第2話

 母の旧姓である”団”の家はその昔、代議士を多く輩出する家だったらしい。  

 しかしその血筋も外国との長い戦争が終わり、ぱたりと途絶えた。代わりに息づき始めたのが、かつての人脈を駆使した口利きの生業だった。この新しい生業を始めてから家を傾かせることもせず、それどころか今まで以上の人脈を築き上げているのが祖父――団 勝虎ダン カツトラだ。

 若い頃の写真を見る限り、ずいぶん猛々しい人のようだったが来る老いには勝てなかったのだろう。祖父の体は今、癌の巣窟と化していた。

 医師から告げられた余命が何年ほどあったのか知らないが、病魔に一秒を殺されながらずっと息をしている祖父は僕の目に怪物のように映った。そんな祖父の子どもは僕の母を合わせて六人いる。

 年の順に長男の喜一伯父、長女の哀子アイコ伯母、僕の母であり次女の袖乃に次男の楽弐ラクジ叔父、三男の刹夕セツナ叔父。最後に暁くんのお父さんタカシ叔父さんだが、叔父は祖父が他所で作った女の人との子どもらしかった。妾の子なんていかにも昭和チックだ。

 叔父とはろくに会話をした覚えはないけど、団の家で気苦労を重ねて来たことは間違いなさそうだ。暁くんがあの冷めた目をする前のひとり身を削る謝罪がいい例だ。きっと僕の母と喜一伯父が通り雨のように気まぐれな喧嘩をしていた時も、叔父はああして間に入って場を取り持ってくれたのだろう。

 どうしてああもあの二人は仲が悪いのだろうといつも考えているけど、理解しようとする前に心が疲れてしまう。何せ母と伯父は一貫して険悪な雰囲気な訳ではなく、必ず火山のように噴火をしてからお互い腸に溜め込んでいた溶岩のようなそれを相手にぶちまけるのだから。

 そういえば僕は以前、母に伯父が嫌いなのかと聞いたことがあった。

 何故、そんなことを聞いたのかというとその時もちょうど母は伯父と口論になった。よりによって祖父の誕生日を祝う場で、だ。

 その当時、祖父はまだ夏みかんを植えた庭を一人で歩き回れるくらい元気で、しゃきしゃきと歩く父を見た哀子伯母が「このまま古希も迎えれそうね」と言っていた。

 夜になると、広い客間にかまぼこ型に作られた席が出来た。その真ん中に祖父が座り、残りの席を六家族が埋めて、大人たちが年を食った父と思い出に花を咲かせている。が、その一方で僕の母は鯛の塩焼きを箸でほじってはつまみ、兄弟たちの中に加わろうとしなかった。

 それを見かねてか、喜一伯父が祖父に「父さん、袖乃が昔」と輪に加わらない母の話をし始めた。伯父は多分、気を使ってくれたのだ。でも母にそれは必要なかった。

 母は自分の名前が場に挙がった瞬間に、お膳にお箸を打ち付けるように置いた。僕はお味噌汁に口をつけようとした恰好のまま止まった。他の大人はまだ母の様子に気が付いていない。

 母はそれを逆手に取り、出入口側に置いていたコートや鞄をさっと掬い取って、「朔太郎」と僕を呼んだ。

 僕は最後に食べようと思っていた豆ごはんを未練がましく見つめた。「朔太郎」母が急かす。僕は諦めを学び、端っこに寄せていた上着を着てボタンを一つずつかけていく。が、これが難しかった。

「袖乃ちゃん、上着なんか着ちゃってどうしたの」

 ボタンをかける手を止めて見れば、糸瓜のように細い面立ちをした楽弐叔父さんがお猪口を片手に尋ねた。母は自分の周りに何本も熱燗の瓶を侍らせている弟を一瞥して、「帰ります」と簡素な別れを告げた。

「帰るってなんでまた」

 一番上のボタンをぐにぐに動かしていると、母が難なくボタンをかけてくれた。

「気分が悪いから」

 母は楽弐叔父の顔も見ずそう言い、僕と手を繋いで実家を去ろうとする。

「袖乃」

 母は顔だけを動かした。喜一伯父が眼鏡の奥にある目で母をじっと見ていた。

「気分が悪いならすこし休めばいいじゃないか」

「ここにいて治る見込みがないから帰るんです」

「それはどういう意味だ」

「どうもこうもそのまんまです。そっちで仲良しこよしをやるのは勝手ですけど、その中に私を引き入れないで下さい。気持ち悪い」

 母が最後の言葉を勢いよく切り離したその瞬間に、伯父さんの顔が真っ赤に染まった。

「言っていいことと悪いことがあるだろう、袖乃!」

「なら、お兄さんだってそろそろ分かったらどうなんですか。私はその中に入りたくないって、何べんもあなたに怒られながら言って来たでしょう。なのにそれでもまだ分からずに同じことを繰り返すのはお兄さんの方でしょう」

