ボクが消える頃、キミは。

紫月 遊羅

出逢い

第1話


 彼女と出逢ったのは、とても暑い夏の日のこと。


 真っ白なノースリーブのワンピースを着た彼女は、柔らかい笑みを浮かべて海を眺めていた。


 太陽の光が反射して、海面はキラキラと輝いている。彼女は時折眩しそうに目を細めた。


「…いつまで見ておるのだ」


「えっ…」


 海に視線を向けたまま、彼女が言葉を発した。ぶっきらぼうな言い方だが、怒気をはらんでいないことだけはわかる。


「そなたが見ておるのは海だけではなく、このわらわもだろう。違うか?」


「…いえ。すみません…」


 謝罪しつつ、自意識過剰な人なのかとも思う。


「突然で悪いが、そなたは、なにを迷っておるのだ?」


「えっ」


 彼女はボクを一度も見ていないのに、なぜ解るのだろう。


「なにかに迷っていなければ、こんなところには来ないであろう」


 確かにと呟く。

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