第40話② マイカー(中古車を選ぶお話)
地元には個人経営の中古車屋さんしかない。
しかも田舎なので店舗数自体少ない。どの店舗も台数が少ないから選ぶ余地がない。
魅力的なのが全く無かったため、クルマから降りることすらなかった。
あっという間に巡り終ってしまったため、隣町へと向かう。
地元より少しは都会なので店もちょっとだけ多い。
トヨタの中古車センター。
有喜の手を引き、見てまわる。
そこで最初に目に留まったのは、黒のマークⅡブリット。
2リッター。6年落ち。走行距離7万キロ。
コミコミ100万円。現実的になんとかなりそうな値段。座ってみる。内装が豪華でよさそう。
「お母さん、イスフカフカ!」
有喜がはしゃぐ。
「ホントやね。これいーね。」
「うん。」
いきなり本命か?
とりあえずこれは候補。
他には?
見回す。
ブルーグレーのプレサージュCⅢ。
2.5リッターディーゼルターボ。
車検が2年付いて25万。走行距離を見てビックリ。40万キロを超えていた。エンジンはすぐに壊れたりせんやろーけど、他が…。塗装が焼け、クリアが剥がれていて、かなり残念な外装。
流石にちょっとないかな?20万キロでこの値段なら考えてもいいけど…惜しいな。
白の200系レジアスエースⅠ型のスーパーGL。
2.5リッターのディーゼルターボ。3年落ち。
便利そう。走行距離10万キロ超え。値段を見てビックリ。190万っち何これ?ボッタクリ過ぎやない?不当な中古価格にドン引いて断念する。
青のアイシス。
2リッター。5年落ち。走行距離3万キロ。
スライドドアが便利そう。
値段はコミコミ90万。
これも候補かな。
ガンメタのシエンタ。
1.5リッター。5年落ち。走行距離5万キロ。
モデリスタのエアロと17インチアルミが着いて勇ましい。値段はコミコミ80万。
子供のいる家族にはこんな感じのクルマがいいのかな?
これも候補。
候補に挙げたクルマの見積もりをしてもらい、店を後にした。
この店で一番気に入ったのはマークⅡ。
他の店は展示台数が少なく、新車並みの値段。それなら新車の方がいい。今日は中古車を探すつもりで動いている。いよいよ気に入ったのが無かった時、新車購入にチェンジすればよい。
という訳で隣町はほぼ回った。
次は別方向の隣町。
今回っていた町よりもはるかに都会だから店も多い。
日産の中古車センター。
グルっと見回す。
銀のE25キャラバンGX。
4年落ち。走行距離11万キロ。
3リッターのディーゼルターボ。初代キャラバンエルグランド後期モデルのデチューン版エンジンだ。130馬力も出る。ハイエースの2.5よりハイパワー。
ハイエースでいうところのスーパーGL的なキャラで、バンパーがボディ同色。貨物車ではあるけどかなり乗用仕様。
ハイエースと比べたらあまり見かけない。不人気なんかな?それならば安いのでは?と思い、期待して値段を見てみたが、そんなことは全くない。結構する。さっき見たレジアスエースと大差ない。
いちばん大きいワンボックスはボロい割に値段が高い。
候補から外した。
横に目を移す。
白のバネット…という名のマツダボンゴ。
1.8リッター。2年落ち。走行距離5万キロ。
コミコミ110万。新しい割に値段も安い。この大きさでこの値段は魅力的かも。一瞬ときめいて燃費を聞いて諦めた。レギュラー仕様とは言え、スポーツカーもビックリな燃費だった。お得感が半減なので止めた。
ガンメタのウイングロード。
1.5リッター。3年落ち。走行距離2.5万キロ。
便利そう。走行距離も少ない。おまけに燃費もそんなに悪くない。でもなんか…ビミョー。顔が好みじゃないし、横から見た窓のラインがグネグネし過ぎ。これは無し。
紺メタのクリッパー・リオ
5年落ち。走行距離3万キロ。
三菱タウンボックスの日産バージョン。最上級グレードでターボ付き。走行距離も少なく装備も充実。50万近いがあとから何もつけなくていい。
これはありかな。
とりあえず候補に挙げた。
赤メタのカローラフィールダー。
1.8リッター。大きい方のエンジンのヤツ。5年落ち。走行距離4万キロ。
そういや、大学の時、告ってきて付き合う寸前までいった人が乗っていた。型は一つ後だから面影があるくらい。