「分からず屋め! 俺はお前にその態度を改めろ、と言っているんだ。多少我慢すれば済むものをお前はいつも自分勝手に」

 伯父さんの苦い顔に今度は、母の方に火が着いた。

「我慢? そんなのもうずっとしてきたわ! この上、私に何を我慢しろっていうんですか」

 母は僕の手を握り直すと部屋の仕切りにずんずん近づいて行く。伯父さんが妹を引き留めようと腰を上げる。が、それを祖父が手で制止した。

「気をつけて帰りなさい」

 かけられた声に母は応えず、僕と共に仕切りの向こうに姿を消した。

 途中で拾ったタクシーの中で、母は終始無言だった。が途中、スーパーを見つけてそこに寄ると大きな袋を二つも使って物を買いこんだ。家に辿り着く頃には時計の短い針が十二を指していて、僕はすぐに布団に倒れてしまったけれども母はずっと起きていた。起きて一生懸命、いいや怒りを発散するかのごとく、何かを作っていた。

 翌日、目が覚めた僕の前に出されたのは昨夜、祖父の家で出された料理とまったく同じものだった。そこには僕の大好きな豆ごはんももちろんあった。

 顔を綻ばせる僕を見て、母は目尻を緩ませた。

「昨日はごめんね、朔太郎」

 今にも消え入りそうな声で詫びの言葉を呟く母を見て、僕は口に頬張っていたご飯を飲み込んだ。

「おかあさんはおじさんがきらいなの」

 問われた母は目を丸くし、「ふつうはそっちよね」と言う。

「私が八つ当たりしているだけよ。お兄さんは堅物の狐目だけど、悪い人じゃないもの」

「きらいじゃないの?」

「きらいじゃないわ、好きでもないけどね」

 にべもない答えに、僕は並べられた料理を見た。鯛の塩焼きに、大根とにんじんのなますに、里芋の煮っ転がし、豆ごはん。どれもこれも美味しい料理の数々にどんな感情をこめて作ったのか、僕はもう知っている。

「ご飯、お代わりするでしょう?」

 僕は顔を上げて、うんと頷いた。空になったお茶碗を母に渡すと、最初と同じくらいの量のご飯が盛られて返される。それを僕はまたもぐもぐと食べて、そんな僕の頭を撫でながら母はうたう。

「いっぱい食べて大きくなりなさい、朔」

 お母さんはそれだけでもう、十分に幸せ。そう言った母は孤独そのものだった。


  ・

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 首筋に流れる汗に顔を顰めながらアパートの階段を上り詰め、右に曲がって三番目の扉の前に立つ。他の家庭が玄関の前の狭いスペースに自転車やミニチュアの家庭菜園などを置く中、僕の家は隅っこに盛り塩を作っていた。

 形だけのそれに溜息を落とし、玄関の取っ手を掴む。

 ガチャン。……今日に限って用心しているらしい。ぺちゃんこな鞄の中を漁って鍵を取り出し穴に差し込み、扉を開ける。

 リ、リリ、リリン。家の中に入ると、羽音を擦り合わせ鳴く鈴虫の音色が近くで聞こえた。間近で聞くと蝉と同じく騒音でしかないその音色は母のペットだ。僕の年が彼らの年代だったから今いる彼らは十六代目のはずだ。

「ただいま」

 返事はない。またかと言う顔をした。見れば、引き戸の向こうはしんとしており、開けてみると電気が点いていなかった。もう七時を回り始めたというのに。いつもであればその光景に呆れた顔をするところだけど、今日はそんなことも出来ないくらい色んなことがあった。

 僕は肩にかけていた鞄を自分の部屋に置いて、父母の部屋の前に立つ。

「母さん、いる?」

 尋ねても、戸は開かない。だが、その向こうにある人の気がうっすら動いたような気がした。何秒もかからずに戸が開き、その中から髪を一つに束ねた母が顔を出した。

「今、何時?」

 開口一番に母が口にしたのは、時間のことだった。

「七時過ぎ」

「道理で、今日は進むわけだわ。ご飯、食べる?」

「食べるよ。お皿出していたらいい?」

「そうね、お願い。墨の片付けをしてくるから。あ、夕飯はハンバーグだからフライパン、火にかけて温めて作り始めててもいいわよ」

「焼くぐらいは出来るけど、ソースは?」

「間に合わなかったら作っておいて。割合は……、分かるでしょう?」

「まあ、一応」

 僕が答えきる前に母は部屋に引っ込んだ。僕はそれを見てキッチンへと進み、フライパンを棚から取り出すと水で軽く濯いでコンロの上に置いた。スイッチを回す。ボッ、と青い火がフライパンの下に現れた。火が出たことを確認してから冷蔵庫を開けて、そこからハンバーグが乗った皿を取り出す。ふと止まると、また父母の部屋の前に戻って書道の片づけをする母に問う。

