とても不思議な小説でした。
冒頭に出てくる彼女が物語の核心に触れているようで、触れていなくて、でもやっぱり触れていて、、、。すべての因果関係の網の目が複雑に縺れたまま、話が進んでいってしまう。
それでも物語は家族という人間関係をめぐる――という言い方は適切ではないかもしれません。人間関係をめぐる、ほんのささいなボタンの掛け違いが、じとりじとりと湿度に質量を与え、読み進めるとまるで濃霧に放り込まれたような錯覚すら覚えました。
夢のような小説。
けどこれは夢じゃない。
S(少し)F(不思議)な空間をまるごと提示されたような、そんな読後感でした。ありがとうございます。