第2話


 ここは入水自殺で有名な海。少し離れたところには、高い高い崖もある。晴れた昼間でも、なぜかどんより重たい空気感があるため、誰も近付かない。


 そんな場所にボクが来た理由。


「ボクは…、このままで良いのかと…」


「ほぅ」


 彼女がゆっくりと優雅な動きでこちらを向く。


「!」


 あまりの美しさに、ボクは息を飲んだ。切れ長で碧色の瞳。スッと通った鼻筋。ゆるりと弧を描く薄い唇。


 美しい。


 彼女は、続きをと言わんばかりに首を傾げる。


「…ボクは、自分の歩むべき道が見出せないのです。周りはそれぞれにやりたいことを目指して歩んでいるというのに…」


「いいのではないか? 無理に焦って決めても、良い結果は得られまい」


 失礼だと思うが、大昔の人のような話し方と、20代半ばの容姿が釣り合っていないように感じるのは、おそらくボクだけではないだろう。

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