「今日、父さんは?」

「会議、お酒付きのね」

「それって会議っていうの?」

「さあ」

 母は興味なさそうな顔だ。僕は息を零しつつ肩を落とした。「そういえば」母が今日したためたわら半紙を新聞紙の上に移動させている。

「今日は寄り道でもしてきたの?」

「そんなところ」

「元気だった、秋房くん」

 母の決めつけに釈然としないものの、事実は事実で覆しきれない。

「まあまあ」

「そう、いいことね」

 母はすくり、と立ち上がり、生ぬるい風を部屋の中に入れた。そうして網戸の向こうに見える景色をぼんやり見ている。そのまま黙り込む母に、僕は言葉を急かされているような気がした。何でもいい。次に代わるのであれば話題なんて、何だって良かった。なのに、僕は一番遠ざけようとしていた話題を口にした。

「今年の集まりはどうするの」

 言い切ってから、しまったと思った。これじゃあ僕が何時になく集まりを楽しみにしているようじゃないか。急ぎ、「違う」と否定の言葉を継ごうとしようとした。だけど何が違うんだか、自分でもよく分からなかった。

「どうしようかしら」

 百面相する息子を見て、母はいつも通りだった。いつも通りに、心ここにあらずだった。普段なら僕が一番に恐れているそれに僕は救われ、不本意ながらにも話を続けることが出来た。

「ひょっとしたら、今年が最後かもって秋房くんが」

「……、そ」

 母は僕から顔を反らした。

「朔太郎は行く? 行かない?」

「行きたくない」

 今年は特に。いつもの憂鬱に加えて、従兄が厄介なものと出会ったから、とは口が裂けても言えない。その上、来なかったら来なかったで迎えに行くからと軽い脅しまで貰っている。

 なんて、嫌な年。重い息を吐く。

「でも、途中から行く」

 母は面食らった顔をするもすぐに元の顔を下げた。

「じゃあ、お兄さんに日にちを聞いておくわ」

 力なく頷いて、夕食を作る作業に移ろうとして立ち止まる。「母さんは?」ごく自然な質問だった。母は視界に僕を入れると零すようにこう言った。

「待ってるわ」

「……、何を?」

「時間が来るのを、待ってるわ」

 ドラマの台詞にも思えるそれを母は吐き捨てた。僕はそんな母の横顔に黒い影を見ていた。


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 世間で言うところの盆の期間に入り、高校もようやく夏休みの体を取り始めた頃、僕は電車に揺られ一人団の家に向かっていた。僕ら学生も祖父の家に来られるようにと、団の集まりもこの週に設けられたからだ。

 集まりの日程を喜一伯父さんから聞いた母から何時から行くかと聞かれ、僕は騒々しさがすこし納まっているだろう三日目の夕方から参加することにした。母は僕よりも早く、昨日あちらに行ったので、昨日は僕と父さんは出前を食べて過ごした。父さんが奮発してお寿司を取ってくれたから夕食は困らなかったけど、今日から父さんの食事が心配だ。

 僕はごちつつ、膝の上に置いた鞄のポケットを開けた。その中には、白い紙袋に水色のお守りが入っていた。

 安全祈願のお守りだ。渡さずに済めばとは思うけど、きっと秋房くんの心は変わらないだろう。効果なんてないに等しいと知っていても、僕はいるのかいないのか分からない神さまに頼るしか出来なかった。

 ポケットの蓋を閉じて、僕は団の家に着くまでの長い時間を瞼を伏せて過ごした。

 電車が駅に着き、電車から降りるとまず涼しい夏草の香りが香った。見れば、周囲には鋼鉄で出来たビルもなく、かといって隙間を殺すように建てられた民家も見当たらない。ただただ呼吸静かに、ひっそりと生きる緑ばかりが視界を占めていた。景色の変わらなさに僕は安心したような、困惑したような顔をし、無人駅を出た。

 団の家までにある道は均されていない剥き出しの土で歩きづらく、木々に止まる蝉の大合唱を聞き続けるという苦行を強いられた。一度立ち止まって、額に浮かんだ汗を拭う。甲にうっすらと付いた汗をぼんやり眺めた後、バッグを背負い直して石で造られた短いトンネルを潜る。太陽の光は周囲に植えこまれた木によって遮られ、ここに来てからは涼しさしか感じなくなった。

 苔を生んだ水のような匂いが辺りに漂う中、トンネルを潜り終えた先に僕はようやく団の家を見つけた。団の名前と共に存続しているその家屋は、古めかしさを残した和と洋がちょうどよく混ざった平屋だった。屋根に並べられた瓦は黒檀の色をしており、夏の光をてらてらと反射していた。左右にも縦にも広く大きい家が今の僕には怪物に見えて仕方が無かった。溜め息を一つその場に落として、僕は団の敷地へと入った。

 玄関脇に備え付けられた呼び鈴を軽く押すと、家の奥からばたばたと人が駆けてくる音が聞こえる。

「どなたさま?」

柚川ユズカワです」

「あら、朔太郎くん。ちょっと待ってね」

 硝子戸越しに聞こえるこの明るい声は哀子伯母さんだろう。憶測を立てていると、戸が引かれその向こうからくるくると渦巻いた髪の毛にあんぱんのようにふっくらした顔立ちをした女の人――哀子伯母が現れる。

 伯母は僕を見るなり、「もうちょっと元気に名乗りなさいな」とぺちぺちと僕の肩を叩いた。

「はあ……」

「一年ぶりかしらねえ。元気にしてた?」

「そこそこに」

 伯母はころころと笑う。

「そういうところ親子よねえ。袖乃ちゃんも同じこと言ってたわ。もうすぐお夕飯だから荷物置いて、居間にいらっしゃい。今日はね、朔太郎くんの好きな豆ごはんもあるからいっぱい食べてね。あ、ちゃんと手は洗って来るのよ」

 ぺらぺらと一人喋る哀子伯母にたじたじしていると、視線の先につい最近見たばかりの少女がいた。

「さく」

 少女の見目をした宇宙人――フセは控えめに僕の名前を呼ぶ。秋房くんの口ぶりからいることは知っていたけど、こう堂々といるとは聞いていない。僕が手を右往左往させていると、伯母が首を傾げながらああ、と何か納得したような声を上げた。

「朔太郎くん。着いて早々悪いんだけれど、楓の間に秋房くんがいるからもうすぐお夕飯時だから呼んで来てくれる? 荷物は私が袖乃ちゃんに渡しておくから」

「あ、えっと」

 伏は体をひょこひょこ動かしてこちらの様子を窺っている。頼むからじっとしていてよ。僕は念じながら背負っていた鞄を下ろし、そのまま渡そうとして一度止まり、鞄のポケットからお守りを出して伯母に渡した。

「お部屋の場所は分かる?」

 愚問だった。頷くと、伯母さんはよろしいと満足そうに笑って踵を返す。あっ。伯母はよく目立つ容姿をした伏に足を止めることもなく通り過ぎた。

「……、あれ?」

 哀子伯母の背中が遠のいてから、伏がてくてくとやって来た。「さくたろう」と無表情に喋る伏に僕は問う。

「哀子伯母さんに伏は見えないの?」

「わたし?」

「そう」

 伏はすまし顔で首を縦に振る。

「あきふさとさくたろうだけにしかみえないよ」

「そうなんだ……。っていうか、前より上手く喋れてない?」

「べんきょうした」

 山で見たセーラー服の恰好のまま胸を張る宇宙人すらもが勉強をし、成長をする。そう思うとなんだか複雑だ。

「そういえば何で玄関に来たの?」

「あきふさがさくたろうがきたみたいだから、むかえにいっておいでって」

 僕は合点がいったというような顔をして、たたきに足を乗せた。

「……、朔太郎か?」

 聞こえた声に、顔を向けた先には伏と同じ白髪の少年と青年の中間の人が立っていた。誰だろう。不思議がっていると、その人はにやりと笑う。

 その笑みに、人を食ったような態度に僕は覚えがあった。暁くんだ。僕がそう悟った一方で、暁くんは自分の目を凝らして何かを見ようとしている。

 訳が分からなかった。しかし僕はこれを勝機と見て、その場を離れようとした。

「成長してねーな、お前」

 小さく、小さな棘がぶすりと何かに突き刺さった。確実に刺さった。けれどそれは痛むばかりでどこに刺さったのか、どうやったら抜けるのか全く分からない。冷たくて嫌な汗がだらだらと背中を伝う。

 古い床板がぎしり、とその上に乗った重みに沈んだ。その音にぎくりとし、視線が持ち上がる。奇抜な髪型に染め上げた今の暁くんとまだ頭が黒かった頃の暁くんが重なった。

「ばーか」

 ああ、そうだ。潰れた蛙を見る、あの目。

 あれは呪いのように、秋房くんを刺した僕を脅かすのだ。

 

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 床板の線を目で追いながら、足は頭にある地図を元に進んだ。すたすた歩く僕の足音に犬猫のようにかわいい足音が遅れて続く。伏だ。「さくたろう」と何度か名前を呼ばれるけれど、今は構ってあげられない。僕は息が吸えるのに息が吸えないなんて矛盾に悩まされている。

