第3話

 時間が過ぎていく。留まるような一人の時間。流れゆく家族との時間。漂うような週末の弦楽器の流れる時間。その全てが、好きか嫌いかさえも構わず、諭されるように緩やかにねじ込まれていくようだ。私にはこれがあるべき日常かなんて、わからないのだから。

 ある時、私の生活に転機の兆しが見え始めた。医者に、リハビリの開始を告げられたのだ。順調に回復に向かっている体を、病室の外で少しずつ動かしていこうというものだ。

 窓の外に広がる風景に足を踏み出せる。ぼんやりとそこに待つものを夢想した。壁のない空間を歩くのはどんな感覚なのだろう。時折窓から訪れるそよ風を外で感じるのはどんな感覚なのだろう。ぼんやりとした想像はどこか掴みどころのない期待だった。

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生に至る病 @somnus_meus

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