好きとか嫌いとかじゃなく、ユキから変な疑いかけられたくない。候補から外す。
とりあえず、クリッパーの見積もりをしてもらい別の店へ。
規模の大きいチェーン店の中古屋さん。
国道に面した売り場は高級セダンとかクーペばっか。300万するレクサスLSや、250万するクラウン、400万越えるGT-R。中古にこんなお金出すなら新車買う。
奥に行き、見てまわる。
ガンメタの2000年式タンドラ。
4. 7リッターV8エンジン。走行距離8万キロ。
大きくてかっこいい!ダブルキャブなので5人乗れる。燃費は…垂れ流しかな?でも会社近いし、貨物やし、税金安いし…ありやな。でも200万かぁ…150万なら買うけどな。
保留した。
ベージュツートンの100系ハイエースワゴン最終型。
3リッターのディーゼルターボ。12年落ち。走行距離20万キロ。タイミングベルト交換済み。
スーパーカスタムリミテッド。最上級グレードだ!
これいいかも。
内装はオニのよーに豪華で木目だらけ。電気仕掛けでいろんなものが動く。
見た中で一番いい!
見積もりを出してもらう。コミコミ90万。
パールツートンのクラウンエステート。
2.5リッターターボアスリート。9年落ち。走行不明。メーターが換えてある。
はみ出らんばかりのどデカい社外アルミ付。車高が落としてあってカッコイイ!ぎょーらしー見た目の割に安いかも。
運転席に座ってみると、あるはずのない位置に後付けメーターの数々。
イヤな予感がしたのでボンネットを開けてみると、何やらカラフルなコードとか、色の付いたアルマイトの部品がいたるところにちりばめてある。エアクリーナーとかも緑色のシイタケみたいなのが着けてあるし…前の持ち主、この車で何をした?
なんか、滅茶苦茶に乗ってあってボディにガタが出てそうな予感がしたので諦めた。ノーマルなら考えたのに…残念。
紺銀ツートンのJZS130クラウンステーションワゴン。
2.5リッターツインカム。15年落ち。走行距離20万キロ、タイミングベルト交換済み。
グレードは、ロイヤルサルーンでこちらはフルノーマル。
コラムATで足元広々。これもいいかも!内装は最上級グレードなので超豪華。スイッチがいっぱいある。見積もりを出してもらうと、コミコミ70万。これもありやな。
思いつく店はここで最後。
あとは、行くとすれば隣の地区か?
一日目にしてトキメク物件が見つかったから、そこまでする必要はなさそう。
あとは、今日見積り取ったヤツで煮詰めよう。そして次行ったとき、別のいいヤツがあったら、その時はまた見積もり出してもらえばいーや。
ただ、考えることはみんな同じだろうから、いいと思えたモノは他の人もいいと思うはず。
売れてしまう可能性だって十分にある。
いよいよタイミングが合わない時は新車にしよう。
それから、一週間後。
先週末行った店を回って、候補に挙げた中からユキと相談しながら決めることにする。
ユキのシャコタン下品ミニカで店を回る。
助手席にはチャイルドシートに座った有喜。
なんとも嬉しいユキだった。
最初の店。
トヨタの中古車センター。
マークⅡは売れていた。
「あ~あ、やっぱなくなっちょー。キレーかったもんねー」
「残念やね。桃ちゃんの見る目があったっちゆーことやん。」
「みんな考えることは同じなんやね。」
「そ。よくあること。」
「他のはまだ残っちょーき、とりあえず別の店いこ?」
「そやね。」
店を出た。
あまり台数置いてなかった隣町の店。前を通り過ぎながら、先週との違いを確かめる。
殆ど動いてないようだ。
立ち寄らないことにした。
「日産の中古車センターもお願いしていい?」
「勿論!大学の近くの青い方やろ?」
「そうそう。あっこにクリッパーあるっちゃ。」
「よっしゃ!」
早速向かう。
ガロロロロ…バオン、ガロロロロ…。
乗り心地がスゴイ。跳ねまくってたま~にCDが飛ぶ。
室内に入ってくるマフラーの音もかなりのモノ。ステレオの音がまともに聞こえない。
でも大好きな人の運転するクルマ。
なんか…幸せだ。
日産の中古車センターに到着。歩道の段差を乗り越えるとき、
ガ~ッ!