 転がり込むように、僕は角を曲がった部屋の障子を確認もせずに開いた。と、そこにいた主は机に向けていた顔を上げて、「慌ててどうした?」と可笑しそうに聞いた。

 僕は従兄の、秋房くんの顔を顰めっ面で見返し、何も言わずに部屋の隅っこに膝を抱えて座った。

「……、なんだまだ怒ってるのか?」

「もういいよ、あれは」

「じゃあ何?」

 顔を膝に埋めた。視線が僕から離れる。「しろいこにあった」その場に居合わせた伏が代わりに話した。

「白い子……、ああ暁くんか」

「さくたろう、しろいこにがて?」

「どうだろう」

 秋房くんの返答に僕は顔を上げて、「苦手だよ」と逆切れを起こした。が従兄は僕の顔をじっと見て、「何でだろうな?」と首を傾げるのだ。意味が分からない。

「朔太郎、夕飯食べに行こうよ」

「暁くんがいる」

「暁くんはたぶんいないよ」

「何で?」

「……さあ? いつもこの時間になると、ふらっといなくなるんだ。で、気付いたら帰って来てる」

 勝手だ。おまけに何がしたいのか教えてくれない。僕が立ち上がると、秋房くんは哀子伯母さんが浮かべていたような笑みを作り、行こうかと促す。首を縦に振ろうとして、僕は手に握りしめていたお守りの存在を思い出した。

「秋房くん」

 障子の外から差し込む橙色の光を受ける従兄に僕はお守りを手渡した。秋房くんは突然、渡された包みを瞬きながらも受け取り、その中に何が入っているのかを知ると魂が抜けたような顔をする。

「くれるの? どうして?」

「どうしてって……。秋房くんは僕が止めたら、宇宙に行くのを止めてくれる?」

 秋房くんは一瞬、真顔になり、「止めないよ」と硬い声で答えた。その反応に僕は浮き沈んで、「だから必要でしょう」と声を沈ませたままいう。

 従兄が手元のお守りを凝視するものだから、僕はひょっとして余計なことをしただろうかと思った。要らぬことをしてまた、秋房くんを刺しただろうかと不安になった。すると胸が急にぎりぎり、ぎりぎりと無数の手に締められたみたいに痛み出した。さっきの暁くんの比じゃないくらいに息が苦しくなって来る。ああ、ああ。

「あきふさ」

 静かな声が部屋に響く。僕がその声に顔を上げた時、秋房くんは伏を見ていた。

「さくたろう、まってる」

「……ああ、そうだね」秋房くんはいつもを作った。

「ごめん、朔。お守りありがとうな。さ、夕飯食べに行こう」

 今までの空気が嘘のように雰囲気を明るくしてこの話に蹴りをつけた。悪くはなかった。それが分かったと同時に、呼吸は楽になった。

 廊下に出た秋房くんの後に続く前に僕は伏を見やり、「ありがとう」とお礼を言った。伏は犬のように目で僕を見返した。


  ・

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「遅い!」

 僕と秋房くんに第一声を浴びせたのは小学生かと見まごうほどに低い身長をした女の子だった。僕が口を一文字に縛る横で、秋房くんは素直にごめんねと謝る。

 女の子――僕の一つ上で、今年高校二年生になる小さな巨人はみそらちゃんという。楽弐叔父の一人娘だ。みそらちゃんは肩口で切った髪の毛をさらりと揺らし、猫のように吊り上がった目で僕を見た。

「朔太郎、久しぶり」

「ひ、久しぶり」

 すこし秋房くんの後ろに体を隠すように返すと、みそらちゃんはぷうと頬を膨らませた。

「あんたは……、いいわもう。ほら、座りなさい。秋くんはこっち」

 みそらちゃんは自分の隣を叩く。そこに座れ、ということらしい。

「ごめんなあ。朔太郎くん、みそらは強引だから」

 僕らの席の反対側でお酒に舌つづみを打っていた楽弐叔父がしみじみと零す。

「お父さんは話に入らないで! ほら朔太郎、料理が冷めちゃうわよ。秋くんも」

「分かった」

 秋房くんが頷いて、席に着こうと僕を促す。僕はみそらちゃんの隣に腰を下ろし、対岸を見ると喜一伯父と楽弐叔父がお互いに酒を酌み交わしあっている。哀子伯母はキッチンだろうか。母は……、来ないのかもしれない。

 僕は秋房くんにひそりと耳打ちする。

「いない人は?」

「お祖父ちゃんは部屋で食べてたよ。刹夕叔父さんと栗子ちゃんたちは劇を見に旅行中。岳くんは……、なんだったけ」

 秋房くんがみそらちゃんに問うと、彼女は頭が痛いと言いたげな息を零した。

「コンサートよ、コンサート。木魚を使ってどうロックコンサートするのはあたしも知らないけど」

「木魚ってロックなの?」

「知らないってば。年々馬鹿になって行くんだから、岳は」

 秋房くんと同い年の年長者の一人をみそらちゃんはそう揶揄った。多分、岳くんの母である哀子伯母がいてもいなくてもこれは言ったと思う。

「崇叔父さんは?」

「出張中なんだって。電話で連絡があったって父さんが言ってたよ」

 ふうんと僕は相槌を打ち、膳の上に置かれた箸を取った。哀子伯母が教えてくれた通りに、その日の夕食には僕が好きな豆ごはんがあった。三角食べをしながらも豆ごはんがお茶碗からなくなりかけていることに気付いたみそらちゃんが「お代わりは?」と尋ねる。口の中を片付けながら頷くと、みそらちゃんは自分の食事も構わずに立ち上がっておひつを取って来てくれた。手を出され、お茶碗を渡すとみそらちゃんはお茶碗に隠れるくらいの量のご飯を盛って僕に返した。ありがとうとお礼を言うと、彼女はどういたしましてと素っ気なく言う。

「みそらあ、こっちも熱燗」

 目の下を真っ赤にした楽弐叔父が空になったらしい瓶を振る。みそらちゃんは呆れた顔をした。

「お父さんは自分で伯母さんに頼んで。あと、あたしお母さんにお父さんがどれくらい飲んだか報告する義務があるっていうこと忘れないでね」

 楽弐叔父は喉を引き攣らせて渋々瓶を膳の上に置き、「朔太郎くん、みそらが冷たいよ」と零した。僕はそれにどう返答したものか迷って、あいまいな顔をして見せる。と、喜一伯父が眼鏡向こうの目を細めて、「楽弐」と酔った弟を窘めた。こればかりは効果があったらしくて、楽弐叔父は居住まいを正した。

 弟が大人しくなったところで、喜一伯父がこちらに顔を向けて笑った。

「久しぶりだな、朔太郎」

「こんばんは」

 遠慮がちに挨拶をすると喜一伯父は小さく肩を揺らす。

「相変わらずだな、お前は。どうだ、高校は? 楽しいか?」

「……、まあまあです」

 手の中に収めたお茶碗に視線を落としながら答えたのだが、伯父は機嫌がいいのか、特に気分を損ねた様子もなかった。

「袖乃みたいなことを言うんだな。そうだ、最初の通知表はどうだった?」

 茶碗に向けた目が白黒する。どうして今、そんなことを聞くんだろう。

「そういえば昔っから朔太郎くんの通知表だけは見たことがないなあ。今日は持って来てないのかい?」

「……すみません。持って来てないです」

 当たり障りが無くて、自分に一番いい答えを投げた。が、伯父は諦めなかった。

「どんな具合だったんだ?」

「え?」

 喜一伯父はきょとんとした顔を見せる僕を見返し、「何が良くて、何が悪かったかは知ってるだろう?」と首を傾げる。僕はいろんなものが断たれたような顔をして、また茶碗を見つめた。

 通知表を見せること自体はやぶさかじゃない。そこにある数字を見た親戚たちから何かしらの評価を貰ったって別にいい。けれど、けれどもだ。

 僕が”そうなるよう”計算して平均的になった数字を見て、何かしらを思う人が少なくとも一人はいる。傷ついたような顔をする人がいる。それに僕の精神がどれだけ荒らされて行くか。大人たちは知らない。

「いいんだぞお、朔太郎くん。みそらだってひどかったんだから。体育が一番よくて、それ以外は及第点なんだぞ」

「お父さん、口が軽い!」

 楽弐叔父は僕が悪い点を取ったと思っているのか、気持ちを楽にしようとそう言ってくれる。でもそうじゃないんだ、そうじゃないんです。

「父さん、無理はよくないよ」

 隣から助け船が出された。秋房くんだ。顔を上げた僕に、秋房くんは微笑む。

「ほら、食べよう。朔太郎」

 ぎこちなく頷くと、はあと重い息が吐かれる。それに僕は肩をびくつかせた。

「秋房、いつまでも朔太郎を小さい子扱いするんじゃない」

「してないよ」

「しているじゃないか。小さい時はしょうがないとは思っていたが、いつまで経っても後ろに匿っていたらお前にも朔太郎の為にもならない」

 秋房くんは何も言わずに、ただ父親である喜一伯父に微笑みかけていた。伯父は秋房くんのその顔を見て、「朔太郎」と僕に矛を向けた。

「お前も高校生になったんだからいい加減に怖じ怖じするのは止めなさい。袖乃までとは言わないが、あれくらい一人でやっていけるようになりなさい」

 僕は言葉を失った。両隣に座った人たちから僕は視線を貰ったけども大人たちは僕に目も向けない。

「そういえば袖乃ちゃんが誰かに頼るところ、あんまり見たことがないなあ。いつでもなんでも一人でやって、一人で出来てが当たり前だった気がする」

「あいつはもう少し人に頼ることを覚えた方がいいんだ。熱を出した時もそうだった。誰にも言わないから悪化はするし、病院に連れて行くって言っているのにあいつはちっとも聞かなくって一人で行こうとしていただろう」

「ああ、あったあった。あの時は袖乃ちゃんにも吃驚したけど、兄さんの剣幕も怖かった覚えがあるよ」

「しょうがないだろう。家族で何かしようとしてもあいつは決まって輪から外れたがって、理由を聞いたらそれがどうしたっていう顔をするんだから。家を出て行った時だってそうだ。父さんにも母さんにも俺にも誰にも話をせずに、むしろそれが当然のような顔をしてた」

 伯父は熱燗から酒を注ぎ、一気に煽った。

「大人になれば、そういうところも直るかと思ったら今でもそうだ。何時までも何時までも父さんの手を煩わせる」

 伯父は母への恨めしさのようなものを滲ませた。僕は体を委縮させて、ただじっとそれが終わるのを待っていた。何時ものように、何時からかのように。

「はい、魚の天麩羅……って、どうしたの。この空気」

 割烹着を着た哀子伯母が持ち前の明るさを持って、襲来する。

「袖乃ちゃんの思い出話をしてたんだよ」

 伯母はあらそうと言いながら揚げたばかりの天麩羅を一個ずつ僕らの膳の上に乗せて行く。

「まあ、袖乃ちゃんはちょっと毛色が違ったから」

「ちょっとどころか!」

 乱暴に、喜一伯父が持っていたお猪口を膳に叩きつける。伯母は兄のそういう姿に慣れているのか、溜息を落した。

「ちょっとよ、ちょっと。それに思うけれど、兄さんもいけなかったのよ。目の敵にして怒るんだから」

「俺はあいつが社会に出た時のことを思ってだな」

「じゃあ、今はどうなの。袖乃ちゃんは社会に出た訳だけど何の支障もなかったわよ。普通にいい人と結婚して、朔太郎くんだって産まれたじゃない」

「姉さん」

 すっかり酔いの冷めた楽弐叔父が饒舌な姉の態度を止めようとする。

「何が言いたいんだ、お前は」

「呆れた兄さん。四十年かそこら兄妹をやっているのに、まだ気が付かないの」

 喜一伯父はむっとした顔をした。

「いいですよ、教えましょう。袖乃ちゃんが上手く行かなかったのは私たちだけなのよ。あの子はね、社会とは上手く行ったの。ただ家族とだけ上手く行かなかったの。そして今も上手く行ってないの」

 年を食った妹の言葉に、同じように年を取った兄は黙った。

「今までどうして上手く行かないか分からなかったけど、私は今のでようやく分かりましたよ。きっと私たちがこんなだからあの子はああなんだわ」

「……、俺が悪いって言いたいのか?」

「そんなこと言ってやしませんよ。みんな悪いんです。みんな悪くて、袖乃ちゃんも悪いんです。言いたいことを言ってはくれないんだから」

 突きつけられた言葉が、僕にはナイフのようにきらりと光って見えた。喉が異様に渇く。いつの間にか、手は汗ばんでいて、それでもまだ手は茶碗を握っていた。だけどこれ以上は耐えられなかった。僕は茶碗を膳の上に置くと立ち上がった。

「朔太郎」

 みそらちゃんが呼ぶ。そこにいた全員の視線が僕に集まっているのを感じた。僕は畳に話しかけた。

「ごちそうさまでした」

 体を反転させ、居間から出る。それは逃げたとしか言いようがないタイミングだった。実際、そうだった。僕は逃げた。だって逃げなきゃ、僕はあそこでずっと大人たちの勝手な思い出話に潰されていた。そうだ、大人はいつでもそうだ。色んな事をのべつ幕なして話す。それでこちらがどれだけ神経が鋭敏になっているか知らずに、重箱を開けて行く。食べた気がしない上に、また豆ごはんを残してしまった。歯噛みして、どこへ行こうか悩んだ。この家で行ける場所はごく限られていて、その限られた場所に身を隠すことは今、出来ない。

 母のところに行けば良かったかもしれないけど、それはそれで伯父がいうことからほど遠くなるような気がした。どこにも行く場所なんてないや。不貞腐れていると、「さくたろう」とか弱い声がする。振り返ると、伏が真後ろに立っていた。

