知る

第7話


 ボクたちが会うようになって3ヵ月。すっかり季節は変わり、もうすぐ雪が降りそうになっていた。


 会う場所はほとんどあの海で、たまに本当の姿を見せてくれた。


 今日は彼女の望みで、街に来ている。


「街は面白いな」


「そうですか? ボクにはあまり…。見慣れているっていうのもあるでしょうけど」


わらわには新鮮だ。たまにはこういうところも良いな」


 彼女はずっとニコニコしている。海の中だけではやはり退屈なのだろうか。ボクは街を案内しながら、そんなことを考えていた。


「だいぶ冷えてきましたね。寒くないですか?」


「妾なら大丈夫だ。そなたこそ寒くないか?」


「はい。これからもっと寒くなりますし、それに比べたら全然」


「そうか。…よし、手を繋ごう」


 スッと右手を差し出す。


「そうすれば、多少は暖かいであろう?」


「…そうですね」


 ボクは彼女の手を取る。一瞬、ひんやりとした。


「翡翠さんの手、冷たいんですね」


「妾にはわからぬが、そなたがそう思うのなら、冷たいのだろうな」


 哀しそうな表情を浮かべて笑う。


「そなたが余計に冷えてしまいそうだ。手を離そう」


「っ、ダメです」


 離そうとする彼女の手を、慌ててギュッと握った。彼女は目を丸くする。


「…あ、すみません。痛かったですよね」


「いや、痛くはないが、少し驚いただけだ。そなたが自分の思いをはっきりと表してくれたのは、これで2回目か」


 今度は嬉しそうな顔をする。彼女はコロコロと表情が変わって面白い。見ていて飽きないとは、こういうことを言うのだろう。


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