イヤな金属音。
「うぉ~!腹擦った!」
「大丈夫なん?」
「大丈夫大丈夫。そっか~。今日は三人乗っちょーき、いつもより車高が低いんやね。」
笑って誤魔化した。
お客様駐車場に止め、見てまわる。
「E25高いね。」
「ユキくん、キャラバン好きなん?」
「うん。次ハイエースかキャラバン新車で買うつもり。」
「そーなんて。ウチもこれいーなっち思ったけど、割高やき止めた。さっきんとこあった白のハイエースも同じ理由で止めた。」
「オレもボート買ったき、いっときその線で探してみたけど、ボロいくせに高いきやめたっちゃ。」
いいと思ったクルマが全く同じ。
昔から好きなものがよくかぶる。
結構嬉しい瞬間だ。
「今度、ボート乗せてね。」
「遠賀、一緒行こうね。」
「うん!」
クリッパーの置いてあった場所に向かう。
「あれ~?クリッパーもない。ここにあったんよ?」
クリッパーが置いてあったところには、ピンク色のヴィッツが置いてあった。
「しょーがないね。ここ、通りからよぉ見える場所やき、目ぇ付けられちょったっちゃろ。」
「う~ん、残念。次行こ。こんどはあっこ。」
「あー。チェーン店の?タンドラ売りよぉとこやろ?」
「そうそう。あれ欲しいけどちょっと高い。」
売れてしまったのではしょうがない。
他にトキメククルマはないので店を出ることにする。
今度は腹を擦らないように、ゆっくりと出た。
そして次の目的地。
行く店全部でコーヒーを飲みまくったので、膀胱がかなりピンチ。とりあえずションベンタイム。
そしてお目当てのクルマの元へと向かう。
「うっそ~…ハイエースとクラウンワゴン売れちょーし!」
どちらも「売約済み」の札がかけてある。
あるのは走り屋仕様のクラウンエステート。
「どっちもよかったのにね~。こっちのクラウンは…無いね。走り屋のいじり方しちょーき、色々ガタがきちょるはず。そげなんとに当たったら悲惨やもんね。」
やっぱし。
選び方は間違ってなかった。
「中古車っち、はよ決めんとダメなんやね。」
「たしかに。人目に付きやすいのは特に早いみたいね。」
「ごめんね~。無駄足やったね。」
「ううん。いっぱいクルマ見れて楽しかったよ。また一緒いこ。ね!ユーキ。」
「うん!」
諦めて帰ることにした。
それから3週間。
中古車屋の前を通ることはチョイチョイあるが、品揃えがあまり大きく変わらないので、降りてまでみるようなことはやってない。
便利さ優先で選んだアイシスとシエンタ。
まだ売れてはいないが、イマイチ「好き」が足りない。
購入に踏み切れないでいた。
このままじゃ先に進まんし、中古車探しは諦めて新車にしよっかな?
クルマ選びに大した変化はないが、家族のことで変化はあった。
有喜がすごい早さでユキに懐いていくのだ。
まだ一カ月くらいしか一緒に過ごしてないのに。
驚くばかりである。
流石本当の父親!
ということなのだろうか。
懐いたことに対してユキは本当に喜んでいる。
そのことがなんか嬉しい桃代であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます