に来たんだ。違う名前でもいいだろう。ぱっと思いついた名前を言ってみた。
「いい名前だな。宜しくなシカンダ」
どうやらいい名前らしい。
✠ ───────────────────✠
カユアに案内されてやって来たのは酒場の「ショバーナ」
木で作られたよくアニメで見るような酒場だ。
カユアは亭主であろう男に声をかけ空いている席へ案内された。
「よお。お嬢ちゃん。カユアから聞いたぞ?なんでも「日本」ってとこからこの世界に迷い込んだそうじゃねーか。信じられねーけどなw」
なんだこのおっさん。
「い、いやぁ普通に買い物に行こうとしたらここに...変な話ですよねw」
「でも黒髪に黒目か。確かに異国のもんだな」
「珍しいんですか?」
「珍しいもなにもここじゃ見たことないぜ。」
やはり黒髪黒目は日本独特のものらしい。
「こ、これで私がこの世界の人ではない証明になりますかね」
「あぁ。十分だぜ。逆に狙われるかもな」
「えっ?」
「さっきも言ったろ?お嬢ちゃんの黒髪黒目は珍しい。どっかの変態オヤジに狙われるかもな。」
「お、おいオヤジさん!物騒な事言うなよっ!」
「すまんすまん。だが気をつけろよ」
「は、はぁ。」
さっきまでふざけていたおっさんがいきなり真剣な顔で言ってきた。ホントに心配してくれているようだ。
「カユアちょっと手伝え。」
「は?なんでおれg...ってぇえ!」
カユアはおっさんに耳をつままれて厨房に引きずられていった。
「え。あ、あの...」
私は馴れない世界の酒場でひとりになった。
何をしたらいいのかわからない。
今は何時だ?
これからどうしたらいい?
もう何もわからない。
ずっとそんな事が脳内リピートをしていた。
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