「……、どうしたの?」

「よんでる」

「誰が?」

 伏は誰だっけという顔をしてたっぷりと時間をかけこう言った。

「しにそうなひと」

 祖父だ。僕は直感的に思い、伏と一緒に祖父の部屋に向かうと部屋の明かりは既に消えていた。

「本当に呼んでたの?」

 伏は僕をちらりと見て部屋の中へ入って行った。僕はいいのかなと思いながらも伏の赤い目に誘われ部屋へ入った。部屋の中は冷たい空気でいっぱいだった。これじゃあお祖父ちゃん風邪を引くんじゃ。そう考えていると、「さくたろう」と伏がまた呼んだ。明かりが点いていない部屋で彼女の目が灯火のようにぼうっと浮かんでいた。悲鳴を上げそうになったけど無理やり飲み込んだ。伏のいる方に近づくと、そこには骸骨が眠っていた。いや、まだ骸骨じゃない。皮膚があり、息をし、夢を見る老人が眠っていた。

「寝てるよ」

 僕は伏にそう言った。

「よんでた」

 伏は諦め悪く返して、僕の隣に来ると眠る老人を指さした。

「だれ?」

「僕と秋房くんのお祖父ちゃん」

「さくたろうとあきふさのおじいちゃん」

「そう。病気だから、静かにしてないと駄目だよ」

 伏はうんと首を振り、祖父の横顔を眺めている。何が珍しいんだろうと考えて、そういえば祖父というくらいに年を取った人を見るのは初めてかもしれないと気付いた。

 動く気配がない伏を待つことにして、僕もその場に腰を下ろした。祖父の部屋は物の少なさと対比するように広かった。こんな広い部屋に何の意味があるんだろうか。

「さくたろう」

 呼ばれ、僕は伏を見た。が、彼女はきょとんとした顔をしている。「さくたろう」聞き取りづらいが、しゃがれた声は伏のじゃなかった。僕はおもむろに立ち上がって、背後を見た。

 今まで眠っていた人の目がぱっちりと開いていた。

「お祖父ちゃん」

 病に侵される祖父は目じりの皺を緩め、にっこり笑った。

「よう来たなぁ。ご飯はもう食べたか?」

「うん」

「哀子が豆ごはんを作ってくれとっただろ、美味かったか?」

「美味しかったよ」

 祖父はまた笑う。そして次に瞼を開いた時、祖父の目が遠いものを見ていた。

「袖乃は? 袖乃は元気にしとるか?」

「たぶん、元気だと思う」

「まだ喜一と喧嘩を?」

 僕は口ごもった。すると祖父が苦しそうにごほごほと咳込んだ。

「大丈夫?」

「気にせんでいい。いつもこうだから」

 祖父の喉がひゅー、ひゅー、と風切り音を唸らせている。

「あの子はずっと許さずに、恨み続けるんだろうなあ」

 ぽつりと呟かれた言葉に僕は目を見開いたが、今まで会話をしていたその人の目はもう閉じられて、静かにまた夢の中へ手を引かれて行ったようだった。僕はここにも居た堪れなさを感じ、祖父の顔を眺める伏に行こうと声をかけた。粘るかと思ったけれど、存外彼女はあっさりと首を縦に振った。

 部屋の外に出て廊下を意味も無く歩いていると、「朔太郎、伏」と前から秋房くんの声がした。伏は主人を見つけた犬みたいに秋房くんの元へと寄って行く。僕はさっきのことを思い出してその場から動けなかった。

「朔太郎」

 秋房くんが僕の前に立った。

「父さんたちはもう居間にいないから、ご飯食べよう」

「……いい。もうおなかすいてないから」

「本当に? 夜中にお腹が減ったって、お菓子もアイスもないよ」

「ご飯は食べたから」

「ご飯だけだろ。おかずは半分も行ってなかったじゃないか」

「十分だよ」

 僕は答えて、黙り込んだ。それからそわそわと落ち着きなく体を動かしていると、「俺は別に気にしてないよ」と従兄が言う。引かれるように顔を上げると、秋房くんは落ち着いた顔ではっきりと言うのだ。

「お前はすごいって、俺は知っているから別に気にしていないよ」

 言葉で人を突き放したその人は踵を返して、一人行こうとする。その後ろ背を僕と置いて行かれた伏が見ていた。が、僕はたまらなく怖くなって秋房くんを追いかけて、シャツを引っ張った。

 すると秋房くんは僕を見て、「どうした、朔太郎?」といつも通りに問う。

 それがまた悲しかった。突き放されたのに、行けば秋房くんは何ともないような顔をして構うんだ。知っていたことをまた知り直して僕は涙が出た。溢れたそれは目の膜から離れ地面へと落ち、喉からは締めあげたような嗚咽ばかりが零れた。何も言わずに涙を流す僕に秋房くんはいう。

「朔太郎は優しいな」

 僕はこの人にどうしたら許してもらえるのかまだ分からない。

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